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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第二部  第二章 ヒロインたちの誤算 ~入学式・始業式終了のお知らせ~

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3  ★


 紅華館から学園長が解散を言い渡した後、魔導通信は切れてしまった。在校生たちは、それぞれ教室へ戻るように言われた。始業式はお開きだった。


「あの子たち、何で連れて行かれたんだ?」

「魔女がどうとか……」

「それって今、色んな国で騒がれてるアレじゃないか?」

「異端審問……だっけ」

「ああ、王族が操られていたっていう」

「まさか、あの子たちが?」

「だってほら、うちのクラスの王子たちもいなくなってる」

「そういえば……」


 何も知らない生徒たちがうわさをしている。


 アムリタ統合学園には東大陸中の様々な国から貴族の子弟や王族が学びに来るため、王子や王女といった肩書きも珍しくはないのだ。


 生徒たちがぞろぞろと出入口に引き返して行くなか、リクは投影ヴィジョンが浮かんでいた辺りを見上げたままポツリと呟いた。


「……どうしてだ? 前は白い蔦のようなものとか、不思議な炎が人を(さら)っていったのに……」


 呟きが聞こえたのか、隣にいたイングリッドが言った。


「そういえば、グランルクセリア王国からいらっしゃったと」

「ああ。前も見たんだ。裁判に人が連れて行かれるのを」

「そうですか……。かなりの人数が移動しましたわね」


 神学科は多くの女生徒が連れて行かれたが、第二運動場へ移動したのは彼女たちだけではなかった。彼女たちと親しくしていた男子生徒も同行を求められ、自ら進んで共に移動していった。


 つまり『ヒロイン』とそれぞれの攻略対象も同時にいなくなったため、始業式を受けていた生徒たちの列は虫食い状態である。


 ただでさえ広大な大闘技場の面積が、急に増したような寂寥感(せきりょうかん)が漂っている。


「あなたの妹さんは、あの中にいなかったみたいね」

「アイラですか?」


 リクの言葉に、イングリッドは驚いて目を瞬かせた。


「『ヒロイン』なんでしょう?」

「やっぱり、『愛レゾ』のことをご存知なのですね」


「いや。私が知っているのは、ここが異世界ということだけ。ただ、あなたたちみたいな転生者の子を何人か知っている。私とアミは召喚されたんだけれど……」


「さっきの方たちですね」


 イングリッドは、今朝アイラたちに絡まれていた時のことを思い出す。リクと一緒に助けてくれた赤毛の子たちは、魔法魔術科の制服を着ていた。


「帰りにみんなで会うことになっているんだ。あなたも来る?」

「いいんですか?」

「転生者同士、情報交換できるに越したことはない」

「ありがとうございます! ほかの転生者の方にご挨拶するのは初めてです」


 イングリッドはそう言って喜んだ。


 リクは視線を外して振り返り、魔法魔術科の集団を見た。校舎が違うから大闘技場の出口も別々だ。遠目からではアミやミラフェイナの姿は確認できなかった。






 アミたち魔法魔術科生たちは、大闘技場を出て小魔塔区の方へと移動していた。


 小魔塔を中心として学舎や学生寮、売店や各種倉庫などが立ち並ぶ独立区画がある。そこは魔法魔術科の生徒や教員などの関係者以外はほとんど立ち寄ることがない、自治区となっている。


 また、商業施設の売店は魔導に特化した専門店ばかりで、値段もピンからキリまでだ。

 中心の小魔塔から少し離れたところにある建物が、魔法魔術科の校舎となっている。


「はぁ……。まさか、こんな所にまで来るなんて……」

「まあまあ……。アミ様、あのお方が苦手ですものね」


 とぼとぼと溜息を吐きながら歩くアミの横で、ミラフェイナが苦笑した。


「ニガテっていうか……うーん……」


 アミは微妙な心境を言葉にできずに苦悩している。


「あのお方?」


 今朝の一件から行動を共にしている女子生徒が、不思議そうな顔をしている。


「先ほどのヴィジョンに出てきた、インクイジターの方ですわ。わたくしたち、グランルクセリアで一度裁判を目撃していますの。友人が冤罪をかけられていましたから、他人事ではなかったのですわ」


 と、ミラフェイナは『ヒロイン』の部分は省略して説明した。彼女は転生者とは無関係のため、余計な情報を入れると混乱や誤解を招く懼れがあるからだ。


「裁判って、各国で騒がれている異端審問のことよね?」

「ええ、そうなんですの」

「そんなに恐い人なの? あのインクイジターさん、綺麗な人に見えたけど」

「コワいっていうか……。私が裁判に紛れ込んじゃって、怒られたんだよねー……。すごく」


 アミが後頭部をぽりぽり掻きながら、普通では考えられないことを言った。


「紛れ込んだの!?」


 そんなことあるのと言って、半ばツッコまれるアミ。


「えっと……。自分でも分かんなくて、気付いたらそこにいたっていうか……」

「アミ様は、巻き込まれ体質が過ぎますわ!」

「うえーん、わざとじゃないんだよぉ」

(どう巻き込まれたら、異端審問に紛れ込めるのかしら……?)


