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鈴木な太郎君は薔薇の都で戦乙女と輪舞曲を踊れるか?  作者: へたれのゆめ
月曜日 目覚ましの音は閻魔の高笑い
13/38

十時限目 嫌なら結構ですが……


 ストックが心もとない……荒唐無稽な殴り書きを書き直す作業が間に合わないという意味で。



 あんな事を言ったのは、何も気が触れたとかでは無く、ちゃんとした考えがあったからだ、一応。


 まず、このロキと言う男のすることは何でもかんでもぶっ飛びすぎている。コップ一杯の注文が、プール一杯分に変わる程度には僕との思考回路の桁が違うと思うんだ。


 だったら何をもってその注文を正常値に近づけるかと言えば、それはこちらのさじ加減も考慮できる注文をするしかない。


 だがこの男の話では、自分が満足しなければ嫌らしいので、余りこじんまりとした願いはダメだろう。二番目の人とかお願いの押し売りされたみたいだし。


 だからこその提案だった。人は、自分しか出来ない事に満足感を得られる生き物だ、相手が神だろうと普通に話せている所から似た様な物だろう。だったなら、他の方法では出来ない事を頼めば、きっと満足してくれるだろうと思ったのだ。


 それに、ヒヨコもかなりの戦力を有していると言うのならば、ここでもう少し強くなってから行っても罰は当たらないだろう。


 「と言う訳で配置変えて?」


 「いや、何がどう言う訳かは知らないよ? まあ、良いけど……で? ここのモンスターの配置だって? それ位ならいいけど、そんなので良いのかい? ここを出れば、ある程度の注文を聞いて作るインスタントダンジョンとかもあるのだけど……」


 まずい、やっぱり在るのかそんなの。イヤにサービス良すぎだなおい。


 「ある程度ってのが嫌な響きだね。僕は快適な修業環境がほしいだけなんだ。だったなら、完全に僕の欲しい環境を作ってくれる位はやってくれなくちゃね。それともロキがくれる物はそんなに安っぽい物ばかりなのかい?」


 少しムッとした顔をするロキ。やっぱり自分の物を低く見られるのは嫌なタイプ見たいだな。と言うか挑発の言葉にしても安すぎるだろう、自分の程度が知れるな。


 「安い挑発だね? でもまあ、確かにその通りだ。このクエストで手に入る物は一級品でなければならない。だったなら、僕も一流のダンジョンメーカーとしてニーズに合った一級のダンジョンをこしらえなければね。ふふ、久々に腕が鳴るね」


 一応乗ってはくれたけど……あれ? 雲行きが怪しいよ?




 「じゃあ、注文を確認するよ? 規模は変えないで迷宮最小規模で部屋数は四のまま、構造は回廊式にして角に部屋がくるようにする、部屋の大きさはすべてここ程度、罠も導入する、出現ポイントは各部屋に四つずつで湧きは早め、最大モンスター蓄積数は三百……これで良いかい?」


 「じゃあそれで」


 本当はモンスターの種類だけ変えてもらう予定だったが……ロキが乗ってきてしまって、規模が大きくならない程度に僕の修行に最適化した形になって行ってしまった。


 四つの部屋を、それぞれ隣の部屋と行き来出来るようにした構造にして、移動しながらの戦闘になる事を想定できるようにした。さらに一定時間で罠が再設置される仕組みになるらしい。


 「じゃあ、次はモンスターの種類だ。何か希望は?」


 「えーと、なるべく経験値の少ないやつ(・・・・・)で、魔って付く鉱石を落とすやつ。あまり強く無いけど活きが良いやつが良い。欲を言えば熟練度が上がりやすいようなのがいたらなお良い」


 少しよくばり過ぎたか、ロキが片眉を上げて考える素振りをする。


 「つっこみ所満載な要望だね? ……魔鉱石って事は杖か魔導具の類か…魔法スキルか遠距離系のスキルでも持っているのかい?」


 「投擲を、槍投げが主で」


 「なるほど、確かにそれなら序盤から集めた方が良いね。強く無くて活きが良いのは結構いるけど、熟練度か……それなら拒絶が高いやつかな」


 やはりプロと言うのは本当なのだろう、目つきが真剣みを帯びていた。


 「最後だけど経験値が少ない、か。中々聞かない要望だね? 訳を聞いても?」


 やっぱり来たか。そりゃそうだろうね、RPGでレベルの上がらない修業とかただの作業だし。でもこれはただレベルを上げれば良いなんて言うものじゃない。


 「んー、成長値をね、上げてからレベルを上げたいんだ。同じ一レベルでもそういうのを上げてからの方が効率良く強くなれるよね? 今までは案山子相手に訓練してたから良いけど、モンスター相手の方がスキルの上りが良いって言うし」


