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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第五章 聖女(予定)ですが、勇者代行として頑張ります

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 リクとアミが騎士団へ赴いている頃、公爵令嬢ミラフェイナ・ローゼンベルグは王女宮に呼び出されていた。


 呼び出したのはもちろん王女宮の(あるじ)、第一王女エクリュア・ヴァイス・グランルクセリア。亡き王妃の生き写しと言われる美しいプラチナブロンドの髪に、新緑の瞳。齢十五にして理知的な光の宿る双眸は、兄王子たちよりも余程達観していることをミラフェイナは知っている。


「……という訳ですの。リク様はわたくしを邪険にするどころか、公爵家を助けて下さいましたわ」


 ミラフェイナは、召喚されてからの『光の乙女』――リク・イチジョウの言動や反応を仔細漏らさず報告した。


「ふうん……。悪役令嬢を助けるなんて、ヒロインにしては珍しいタイプね」

「まだ様子を見ているだけかもしれません。安心するのは早いのではないでしょうか」


 茶の席には、ほかにも令嬢が二人座っていた。


 王女に注意を促したのは、ディアドラ・フラウカスティア伯爵令嬢。艶やかな黒髪に、瑠璃色の瞳。切れ長の目を縁取る長い睫毛が、慎重に数度瞬いた。


「ヒロインは必ずシナリオや攻略対象に執着する。それは姫様の調査からも明らかかと」

「そうねぇ」


 エクリュアが王族の伝手を使って調べたところによると、今各国でヒロイン転生者が国を引っかき回しているようなのだ。


「でも、ゲームを知らないのならあり得るのかしら? シエラ、あなたはどう思う?」


 意見を尋ねられたのはシエラ・クローバーリーフ伯爵令嬢。王女と同じ十五才で、ミラフェイナたちの後輩だ。色素の薄いレモン色の髪に、若草色の瞳。どこか儚げな美貌の彼女は、途惑うような視線を王女に返した。


「わ、私はお二人とは違って、乙女ゲームではなくネット小説のモブですから参考にならないかもしれませんが……」


「あら、私もモブよう」


 エクリュア王女が悪戯っぽい目つきでヒラヒラと手を振った。

 そう、エクリュア王女は『ななダン』とその姉妹作両方に出て来るプロモブだ。


「同じモブでも、私と姫様では雲泥の差が……」

「モブに上も下もないわよう」

「いえ。ただのモブと、プロモブではモノが違います」

「はいはい。それで、何か気付いたの?」


 グッと拳を握り締めたシエラが何か語り出しそうだったので、エクリュア王女は脱線した話を切り上げて結論を促した。


 王女に軽く話を流されてもめげないシエラは、素直にこくんと頷いて話し出した。


「さっきディアドラ様も仰っていましたが、今までの調査では本人がゲームや原作に詳しくなくても、例えば兄弟姉妹や友達が知っていて話を聞いていただけでも転生者になっている事例があります。ですからゲームを知らないという可能性は、もちろんあると思います。でもそれはヒロインには、あり得ないと思います」


「というと?」


「どのヒロインも例外なく攻略対象やシナリオに執着していたということは、ヒロイン転生者に限ってはゲームを知らないはずはありません。少なくとも今までは、ですけれど。そのリクという方が初めてのケースでないと断言はできませんけれど……」


「知らないフリをしているだけかもしれませんわ」


 シエラの言葉に、ディアドラが厳しい指摘を入れる。


「そこなのよねぇ」


 と、エクリュアは溜息を吐きながらしばし天を仰いだ。


「……お兄様がフラれたと聞いた時はつい爆笑……いえ笑って、じゃなかった。驚いてしまったけれど。ヒロインである以上、やはり油断はできないわ」


 何度か言い直された王女の言葉に、ディアドラが眉一つ動かさずに頷いた。

 異を唱えたのはほかでもない、渦中のミラフェイナだった。


「お、お言葉ですが王女殿下。リク様は……、あの方だけは違う気がしますわ」


 ヒロインは油断ならない。その考えを、少し前のミラフェイナも肯定していた。

 だからこそ、いざという時に備えた根回しや追放後の準備、魔法の特訓までしていたのだ。


 しかし、リク本人に会ってその考えは変わりつつある。

 だが、ディアドラはあくまで冷静だった。


「ミラ、あなた分かっているのですか? もしその子が敵なら、悪役令嬢(あなた)が真っ先にオトされているという事態がどういうことか」


「お、オトされるだなんてそんな……」


 意外な単語に、ミラフェイナは目を白黒させた。


「公爵家を味方に付けることで、自分に有利にしたいだけかもしれないのですよ?」

「そんな……。もしそうなら、殿下のプロポーズを断るはずがありませんわ」


「それは、この世界に来たばかりで混乱していたのでしょう。現に、いくらフッたといってもコルネリウス殿下は、まだ彼女にご執心なのでしょう?」


 第一王子が召喚された聖女に一目惚れした、という話はすでに国中で噂されている。


「でも、すでにわたくしの知るどのシナリオからも外れていますわ。先日、別の攻略対象のラッハ卿にもお会いしていますが興味が無いようでしたし……」


「彼女はヒロイン。いくらでも修正が利きますわ。悪役令嬢と違って、ね」

「そ、それは……そうかもしれませんけれど」


 続くディアドラの指摘に、ミラフェイナは口ごもる。

 ミラフェイナとディアドラは子供の頃からの親友だ。ディアドラはミラフェイナの身を案じて、敢えて厳しいことを言っているのだ。ずっと前から最悪の事態を予想して二人で策を練ってきたのだから。