 彼女は一歩引いた視点でアミたちの話を聞いていたが、次の二人の会話に興味を持ったようだった。


「そもそもリク様と一緒に召喚されていらっしゃったのも、巻き込まれたせい……とかではありませんわよね?」


「えっ、やっぱりそう思う?」

「え?」


 ミラフェイナは冗談で言ったつもりだったが、本気で返されて困惑した顔をしている。


「そっ、その話! 本当なの?」

「えっ? その話って……?」


 急に身を乗り出してきた女子生徒が、アミの顔をじっと見つめて言った。


「あなた、あのリクって聖女と一緒に召喚された異界人だったの?」

「え? そうだけど……」


 アミは何の気なしに答えたが、彼女は黙り込んでしまった。


「あっ、ごめん。もしかして異界人が嫌いだった……かな?」


 アミが気を遣って尋ねた。もうエリー・ヘイデンのように嫌われるのは避けたい。

 しかし彼女の返事は振るわなかった。


「そういう訳じゃないんだけれど……」


 女子生徒は喉の奥に何かがつかえているような話し方をした。こういう時は、ヘタに追求しない方がいい。アミは笑顔を見せることで、話を流そうとした。


「もし嫌だったら言ってね。私は平気だから」

「……ち、違うの。私、あなたとお友達になりたいわ!」


 はっとした彼女が、今度はアミの手をぎゅっと握った。

 突然のことで、今度はアミの方が困惑した。


「えっ……。本当に大丈夫……?」

「もちろん。異界人だとか、そういう差別はしないわ」

「そっか。よかったぁ~」


 アミはホッと胸を撫で下ろして笑った。

 女子生徒も笑顔を見せ、右手を差し出した。


「改めて、スピリニラ・アスミディアスよ」

「わ、私は(おおとり)アミっていいます!」


 アミも右手で握手を返し、自己紹介をした。


「オートリ……?」

「あっ、アミが名前で、鳳がファミリーネームだよ」

「そうなのね。よろしくね、アミさん」

「うん! こちらこそ」


 打ち解けた二人を見て、負けじとミラフェイナも輪に加わった。


「あら。では、わたくしともお友達になって下さいますの?」

「ミラフェイナ……様は、グランルクセリアの公女様よね。光栄です」


「ご存知でしたのね。嬉しいですわ。アスミディアス伯爵家も、アシュトーリアでは名家と伺っておりますわ」


「歴史が古いだけで、そんな名家ってほどじゃないわ。ミラフェイナ様の公爵家に比べれば」


 ミラフェイナとスピリニラも握手を交わした。


「やったぁ。この国での初めてのお友達ができてよかったよ」


 他意なくはしゃいでいるアミを見て、ミラフェイナとスピリニラもつられて笑った。

 三人は和気藹々(わきあいあい)と、魔法魔術科の校舎へ入っていった。






 入学式及び始業式が解散されてから、数十分後。

 第二運動場では、憲兵隊によって連行された逮捕者ヒロインたちの何人かが、不満を(あら)わにしていた。


「ちょっと! 私にこんな事して、ただですむと思ってるの!? 私の殿下が許さないんだから!」

「そうよ! 私のパパだって黙ってないわよ!」

「そうよそうよ!」

「私の王子様もよ!」

『――静粛に』


 第二運動場に設置されている魔法投影装置にも、その男――インクイジターは映っていた。どうやら彼がいるのは学園長室らしい。魔導通信で映像を繋いでいるのだ。



『異端審問の前に、権力は無意味である。……先ほどの話を聞いていなかったようだな。汝らには、各国の王族を洗脳した国家反逆罪の嫌疑(けんぎ)がかけられている。それも、この世界の均衡を揺るがす異世界の神の力でな。よって、これより合同簡易裁判を執り行う。刑が確定次第、汝らはそれぞれの国に強制送還され、刑が執行されるであろう』



 淡々とインクイジターは説明した。


「こ……国家反逆罪!?」

「大丈夫だよ、アリシア。君のことは僕が守ってみせる」


 貴族科の新入生だったアリシア・オーウェンは、自分の手を握ったシェローム王国王子オーバンの顔を見上げて絶望に包まれた。


「オーバン様……」


 無理だ、とアリシアには分かっていた。オーバン王子の愛は、『魅了』によるものだ。調べられたらバレてしまう。今騒いでいる他の『ヒロイン』たちは、上級生のくせに思慮(しりょ)の足りない者たちばかりだ。


 学園長が認識していたということは、もう証拠ぐらいは押さえられているはずだ。この国の憲兵隊が動いているのが、その(あか)しだ。


 仮にも貴族の娘や養女が多い『ヒロイン』たちをこれだけ大っぴらに捕らえているということは、各国も承知のうえである可能性が高い。


 つまりシェローム王国にも通報されているとなれば、実家にも頼れないことになる。


(シナリオ開始前に悪役令嬢を出し抜けたところまではうまくいったのに……。どうして『魅了』を使っちゃダメなのよ!)


 アリシアは膝をガクガクと震わせた。裁判になったら終わりだ。ニムの忠告を聞いておけばよかった。

 遠いグランルクセリア王国で、同じヒロインが処刑された話を知っていたはずなのに。


 前世でやっていたのは、『Fantasy×カレシ』略して『Fカレ』という、安いアプリゲームだった。


 ストーリー性は薄く、課金額がものをいうゲームだった。課金という概念(がいねん)がない本物の世界で攻略対象たちを振り向かせるために、『魅了』のスキルに(すが)るしかなかったのだ。


 しかし後悔も言い訳も、彼女たちの誰ひとりとして救うことはなかった。












転生/転移者・攻略対象等まとめ


短い命でした……。

【F彼】(ファンタジー彼氏)安っいアプリゲーム ←New!

・ヒロイン:アリシア・オーウェン(男爵令嬢)

・悪役令嬢:?

・攻略対象1:オーバン王子 シェローム王国王子



転生者でない普通の登場人物でわりと重要な人をまとめます

【非転生者】

・ナユタ アシュトーリアの王女でアム学の総生徒会長

・スピリニラ アシュトーリアの伯爵令嬢 ←New!



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魅了で処刑されたやつがいるって知ってたのに、なんで使ったんだろう…
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