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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第三章 再び交換しましょう!

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第82話 辺境伯家として断固拒否する!

「……アリシアが生まれた瞬間、私はアリシアの輝かしい未来のための『傀儡人形』でしかなかったのね」



 生かされていた本当の理由を知った私は、込み上げる虚しさと悔しさを押し殺すように、静かに下唇を噛んだ。


 その時、不意に隣から伸びてきた大きな手が、固く握り締めていた私の拳をそっと包み込む。



「フォール様?」

「公爵とフィリップが陛下に婚約者の交換を申し出た時、謁見の前に呼ばれた俺は、陛下からそのことを聞いて迷わず了承した」

「えっ?」



 初めて聞いた。


 フォール様が婚約者の交換にあっさりと応じていたなんて。



「そのうえで、カーラを俺の婚約者にするよう仕向けた。アリシア嬢とフィリップの仲は、社交界ではいい意味でも悪い意味でも有名だったし、それで愛しい人が迎えられるならそれでいいと思ったから」

「そう、だったのですね……」



 元婚約者から押し付けられた仕事に追われる日々を過ごしていた私は、社交界へ出る機会はほとんどなかった。


 だから、学園では仲睦まじい二人を何度か見かけたことがあっても、社交界で二人がどのように思われているのか知らなかった。


 ――となると、益々あの男の思い通りになったというわけね。


 本当に腹が立つわ。


 すると、私から離れたフォール様が申し訳なさそうに目を伏せた。



「本当は、フィリップの婚約者になってからずっと、理不尽な扱いを受け続ける君を俺の手で救いたかった。だが結局、俺は公爵の思惑に乗る形になってしまった。本当にすまない」



 深々と頭を下げるフォール様に私は慌てて首を横に振る。



「い、いえ! 謝ることなんて何一つありませんわ! むしろ、私はあなた様に感謝しております!」

「感謝?」

「はい! あなた様のお陰で、私は忘れていた大切なものを思い出せましたし、こうして義妹と対峙することが出来たのですから」



 彼の底なしの優しさと真面目さに、辺境伯家の皆様も応えてくださった。


 その温かさが、王都で負った深い心の傷を癒し、忘れていた大切なものを思い出させてくれた。


 ――そして、もう一度立ち上がせる勇気をくれた。



「それは、婚約者として当然――」

「私にとって、その『当然』は『特別』だと、先程申し上げたでしょう?」



 恐る恐る顔を上げたフォール様に私は優しく微笑んだ。


 フォール様は、王都で流れていた私の悪評を知っていた。


 それでも幼い頃の約束を守るため、私の境遇を受け止め、諦めることなく婚約者として迎えようとしてくださった。


 その行動が結果として、あの男の思惑どおりになってしまったとしても、フォール様は家族や使用人たちを説得し、私を迎え入れる準備を整えてくださった。


 だから、謝る必要なんてない。


 むしろ私は、あなた様と再会出来て……あなた様が、私との約束を果たそうとしてくれていることに感謝しているのだから。


 すると、彼の表情に大好きな優しい笑顔が戻ってきた。



「ありがとう、カーラ。心優しい君を妻にできる俺は、世界一の幸せ者だ」

「っ!?」



 フォール様! 公衆の……それも、義妹がいるまでなんてことをおっしゃるのですか!


 頬だけでなく耳まで熱くなる私を見て、満足そうに微笑んだフォール様は、アリシアに視線を向ける。



「さて」


 その一言で空気が変わる。


 甘く穏やかな笑みを消したフォール様が、冷たさを纏った声で静かに問う。



「アリシア嬢。今一度問う。己の真実を知り、『聖女の力』を失った今でも、カーラと『交換』したいか?」



 自分のものだと信じてきた力は、本当は義姉のものだった。


 そして、その力が持ち主へ返された。


『聖女の力』という絶対的な力を失ったことで、公爵令嬢としても、王太子妃……ひいては未来の国母としての立場が大きく揺らぐことは間違いない。


 それなのに、まだ私から奪おうというの?


 ――あの男と同じように、己が欲望を叶えるために。


 一瞬だけ動揺したように息を呑んだアリシアは、すぐにキッとフォール様を睨み返し、勢いよく立ち上がる。


 そして、フォール様へ指を突きつけた。



「あ、当たり前でしょ! 私とフィリップ様の華やかな未来のために、私の力も返してもらった上で、あなた達には犠牲になってもらうんだから!」

「アリシア! あなた、いい加減に――!」

「分かった」



 怒りを抑えきれず一歩踏み出そうとした、その瞬間、低く呟いたフォール様が、私の肩を抱き寄せた。



「フォール様!?」



 いきなり何を!?


 突然距離が縮められ、動揺する私をよそに、フォール様は地を這うような低い声でアリシアへ告げた。


 ――それは、国家反逆と捉えられてもおかしくないものだった。



「ならば、君の父上に伝えろ。『王族の覚えがめでたかろうと、不貞野郎が溺愛する娘からの要求など、リスタット辺境伯家として断固拒否だ』と」


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


絶望に打ちひしがれていたカーラを救ったのは、フォールからの心からの謝罪だった。


真実が明かされた今、アリシアの選択は、カーラとの決別だった。


次回、どうなるのか!?


第三章の佳境に入ってきました!


どうぞ、お楽しみに!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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