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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第四章 シナリオなんてクソ食らえ

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 しかし意外なことに、国王の決定に異議を唱える者が一人だけいた。第一王子コルネリウスだ。


「ち、父上。それでは婚約破棄の話が……っ」

「!」


 覚悟していた単語を聞いたミラフェイナが、密かに息を呑んだ。


「何を言うコルネリウス。ローゼンベルグ令嬢は、予定通りリク殿に仕えておるではないか。そなたも共にあるのが役目であろう」


「しかし! あの女のせいで俺様はリク殿とお近付きになれませぬ!」


 壇上から指差されたミラフェイナは、ひざまずいた体勢のまま「はい……?」と目が点になっている。


 リクも「あの王子様、何言ってんの?」とジェスチャーで問いかけたが、ミラフェイナは汗を垂らしながら、ぶんぶんと首を振るばかりだった。


 どうやら公爵が失脚した方が都合がいい勢力に、第一王子も入っていたようだ。個人的かつ身勝手な理由で。


 リクは仕えるという名目で第一王子が側に寄ってくる状況を想像して、すぐにその可能性を排除する必要があると結論付けた。


「あ、仕えるとかいらないんで王子様来なくていいですよ」


 いらないんで、来なくていい、の部分が何度もエコーして打ちのめされた第一王子は、床に崩れ落ちた。


 アホ王子を尻目に咳払いをし、グランルクセリア王は機転を利かせてリクにひとつ問う。


「側仕えが不要と申すか。では、ローゼンベルグ令嬢はどうする?」

「……っ、そうだ! その女を追放しろ!」


 急に復活したコルネリウスが、再びミラフェイナの非難を始めた。


 リクは僅かに思考してから、こう答えた。


「彼女も不要です」


 びくり、とミラフェイナは肩を震わせた。第一王子がにやりと嗤った。


(そう……ですわよね。やはり……どんな経緯を辿ったとしても、わたくしは追放され……)


 項垂れそうになるミラフェイナに、リクはゆっくりと手を差し伸べた。


「私たちは、まだこの世界についてよく知らない。仕える必要はないけど、友人として色々教えてくれないかな」


「リク様……」


 リクは口角を少し上げて、微笑むように務めた。笑うのは苦手な方だから、うまくできたかは分からない。


「はい……! 喜んで」


 泣きそうになるのを堪えながら、ミラフェイナはリクの手を握り返した。その手を引いて彼女を立たせた拍子に、足がもつれたミラフェイナがリクの胸に寄りかかる。


「……っと。大丈夫?」

「も、申し訳ありませんリク様。シナリオと違いすぎて動揺して……」


 頬を赤く染めて照れたミラフェイナが、指の先をもじもじさせた。

 二人を見ていたアミが、にこにこしながら近付いて来て公爵令嬢の肩を叩いた。


「ミラさん、シナリオなんて……」


 続きはリクが言った。


「――クソ食らえ、よ」


 三人は互いに顔を見合わせて笑い合った。




「くっ……。友人、だと……!?」


 虐げていた婚約者が『光の乙女』と親しくなっているのを目の当たりにして、第一王子は歯噛みした。








 謁見と予定の確認が終わったリクたちが迎賓宮に戻るところへ、ローゼンベルグ公爵が駆け寄ってきた。


「リク殿……! 何と礼を言っていいのか」


 リクは足を止め、公爵を見上げた。ミラフェイナと同じ金色の髪に、三十代とは思えない端整な顔立ち。国王もそうだったが、この世界は目の保養だらけだ。


「礼を言うのはまだ早い」


 リクの返事は簡潔なものだった。アミが人差し指を頬に当てながら「そうなんだよねぇ」と言った。


「これからの魔物討伐に成功しないと意味がないんだよね」


 アミの言葉に、リクが首肯する。


「それはそうだが、あなたは我が家の没落の危機を救ったのだ」


 うんうん、とミラフェイナが隣で何度も頷いている。

 リクは口元に手を当て、思案した。討伐の成功には多くの協力者が必要だ。


「……なら、魔術師団も討伐に協力してほしい」


「もちろんだ。もし王家が騎士団や魔術師団の派遣を拒否した場合でも、我が公爵家の軍を動員すると誓おう」


「ありがとうございます」


 公爵はミラフェイナの父親だということを差し引いても、いい人そうに見える。彼も味方にしておいた方がよさそうだとリクは考えた。


「礼など!」

「それなら、お互い助け合う友人ということで」

「でしたら、わたくしと一緒ですわね!」

「ミラと一緒……」


 会話しながら、リクは仲良くなる方法を考えていた。


 普通なら苦労を共にするとか、名前で呼び合うなどがある。前者は時間が掛かるものだ。では後者か。しかし、地位の高い公爵を名前で呼ぶのは相当親しくなってからでないと無理ではないだろうか。


 リクは手っ取り早く訊いてみることにした。


「じゃあ、グレゴールと呼んでも……?」


 雷が落ちたような顔をした後、公爵は返事をしなかった。

 迎賓宮に戻る間、さすがにまずかったかとリクは反省した。






 衛兵に伴われてリクたちが戻っていった後、ミラフェイナは動かなくなった父親を不審に思い尋ねた。


「お父様、どうかなさいましたの?」


 ローゼンベルグ公爵はしばらくしてから口元を手で覆い隠し、顔を逸らして「いや……」と呟いた。若干顔が赤い。


 更迭されかけた心労で熱でも出たのかと娘が案じるなか、グレゴール・ローゼンベルグは掠れるような声で言った。


「……女性に名前を呼ばれるのは、お前の母が亡くなって以来なのだ……」

「!?」


 ミラフェイナは信じられないことを思い出した。むしろ何故今まで忘れていたのだろうか。


 それは前世シズカの記憶だ。


 『光の乙女と七人の伴侶』には様々なアナザーストーリー小説やドラマCDも発売されている。その中で、あるドラマCDのボーナストラックにローゼンベルグ公爵とのミニロマンスが収録されていた。


 ファンの中で、グレゴール・ローゼンベルグは隠しキャラその3くらいには言われていたのだ。


「お おお父様っ!?」


 ミラフェイナは、うろたえまくった。

 公爵も顔がいい。悪役令嬢の美貌の根源なのだから当然だ。リクの相手として、推せないこともない。


 しかし今世では父親で、万が一のことがあればリクが継母に!?


 ――などとぐるぐる考えてしまい、今度はミラフェイナが固まってしまった。




「……あの方は素晴らしい魅力と崇高な心に溢れている。コルネリウス殿下を惑わせたのも頷ける……」


 公爵は溜息を吐きながら、リクが歩いて行った通路の先をいつまでも見つめていた。








更新


転生/転移者・攻略対象等まとめ

【ななダン】

・ヒロイン:リク

・悪役令嬢:ミラフェイナ

・攻略対象1:コルネリウス王子 ※フリました

・攻略対象2:レンブラント


・隠しキャラその3:ローゼンベルグ公爵 ←New!


【作品名未公開】※はじまり語りに出てます

・ヒロイン:ユレナ

・悪役令嬢:ディアドラ

・攻略対象1:クリスティン王子


【不明】

・???:アミ ※作品名も役柄も不明



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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しく読ませていただきました! リクとアミが未来人なのが面白いですね。 隠しキャラルートが出てきてこの先どんな展開になるのか楽しみです。 [一言] 楽しい時間をありがとうございます(*^…
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