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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第1章 婚約者を交換してください!

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第1話 婚約者を交換してください!

短編からの長編です!

「お義姉さま! 私と婚約者を交換してください!」

「……はっ?」



 穏やかな昼下がり。


 バリストン公爵家の敷地内にある古い別館で、自分で淹れた紅茶を楽しんでいた私――カーラ・バリストンは、ノックもなしに部屋へ入ってきた義妹の言葉に、思わず淑女らしからぬ間の抜けた声を漏らした。



「……コホン。ごめんなさい、アリシア。もう一度言ってもらえるかしら?」



 婚約者との結婚式を一週間後に控えたこのタイミングで、『婚約者を交換してほしい』だなんて無茶苦茶なお願いが聞こえた気がするのだけれど……


 軽く咳払いをして気を取り直した私に、我が物顔で部屋へ入ってきたアリシアは、私が座るソファーの向かいへ腰を下ろすと、瞳を輝かせながら声を弾ませた。



「だから、『私と婚約者を交換してください』と言ったんです!」

「幻聴じゃなかったのね……」


 義妹のワガママに、『また始まった』とばかりに深くため息をつく。


 その横では、部屋の主である私の許可もなく勝手に入ってきたアリシアの侍女が、さも当然のようにアリシアへお茶を淹れ始めた。


 一応、この部屋の主は私なのだけれど。


 まあ、この人たちに何を言っても無駄よね。


 だって、アリシアは可愛くて、私は可愛くないのだから。



「アリシア様、こちらをどうぞ」

「ありがとう~♪」



 侍女が淹れてくれたお茶を嬉しそうに受け取るアリシアに、私は呆れたように小さく息をついた。


 私の一つ下であるアリシアは、今から十年前――私が八歳の時、お母様が亡くなった直後に、お父様が愛人だった継母とともに連れてきた娘。


 政略結婚で結ばれたお父様とお母様の仲は悪く、私が生まれてからというもの、お父様が屋敷へ帰ってくることはほとんどなくなった。


 その頃、お父様は王都の高級娼館で一番人気だった継母と出会い、恋に落ちたらしい。


 そして、娼館で愛を育んだ末に生まれたのがアリシアだった。


 お父様は私とお母様を省みることなく、元男爵令嬢だった継母とアリシアを溺愛した。


 母親譲りのピンク色の髪に、空色の瞳。


 愛らしい顔立ちに加えて愛嬌もあり、誰とでもすぐに打ち解けられる。


 そんな彼女が公爵家に迎えられ、使用人たちと親しくなるまでにそう時間はかからなかった。


 お父様や継母は惜しみない愛情を注ぎ、使用人たちも積極的に世話を焼く。


 それがこの公爵家の日常になっていった。


 対して私は、お母様譲りのヘーゼル色の髪とアイスブルーの瞳を持つ、地味な顔立ちの娘。


 とはいえ、アリシアたちが来るまでは、使用人たちともそれなりに親しかった。


 ……今は全然違うけれど。



『お母様! お母様!』



 そんな私に唯一愛情を注いでくれたのは、お母様だけだった。


 優しくて、気品があって――でも、少しだけ厳しい人。


 私は、そんなお母様が大好きだった。



「美味しい! ありがとう!」



 天使のような笑顔でお礼を言われ、侍女は満面の笑みを浮かべる。


 アリシアが来る前までは、あの笑顔は私にも向けられていた。


 けど、アリシアと継母が来て、使用人たちが皆アリシアの味方になってからは、私は自分のことを自分でするようになった。


 なぜって?


 お母様が亡くなったことで私を守る人が誰もいなくなったから。


 そして、『カーラお嬢様はアリシア様を虐めている』という悪意ある噂が瞬く間に広がったことで、お父様に愛されず、アリシアを虐めている私に仕える必要はないと使用人たちが判断したから。


 もちろん、アリシアを虐めていたなんて真っ赤な嘘。


 そもそも私は、アリシアとまともに顔を合わせることすらほとんどなかった。


 彼女とまともに話す時間がないくらい、屋敷で働いている者なら分かっているはずなのに。


 でも、月に一度の婚約者とのお茶会の日だけは、アリシアに肩入れする使用人たちも、露骨に嫌そうな顔をしながら私の身支度を手伝ってくれる。


 もっとも、毎回用意されるドレスは、なぜかアリシアのものより明らかに地味だったけれど。


 そのせいか、婚約者は私を見るたび露骨に顔をしかめ、アリシアには心底嬉しそうな笑みを向けて甘やかす。


 正直、こんな男、こちらから願い下げだ。


 けれど公爵令嬢である以上、そんなことを口にするわけにもいかない。


 ……たとえ、私を踏み台にして、アリシアと婚約者の仲が深まっていたとしても。



「いえ、()()であらせられるアリシア様のためですから!」



 主に褒められ、誇らしげに胸を張る侍女に、私は再びため息をついた。


 そう。


 アリシアは、この国の聖女。


 世界でも数少ない、無詠唱で浄化魔法と治癒魔法を扱える特別な存在だ。


 それもまた、彼女が使用人たちに愛され、私が虐げられる理由の一つになっていた。


 そんな今さらなことを思い返し、私は小さく肩を竦め、淑女らしく背筋を伸ばした。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


今日から『ワガママ義妹』の長編が始まります!


長編では、短編で描けなかったカーラと婚約者のイチャイチャや、カーラとアリシアの『交換』の真相が描かれます!


どうぞお楽しみに! 


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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