第32話 運命のすれ違い
○ 福岡県遠賀郡芦屋海岸 (昭和26年12月 夕)
吹雪で荒れる海
小鶴(小声)テネーシーワルツのハミング
小鶴(頭にストールを巻いている)強い潮風に吹かれ水平線を見つめている
○ 吹雪で荒れる海
小鶴(小声)テネーシーワルツのハミング
○ 高瀬川 (昭和27年 春 朝)
夕陽で水面がオレンジ色に輝いている
豆千代 リンダ 川の側にしゃがみ込んで石を投げている
○ 高瀬川に架かる小橋の上 六角付近
路上に桜の花びらが降り積もっている
マシュー(軍服)松葉杖をつき立っている
○ 高瀬川
リンダ 川の側にしゃがみ込んで石を投げている
○ 高瀬川に架かる小橋の上 六角付近
マシュー(軍服) ぎこちなく石を拾って川に投げる
○ 高瀬川の水面
無数の桜の花びらが流れている
石が落ちて波紋が出来る
リンダ 振り向く
マシュー 橋の上から微笑む
○ 高瀬川に架かる小橋の上 六角付近
マシュー リンダ(小さなハンドバックを持っている) ベンチに座っている
リンダ 手に持った写真を見ている
○ 高瀬川に架かる小橋の上 六角付近
マシュー リンダ ベンチに座っている
リンダ マシューを見て微笑む
マシュー 微笑む
マシュー かすれた声でテネシーワルツを歌う(リンダに教える様にゆっくりと)
I was waltzing with my darlin'
To the Tennessee waltz
When an old friend I happened to see
I introduced her to my loved one
And while they were waltzing
My friend stole my sweetheart from me ・・・
○ 高瀬川に架かる小橋の上 六角付近
流れる テネシーワルツ
マシュー リンダのカバンに小鶴からもらった赤いお守りを結び付ける
マシュー 微笑み 松葉杖をついてゆっくりと歩いて行く(片足が無い)
リンダ(手に写真を持っている) 見送る
無数の桜の花びらが二人に舞い落ちる
○ マシュー(後姿)
流れる テネシーワルツ
桜の花びらが舞う
○ 水平線
流れる テネシーワルツ
朝日を浴びて波がキラキラと輝いている
○ 福岡県遠賀郡芦屋海岸 (昭和27年 夏 朝)
流れる テネシーワルツ 波の音と蝉の鳴き声
小鶴 潮風に吹かれ水平線を見つめている
○ 水平線
流れる テネシーワルツ 波の音と蝉の鳴き声
朝日を浴びて波がキラキラと輝いている
○ 四条通り (昭和34年 晩夏 南座付近 夕)
蝉の鳴き声
多くの人が行き交っている
○ 質屋のショーウインドウ
真由美 覗き込んでいる
○ 質屋のショーウインドウの中
ギターが飾ってある
○ 高瀬川の水面
ネオンの七色の光が水面に揺れている
○ 高瀬川に架かる小橋の上 六角付近 (昭和34年 秋 夜)
桜の葉が紅葉している
木屋町通り 数人の男女が行き交っている
「黄色いさくらんぼ」流れている
雅幸 欄干に座って膝を叩きリズムを取っている
リンダ(小さなカバンを持っている) 雅幸の横に立つ
雅幸 「リ リンちゃん・・・」
リンダ 雅幸の横に座る
雅幸 「今日 休み?」
リンダ 首を傾げる
雅幸 立ってズボンのポケットから小銭を出し
雅幸 「ジュースでも飲む?」
雅幸 近くの酒屋へ走って行く
リンダ 水面を見つめる
雅幸 走って戻って来て
雅幸 「オレンジでよかった? はい!」
雅幸 リンダに瓶のジュースを渡し 座る
リンダ 「サンキュー!」
雅幸 コーラを飲む
雅幸 「あー ふぅーう!」
リンダ 「あんなぁー まゆちゃん 店 辞めてん」
雅幸 「えっ? ほ ほんま・・・? で 何時 辞めはったん?」
リンダ 「あれからすぐ」
雅幸 「あれからって?」
リンダ 「大文字さんの日やん」
雅幸 「あー そ そいで 今 何したはんの?」
リンダ 「太秦の工場で 働いてはる」
雅幸 「こおば?」
リンダ うなずく
雅幸 「ふーん」
雅幸 リンダ 水面を見つめる
リンダ 「うちも 辞めてん」
雅幸 「えっ?」
リンダ 「お父ちゃんとこ行く事になってん」
雅幸 「お父ちゃんって? リンちゃん・・・」
リンダ 「横須賀ってゆうとこ 知ってる?」
雅幸 「知ってる 知ってる! アメリカの基地があるとこやろ?」
リンダ 「うん!」
雅幸 「スカジャン いっぱい売ってるんやろ ええなぁー で 何時 行くの?」
リンダ 「これから」
雅幸 驚いて
雅幸 「こ これから?」
リンダ うなずく
雅幸 「えらい 急やなぁー」
リンダ うなずき カバンに手を突っ込む
リンダ 「これ・・・」
リンダ 封筒を差し出す
雅幸 「何 これ?」
リンダ 「写真・・・」
雅幸 「写真?」
リンダ うなずく
雅幸 「見てええ?」
リンダ うなずく
雅幸 封筒から写真を出し 見て
雅幸 「この写真 どないしたん?」
リンダ 「この芸妓さん 知ってる?」
雅幸 写真を見て
雅幸 「いやー 知らんなぁー」
リンダ 「もし よかったら 捜してこの写真 渡してほしいんよ」
雅幸 「・・・」
リンダ 「お願い!」
リンダ 手を合わせる
雅幸 「わ 判った・・・ 心当たり聞いてみるわぁー」
リンダ 「おおきに!」
リンダ 立つ
雅幸 「う うん・・・」
雅幸 立つ
リンダ 「ほな 行く」
雅幸 「う うん・・・ 元気でね!」
リンダ 「うん! おおきに! マーボーもな!」
雅幸 「あ ありがとう・・・」
リンダ 歩いて行く
雅幸 「ちょっと」
リンダ 振り返り
リンダ 「何?」
雅幸 「何で あの時 あの曲 やったん?」
リンダ 「あの時? あの曲って?」
雅幸 「大文字の日 何で あの曲 選んだん?」
リンダ 「あー あの歌 うちが初めて覚えた英語の歌やねん」
雅幸 「初めて?」
リンダ うなずき
リンダ 「うん 小さい時に アメリカの軍人さんに教えてもろてん」
雅幸 「ふーん」
リンダ 「その写真な その軍人さんから預かったもんやねん」
雅幸 「そ そうなん・・・」
リンダ 「ほな 行くわ!」
雅幸 「うん! また 京都に帰って来たら 遊ぼな!」
リンダ 「うん! バイバーイ!」
リンダ 微笑んで手を振る
雅幸 微笑んで手を振る
リンダ 背向けて歩き 振り返り目に涙を溜た顔で にっこりと微笑んで背を向けて歩いて行く
二人に紅葉した桜の葉が落ちる
リンダ(小声)テネーシーワルツのハミング
○ リンダのカバン
赤いお守りがぶら下がっている
リンダ(小声)テネーシーワルツのハミング
○ 病院のロビー (平成)
美砂子 座っている カバンに付けた赤いお守りを握り締める その手に涙が落ちる
美砂子(小声)テネーシーワルツのハミング