 確かアルの話では、レベルは上がれば上がるほど上げ難くなるらしい。限界があるのかどうかは知らないけど、こうした細々とした作業が後々の結果に結びつくと僕は信じている。


 「なるほど、確かにそうだ。レベルが上がれば強くなれるのだし、成長値もステータスに応じて強くなって行くが、こうした行いが後に補いきれない差を示す事は多い。知っているかい? このシステムは、天才よりも努力を惜しまないやつの方が得をするんだ。普通は余りに上がり難い差だから見向きもされないが……これに気付いたやつで、さらにあきらめないやつは絶対に強くなる。やっぱり君は有望株だね、粉掛けといて良かったよ」


 「粉って……」


 言い方はアレだったが、自分の考えを理解してもらえたのは中々に嬉しい物だった。


 「じゃあ、レベルは五以下の方が良いね。そうなると……あいつか? いやでも……」


 ブツクサと思考に沈みだしたロキ。目の前で手を振っても反応が無かった辺り、検討が付くまでは戻っては来ないだろう。


 時間がもったいないので、まだ散らかりっぱなしだった戦利品を回収することにした。




 三十分ほどたって、やっと終了した。落ちていた物を拾うだけの作業だったが、これが結構大変だった。何時も修業後の石拾いをしていなかったら、今もまだ這いつくばって物をかき集めていただろう。


 今回の戦利品は、魔粘土×397 魔石(小)×78 拒絶の小珠×5と言う物だった。


 ……拒絶の珠って何?


 名前からしてステータスに関係しそうだったが、大体百個に一個位しか取れない物みたいだし、簡単に使う気にはなれなかった。取りあえずはポーチの肥やしになってもらおう。


 「うん、やっぱりこいつ等かな。死にゃしないだろ、多分」


 聞こえてまっせエセカミサマ




 「こいつでどうだ?」


 ロキが徐に指をパチンと鳴らす(無駄に様になってる)と、部屋の隅から黒い物体が染み出て来た。半固体のソレは、ウゾウゾと蠢いている。


 「…スライム?」


 「お、良く知ってるね。正確にはメタルイーターって言う名前だけど、確かにこいつはスライムの一種だ。ちなみにレベルは28くらい」


 ……この方は僕を殺す気だ。


 「いやいや、別に殺す気じゃないよ。こいつはちょっと特殊でね、殺り方次第ではなんてことは無い相手さ」


 「……信用しろって?」


 と言うか心読むなし。


 「してくれたら嬉しいなって話さ」


 多分半目で睨んでいる僕に対して人好きする笑顔で答えるロキ。多分信じれば良い目を見るだろうが、同時に何か大切な物を失う気がする……悪魔にでもジョブチェンジしてしまえ。


 「と言うかレベルが上がらないようにって言う条件聞いてた? 二十八とか、一体倒せば三レベルくらいは余裕で上がりそうな気がするんだけど?」


 悪魔に抵抗するつもりで言い放つ。ここは重要な所だから譲れないのだが、


 「大丈夫、こいつ等の経験値はlv1マットパペットの三分の一だから。つまり超ハズレモンスターでね、稀に希少鉱石を落とす事もあるけど、千回に一回落としたら運が良いってくらいの確率だから、不人気モンスターの中でも結構上位なんだ。まあ、色んな鉱石をランダムで落とすから、鍛冶師辺りにはそこそこ人気なんだけど……」


 あっさりと返されてしまった。


まあ、ここに来て今更ダダこねたって仕方が無いんだけど。


 「……で? 何を如何殺せって?」


 「やっと乗ってくれたね?」


 「どうしたって丸め込まれる気しかしない。取りあえず話して」


 「セッカチだね」とか言いながら、ロキはアイテムボックスから二つの武器を取り出す。シンプルな形のロングソードとメイスだった。


 ロキは両者を見比べた後、まずはロングソードを投げてよこしてきた。投擲のスキル補正か、こちらに向かってくる物の軌道も見えるため危なくは無いのだが、刃渡り一メートル近くの物を投げられると普通に恐い。


