第11話 あの女の仕事
※バリストン公爵家当主セドリックの視点です。
我が愛娘アリシアがフィリップ王太子殿下の正式な婚約者になり、繋ぎ役だったあの女は用済みとして田舎貴族のもとに嫁がせた。
辺境伯家への言い訳をどうするか考えていたが、偶然、謁見の間に来ていた田舎貴族の息子があっさりと了承してくれたお陰ですんなりいって良かった。
王宮でのアリシアとフィリップ殿下とのささやかな婚約パーティーが始まるまでの間、執務室に戻った私は、あの女に押し付けていた仕事を整理することにした。
アリシアが殿下の婚約者になることは確定しているとはいえ、あの女には、アリシアが正式に王太子妃として認められるまでの繋ぎ役として、婚約者の座に座ってもらわなければならなかった。
そのため、王太子妃としての勉強を兼ねて、あの女に領地運営に関わる簡単な仕事を任せていたのだが……
「おい、あの女……カーラが、私の代理として行っていた仕事を持ってこい」
「「「「「かしこまりました」」」」
私の命令に恭しく頭を下げた文官達は、黙々と私の机へ書類を積み上げていく。
「ちょ、ちょっと待て!」
「何でしょう?」
何もなかった机の上に書類の山が一つ出来たところで、嫌な予感がした私は、慌てて書類を持ってきた文官の一人に声をかける。
「これらは、本当にカーラがしていた仕事なのか?」
私があの女に押し付けていた仕事は、あくまで領地運営における地味で簡単な仕事だけだった。
だから、書類の山が出来る程の仕事量にはならないはずだ。
そんな私の動揺に追い打ちをかけるように文官が小さく頷く。
「はい。こちら……と言っても、まだ一部ではございますが、カーラ様が旦那様の代理として行っていた仕事でございます」
「は? これでまだ一部だと?」
「その通りでございます」
淡々とした文官の返事に思わず拳を握る。
ふざけるな。
あの女には、本当にほんの少ししか仕事を押し付けていない!
書類の山が出来るほど仕事を任せた覚えなどない!
深く息を吐いた私は、文官達を睨みつけると、積み上がった書類の山から一枚取って目を通す。
「おい、これはエイモンがお前達に任せた仕事じゃないか! それをどうして、あの女がやっている!」
僅かに顔を強張らせている文官に向かって突きつけた書類は、公爵領の補正予算案が書かれているものだった。
本来なら領主である私自らが行わなければならない仕事だが、アリシア周りのことと宰相の仕事で多忙しているため、次期公爵であるエイモンに勉強を兼ねて任せていた。
エイモンは『この程度でしたら、優秀な我が家の文官なら出来ますよ』と言って、文官達へ仕事を振り、私も『優秀なエイモンが言うなら』と了承していた。
それが、どうしてあの欠陥品の仕事になっている!
すると、小さく肩を震わせた文官の一人がとんでもないことを口にした。
「そ、それは! エイモン様が『あの女は、魔力がある私たちより遥かに劣っているし、“父親からの仕事だ”と言えば、逆らわずにやるから押し付けていい』と……」
「馬鹿か!!」
執務室に怒鳴り声が響き渡った直後、顔を引き攣らせる文官達を指さす。
「いいか! カーラを道具として使っていいのは、実の父親であり、公爵家当主である私だけだ! エイモンやお前たちの道具として使っていいものではない!!」
エイモンだって理解していたはずだ。
あの女は、アリシアが殿下と結ばれるまでの繋ぎ役だから、あまり負担をかけさせてはいけないと。
その時、顔面蒼白の文官の一人が、愚かにも主である私へ反論してきた。
「で、ですが旦那様! あなた様やエイモン様が我々に押し付けた仕事は、一介の文官では到底処理出来る量ではありません!」
「は?」
「ヒィッ!」
文官のみっともない言い訳に思わず眉を顰める。
「貴様、仮にもこの公爵家で働く文官であり貴族だろう? ならば、この程度の仕事、捌けて当然じゃないのか?」
公爵家に仕える文官は全員、優秀な貴族家の出身なのだから、当然、幼い頃から領地運営について学んでいるはずだ。
なのに、出来ないだと?
私から再び睨みつけられ、文官達が揃って震え上がる。
まさか、我が家の文官がここまで使えない連中だったとは。
これは、落ち着いたら全員入れ替えなければならんな。
その時、先程の文官とは別の文官が愚かにも主である私に対して言い訳をしてきた。
この文官は、公爵家に働く文官達を纏め上げる者だった。
「確かに、我々は貴族で公爵家に仕える文官です。だから、事務仕事をこなす知識や教養はあります」
「そうだろ? だったら……」
「ですが、我々は文官。領地経営そのものに関しての知識や教養は全くと言っていい程ございません」
すると、二人の文官が声を上げる。
「領地経営は代々、ご当主様を始めとした公爵家の皆様が主導で行われるものですので、いくら我々が優秀でも、主に代わって領地経営に携わるなど無理なのです」
「それに、我々も公爵領から届く苦情や要望への対応で手一杯で……」
「だから、カーラへ仕事を押し付けていたと?」
「は、はい……。カーラ嬢は、一応、公爵令嬢でしたので……」
今にも倒れそうな表情で愚かしい言い訳をする文官達に、私は重いため息をつく。
我が家の文官が、ここまで使えない奴らだったとは。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
というわけで、カーラとアリシアのパパのお話です!
いや~、マジでクズですね(笑)
どうしてこの人、宰相と公爵家の当主出来ているんですかね(笑)
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(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)




