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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第九章 モブ王女様の秘密サロン

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「お帰りなさいませ、リク様!」


 討伐任務から帰還した聖女、いや『聖女の器』であるリクを乗せた馬車が王宮の迎賓館に到着した時、出迎えたのは大勢の使用人と第一王子コルネリウス、騎士団長アダム・クレイシンハ、魔術師団長グレゴール・ローゼンベルグ、宰相シリングスと要人たちまで勢揃いだった。


 馬車の窓から見えていたその手厚さに、アミが感嘆を述べた。


「うわぁ。すごいお出迎えだね、リク」

「……」


 馬車の扉が開けられると、美形の第一王子コルネリウスがキラキラしたキメ顔で手を差し伸べてきた。


「お手を」

「結構です」


 リクは王子の手を借りずに、颯爽と馬車を降りた。その後に続くように、アミもぴょんっと馬車から飛び降りた。


 またしてもリクに袖にされたコルネリウス王子は、ショックを受けて地面に崩れ落ちた。


 そんな王子に誰も触れないようにして、リクの帰還を歓迎した。


「リク殿。此度の凱旋、お喜び申し上げる。まさか、ドラゴンゾンビを倒してしまうとは……。いやはや、これから大変なことになりますぞ」


 宰相シリングスは驚きの方が強かったのか微妙な表情をしていたが、ひとまずは褒めてくれたようだ。


「いやぁ、報告は聞いたが、ぜひ詳細をお聞かせ願いたい。これが最初の武勇とは、末恐ろしいな」

「うっ」


 リクの背中をばんと叩いて、騎士団長アダムがガハハと笑った。


「アダム、レディーに対してその態度は何だ。……大丈夫か? リク殿」

「え、ええ。ありがとうグレゴー……すみません。公爵」


 つい言いかけたリクは、途中で訂正した。

 グレゴール・ローゼンベルグは一瞬さっと顔を赤くした後、ゴホンと咳払いをして言った。


「いや、そのまま……。名前で呼んでくれて構わない」

「そうですか? じゃあ、私も呼び捨てで」

「そ、そうか」


 遠くから「何故、公爵と名前で呼び合っているのだ!?」と第一王子が叫んでいたが、全員見て見ぬ振りをした。


 そこへ公爵令嬢ミラフェイナ・ローゼンベルグが声を掛けた。


「リク様、アミ様。討伐任務、お疲れさまでした。お部屋に、おくつろぎの準備は整っておりますわ。今日はごゆるりとお休み下さいませ」


「ミラ、来てくれたの。ちょっと報告をしたら、すぐに……」


 恭謙な態度で頬を掻くリクに、ローゼンベルグ公爵は微笑んで肩を叩いた。


「いや、娘の言う通りだ。報告なら、うちのクライドとアウグスト殿に聞こう。あなたは大事な『聖女の器』。今日はもう休んでくれ」


 公爵も騎士団長も公爵令嬢も、皆の視線が優しい。こういう時は無下にしない方が良いとリクは知っていた。


「それならお言葉に甘えて……。行こう、アミ」

「う、うん。……いいのかな、アレ」


 アレ、というのはハンカチを噛んで悔しがっている第一王子のことだが、リクが振り向きもしないので誰もツッコまなかった。






 そうして部屋に戻ったはずのリクたちだったが、公爵令嬢が手配したという『おくつろぎ空間』へ辿り着くことはなかった。


「すっ……、すみませんリク様……!」


 青ざめた顔を俯かせながら謝罪を響かせるミラフェイナの声を、リクとアミは少し離れた場所に設置された椅子に座りながら聞いていた。


 まさかこんなことになるとは――と、ミラフェイナの口上は続く。




 二人は今、王宮の中でも閉鎖された庭園の存在する王女宮に来ていた。

 拉致されたと表現した方が正しい。


 あの後、迎賓館の部屋の前で待機していたミレーヌという侍女に連れられ、移動した先が薔薇の咲き誇る王女の庭園だった。


 通称・〝王女の庭〟は鉄の門扉と塀に囲まれ、王宮の中でも隔絶された空間となっている。


 王女の庭に入れるのは、王女が認めた人間のみ。


 リクの護衛であるレンブラントも入ることを許されず、門の前で不機嫌そうに待機することとなった。








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