 受け取った後で目を向けると、嬉しそうな笑顔でサムズアップをしているイケメン。意図は分かるが、どちらかと言えばこっちを切ってしまいたかった。




 結果だけ言えば、僕はメタルイーターを倒せた。合計で三発の攻撃を与えたが、実質的な有効だった攻撃は二発だったと言える。


 最初のロングソードの時は、当たったと言う感覚はあったのだが刃は通らず、まるでサンドバックでも殴っている様だった。どうやら斬撃に耐性があるらしい。


 次に、突き刺してみると、一応は刺さった。あまり良い感覚では無かったが、切った時の様な無効化感は無かった。これで、一応は槍も有効だと分かる。


 最後に、持ち替えたメイスでぶっ叩いてみると、一撃で倒せた。


 「はい?」


 え? これが二十八レベル?


 見てみると、ロキも何だかびっくりしていたようだった。どうも僕が倒せるとは思っていなかったと言う顔だ。実際に、


 「いやーホントに正攻法で倒せるとは……君、本当にレベル三? まったく見えない」


 とかのたまった。


 ロキがもう一度メタルイーターを出したので、次はメイスで初撃を加える。すると、スライム状の体の表面に、紅い球が浮かび上がってきた。それは数秒でまた内側に潜って行ってしまう。


 「今のがスライム系のモンスターの弱点の核ってやつだよ。傷つければ殆どすぐに即死するって言う機関でね、あれをどう壊すかがカギになってくる。メタルイーターは、打撃を加えると核が体内を移動する習性をもっててね、今みたいに体の表面に出て来ることもあるから、そこを狙えば簡単に倒せたりするんだ。まあ、君なら正攻法でも行けそうだけどね」


 もう一度メイスを振り下ろすと、メタルイーターは簡単に消えた。


 


 あの後も何度か試してみたが、この方法で問題なく倒せることが分かった。槍の石突も打撃にカウントされるようで、石突で殴ってから穂先で付くと言う流れが安定していた。


 そして、こいつ等は名前の通り金属に目が無いらしく、こちらが金属製の装備を付けていると、見境なく襲ってくると言う事が解り。しかもこいつらを相手にすると、金属系のアイテムの耐久値が倍くらいの勢いで下がって行くので、鉄杭一本で十体倒せないくらいだった。


 同じ理由でモナフェスも使えない。ロキの話では、牙や爪などを素材に使った武器を使った方が良いらしく、今日は迷宮の作り変えだけすると言う事になった。


 「じゃあ、僕はこれで帰るけど、他に何かある?」


 どことなくホクホクとした顔でこちらを見るロキにイラつきながらも、最後の心残りが胸を痞えた。


 「なんでも言いなよ。なんかこっちが逆に遊んだみたいで申し訳ないし」


 嘘言え


 「……じゃあ、一つお願いしても良い?」


 「何なりと」


 少し迷うが、考えてみれば同じことをした奴もいるのだから、べつに良いかとも思う。


 うん、良いだろう。


 「じゃあ、三番目にここのクエストやったやつに、“お兄ちゃんはもう少し遅くなる”とでも言っておいてくれない?」


 キョトンとした顔さえ魅力的に見えるロキ(イケメンさん)だったが、何かを感じ取ったのかにやりと笑って「必ず伝えよう」とか言ってから、スっと消えて行った。


 それだけ見ると幻か何かのように思えるのだが、奴が消えると共に、部屋の角から次々と黒い塊が湧いてきた。


 「取りあえず戻るかな」


 モナフェスの耐久率が五十を切る頃、僕は拠点に戻った。












 寝る前にポケットを漁ると、コインの様な形の勲章が三個出て来て泣きたくなった。



 ザ・職人な感じのロキ君を書きたかったんです。それでも愉快犯な感じが残ってしまった気が……したら成功なんですけどね。


 さて、一応魔改造の準備は整いました。この辺からチート臭のする話に移行していきますが……そのうちあまり太郎君が調子づかないような処置をするつもりですので、やり過ぎないように祈ってやってください(笑)

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