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自由都市執政なんてなるもんじゃない、と彼は日記に書いた  作者: プロ♡パラ
第7章 フォーゲルザウゲ伯爵家編
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記録94 先輩後輩の間柄について


 名目上、第一秘書のアデーラと第二秘書のハータ嬢は、先輩後輩の間柄になったわけである。第二秘書というのが偽装であるとしても、まったく業務をしないでいるのも不自然であるため、いくつかの当たりさわりのない仕事をハータ嬢に割り振って、ついでに指導するようにと、アデーラに指示を出した。

 ……その指示を受けた時、アデーラは普段の端正な顔立ちを大きく歪めて、しかめて見せた。口でこそ文句は言わなかったが、その目は半ば睨みつけるようであり、不服であり、不本意であるということをその視線にたっぷりと乗せて、こちらに向かってそれを投げつけていた。

 そういえばすっかり忘れていたが、アデーラは古巣である本山とかかわりのある人間に対して、忌避感を持っているのだった。(推察するに、かつての歌姫ドロレスとの惚れた腫れたの話を蒸し返されるのが本人としては不愉快なのだろうが)

 とはいえ、アデーラも仕事はきちんとこなす人間である。どこかしぶしぶといった感じはあったが、ハータ嬢に対して向き合い、丁寧にやるべき作業を指導した。

 すると、ハータ嬢は顔を上げて、しげしげとアデーラの方を眺めた。

「あの、もしかして」とハータ嬢は切り出した。「以前にどこかでお会いしたこと、ありませんか?」

「……記憶にありませんが」

「アデーラは昔、本山にいたんですよ」と、わたしは横から口を出した。(余計なことを言うな! と言いたげなアデーラに睨みつけられたが)

「ああ、やっぱり!」と、ハータ嬢は、つっかえていたものがとれたように、すっきりとした笑みを浮かべた。「やはり、アデールカさんでしたか」

「……まあ、本山ではそのように呼ばれていた気もしますが」

「わたしの学年でも、アデールカさんは有名でしたよ。よく女学校の敷地を警護をしていましたよね。まさかこんなところでお会いできるなんて」

「……」

「へえ! アデーラって、本山で有名人だったんですか」と、わたしはまた口をはさんだ。

 ハータ嬢は嬉しそうに答える。

「ええ。アデールカさんは凛々しくて、高潔で。女学生たちの憧れだったんですよ」

「へえ! へえ!」

「……」

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