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自由都市執政なんてなるもんじゃない、と彼は日記に書いた  作者: プロ♡パラ
第7章 フォーゲルザウゲ伯爵家編
91/118

記録91 利害得失について


 これまでの男装姿から一変し、ハータ・フォーゲルザウゲ嬢は女物の装いをしていた。彼女の場合は、むしろそれが一種の変装となったのだろう。身なりも良く、あたかもどこかの裕福なお家のご令嬢といった感じだった。……いや、実際彼女はフォーゲルザウゲ伯爵家のお嬢さんではあるのだが。

 執務室の中で、わたしは彼女と向かい合った。

「ご無事で何よりです」と、わたしはいった。本心からの言葉だった。「しかし、あなたはフォーゲルザウゲ伯爵家の領都で囚われたと聞いていましたが」

「お恥ずかしいことですが、兄上に──あの愚兄に、不覚を取りました。しかし、あの男はほとほと人望がないらしく、フォーゲルザウゲ伯爵家の家来や領民たちが、密かにわたしを逃がしてくれたのです。わたしは身一つで、命からがら、なんとかこの自由カオラクサまで逃げ落ちたわけです」

「なるほど。それは大変だったことでしょう」

「さて、自由都市執政殿。本題に入らせてください。──わたしを、匿っていただけますか?」

 ハータ嬢は、笑みを浮かべた。それは優雅で、高貴なほほえみだった。今まさに追われる身である人間が見せる表情とは思えないほどである。

「……」

 わたしは、やや、逡巡した。

 この自由カオラクサに逃げ込んできたハータ嬢の存在は、間違いなく厄介な存在である。彼女を匿っていることが外部に漏れたら、政治介入や武力介入の口実に利用されるかもしれない。──しかし、逆に、彼女の身柄を抑えておくことで、こちら側からフォーゲルザウゲ伯爵家領邦への、何らかの工作を行うこともできるかもしれない。

 利害得失を頭の中で素早く計算し、そして答えを出した。

「──ハータ・フォーゲルザウゲさま。自由都市とフォーゲルザウゲ伯爵家の友好条約に従い、あなたを歓迎いたします」


 

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