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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第十五章 判決・天

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58/130

4  ★


 名前を出すと、アミは(にわか)に真剣な表情になった。


 そんな彼女の心臓を指差し、予言のようにラビは告げた。


「忠告しておく。()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。身勝手な欲望を何かしら抱えているはずだ。リク・イチジョウも、必ずそうなる。……被害者になりたくなければ、今のうちに離れた方が身のためだぞ」


「離れる……? リクと……?」


「汝、一緒に召喚されたことで行動を共にさせられているようだが……。離れる口実を、こちらで作ってやってもいい。手が必要なら、力を貸そう。何なら、神殿で……いや。私が保護してやろうか?」


 しかしアミは、ぶんぶんと首を振る。


「リクは、そんな人じゃないよっ……!」


 いたいけな娘を苛めているようでラビは気が引けたが、『ヒロイン』被害者が増えるよりはいい。ラビは重ねて忠告する。


「言ったはずだ。例外はない。全ての『ヒロイン』は、必ず処されることになる」

「……!」


 あれだけ騒いでいたアミが、急に静かになった。


 そのような表情を、どう表現したらいいのだろうか。

 アミは寂寥感と諦観、そして友愛を混ぜたような筆舌に尽くしがたい表情をしていた。


「……あなたも、そう言うんですね」


 不意に、アミが口を開いた。


(――あなた()?)


 ラビは違和感に気付くが、続けてアミが言った。


「でもリクはそうじゃないって、私は信じてますから」

「信じられる根拠でもあるのか?」

「そんなのないです。勘です!」

「ふむ……。すでに洗脳されているようにも見えんが」

「せんのー?」


 ラビはあっけらかんとしているアミの手を掴んだまま、もう片方の手で印を切る。


《マスター。警戒して下さい》


 AIイリスが警告したが、遅かった。


「少し眩しいかもしれんが、我慢してくれ」

「ほえ?」


 ラビは発動の瞬間にアミの手を離し、最上級の解呪魔法を唱えた。


「『絶対解呪』」


 創世の煌めきが、燦然と『法廷』内を駆け巡る。

 星々の歴史を始まりから再現したかのような熱量が、美しさが、アミの細胞を貫いていく。


「ほげぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? ……って、アレ?」


 しかし星天の光は、アミの全身をすり抜けた。解呪が不発に終わった証だ。


 アミをじろじろ観察してから、面白そうにラビが言う。


「何も変わっていないな」

「やっぱり私、命狙われてます!?」


 珍しくムッとしてツッコんだアミに、ラビは苦笑して詫びを入れた。


「すまんな。汝のステータスが読めんから、洗脳されている可能性を潰しておきたかったのだ」

《暴力反対です。申し訳ありません、マスター。あの流れで今のは予測できませんでした》


「ひどい言い草だな。もし『ヒロイン』に洗脳や呪いの類いを受けていれば、今ので解放してやったところだ」


「リクはそんなことしないよっ!」

「今のところはな」


 ジト目で身を硬くしているアミには、随分と警戒されてしまったようだ。


 こういうタイプには、搦め手より正攻法でいった方がいいかもしれないとラビは考えた。


「何故、スキルを隠匿しているのだ?」


 ストレートに尋ねてみれば、アミは「ギクッ」としてから分かりやすく小刻みに震えだした。


「……か、帰ってイイデスカ……?」

「ほう。言わぬか」


 ラビは、にやりと笑った。


「今回は見逃してくらさい……」

「では次回は、洗いざらい吐いてもらおうか」

「勘弁してくりゃしゃい……」


 アミは瀕死の子ウサギのような震え声になる。

 小動物を虐待しているような罪悪感を感じたので、ラビは吹き出した。


「ふっ……。心配するな。見逃す約束だ」


 ひとしきり笑った後、ラビは最後の助言をした。


「とにかく汝の考えは分かった。今はそれでも構わん。助けが必要になれば、神殿に便りを出すといい。どこの神殿でも大丈夫だ」


「そんなことには、ならないと思います!」

「だといいがな……」


 アミはくるりと背を向け、出口の扉へ駆けていった。


 ラビは片目を瞑ってアミを見た。


 青い右目の視界には、彼女の背中に鑑定画面が見えている。『完全鑑定』でも看破できない、謎の鑑定画面だ。


 まがりなりにも、右目は混沌龍神オールドに与えられた『混沌の竜眼』である。実際にはスキル以上の効力を発揮する。眼球に篭められた、わだつみの霊格の影響だろう。


 今回の裁判で『ヒロイン』に不利な決定的証拠を持っている人物を探し出せたのも、この右目の力によるところが大きい。


 その神眼による鑑定を妨害することから、同等以上の存在が彼女の背後にいるはずだ。


 神クラスの隠匿スキルで真の能力は不明だが――ただひとつ、言えることがある。


 『ヒロイン』以外で鑑定画面が見えているのだから、リク・イチジョウを倒すためにはアミ・オオトリの力が必ず必要なはずだ。


「心配ではあるが……今はまだ、か……」


 ラビは独りごち、『法廷』を出た。











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