「あのう……」


 シエラが、おずおずと挙手をしながら発言した。


「その、もう一人のヒロインらしき子については何か分かったのですか? 名前は確か……」

「アミ・オオトリ、ですわね」


 ディアドラが素早く頭を切り替えて答えた。


「そう、その子です。リクという方と同時に来られたのなら、その方もヒロインの可能性が高いのでしょう?」


「でも公式発表ではスキル鑑定の結果、聖女や勇者ではないと……。本当にヒロインなのかしら?」


 シエラとディアドラの視線に、ミラフェイナは首を振った。


「……正直、アミ様については、ほとんど分かりませんの。アミ様も乙女ゲームはからきし知識がないようで……。お二人とも、わたくしたちより未来の地球からいらしたようですし、わたくしの知らない続編があるのか、そもそもアミ様が『ななダン』と関係あるのかすら分かりませんわ……」


「それは厄介ですね……。せめてヒロインか、そうでないかだけでもハッキリさせたいところですけれど……」


 シエラも考え込んでしまう。相手が何者か分からないのでは、対策は難しいであろう。


「今のところはリク様のご意向で、常に一緒に行動していらっしゃいますわ」

「……それ、何か引っ掛かりますわね」

「何がですの?」


 ディアドラの言葉に、ミラフェイナはきょとんとする。ディアドラは溜息を吐いて説明した。


「ミラ……。身分の高いあなたには、しっかりしてもらわなくては。リク様の意向と仰いましたね。では、お二人が共にあることに裏があるか考えるべきですわ。例えば……、仮にアミ様が『お助けキャラ』か何かで、リク様がそれを知っていて黙っているとか」


「『お助けキャラ』ですの!?」


 ミラフェイナは目を丸くして吃驚した。


「ああもう、仮定の話ですっ!」


「ま、まあ。そうだったのですね。そうですわ、『ななダン』のゲームに『お助けキャラ』はいませんでしたし……」


「本当にしっかりして下さいませ……」


 先が思いやられると額を抑えるディアドラに、「まあまあ」と宥めるシエラ。




 三人のやり取りを聞きながら、王女エクリュアはゆっくりと視線を宙から戻した。


「いずれにせよ、ここで話していても埒が明かないわねぇ」


 ニヤリと微笑んだ王女の顔を見て、ディアドラが「まさか」と呟いた。


「そのまさかよ! この私が直接品定めしてや……、ごほん。差し上げようじゃない」

「ご冗談を……。ユレナを招いた時、どのようなことになったかお忘れではありませんか」

「もちろん忘れてないわよ。宣戦布告してやったじゃない」


 言葉遣いを乱して、ふふんと笑う王女の前で、目眩を覚えたディアドラがふらついてシエラに支えられた。


「キャー。ディアドラ様、しっかり!」


 たじろぐシエラ、心労が尽きないディアドラ、自覚のないミラフェイナ、ひとり楽しげな王女エクリュアと、ツッコミは不在だ。




 わちゃわちゃするサロン内に、魔導通信用の水晶玉が音を発した。


『――ご歓談中、失礼致します。王女殿下、聖女様のことで急ぎお耳に入れたいことが』


 それは王女付きの侍女ミレーヌの声だった。サロン内は王女の命令で人払いをしている。何か緊急の用件がある場合は水晶通信を通して知らせるようになっている。


 それは逆説的に、王女のサロンは極力邪魔をしないというのが暗黙のルールということだ。


「珍しいじゃないミレーヌ。どうしたのよ?」


 水晶越しに、ミレーヌの後ろに聖女付きの侍女がいるのが見えた。


「用件は私じゃなくて、ミラにかしら?」


 王女が尋ねた。聖女付きの侍女の姿を見て、ミラフェイナが慌てて立ち上がる。


「……リク様がどうかなさいましたの?」

『見た者に説明させましょう』


 ミレーヌに促され、聖女付きの侍女が水晶の向こうで深々と頭を下げた。


『お邪魔立てして大変申し訳ありません。ですが、私どもにはどうしたらよいか……』


 聖女付きの侍女は困惑している様子だ。王女エクリュアはミラフェイナと頷き合い、先を促した。


「いいから話しなさい」

『はっ、はい。それが……。聖女様とアウグスト様が、鍛錬場で決闘を始めると……!』


 サロン内の面々は、一瞬ぱちくりと目を瞬かせた。幻聴かな?


 アウグストといえば、グランルクセリア王国に二つある公爵家のもうひとつクレイシンハ家の跡取りで、父親は公爵にして騎士団長のアダム・クレイシンハだ。


 もっと言えば、『光の乙女と七人の伴侶』に出てくる三人目の攻略対象である。








更新

はじまり語りに出ていた悪役令嬢が出てきました


転生/転移者・攻略対象等まとめ

【ななダン】

・ヒロイン:リク

・悪役令嬢:ミラフェイナ

・攻略対象1:コルネリウス王子 ※フリました

・攻略対象2:レンブラント


・隠しキャラその3:ローゼンベルグ公爵


・モブ王女:エクリュア ※姉妹作にも出ている ←New!


【作品名?】

・ヒロイン:ユレナ

・悪役令嬢:ディアドラ

・攻略対象1:クリスティン王子


・モブ王女:エクリュア ←New!


【あるネット小説(作品名未公開)】 ←New!

・モブ?:シエラ ←New!


【不明】

・???:アミ ※作品名も役柄も不明


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