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視界に入ってきた大量の光に目を細めた。




「お嬢様!お嬢様がお目覚めになられましたわ!」


途端に慌ただしくなる周囲、支えられて起き上がった幼い女児が、鏡に映る。

その姿は正しくこの世界にふさわしいペルグランジュ公爵家令嬢、ヴァレリーの姿だ。


間違いない。


しかし、拭えない違和感に思わず顔を顰める。すると、支えていたメイド達が怯んだ。

それが雨の夜の獣と重なる。



「獣・・・」

「思い出されましたか?ヴァレリー様は王都へ向かう途中、忌々しい獣人の民兵どもに襲われたのですわ」

「・・・そう」

「馬車は大破しており、お嬢様は雨の中お戻りになられてそのまま3日眠っておられましたわ。あぁお労しい…あの忌々しい獣人どもめ。こんな小さなお嬢様にまで牙を剥くとはなんという・・・」

「もういい」


話が長くなりそうなメイドを止め、思考をめぐらすために枕に顔を埋めようと布団に体を埋める。



ぱふっ




柔らかい感覚と共にキラキラと光る赤色が視界いっぱいに広がる。


「っ! なに!」


顔を上げると目の前にいた猫のような動物が顔を舐めた。


「うぴゃ!・・・これは?」

「お、お嬢様がご帰還の際に抱えておられましたわ。非常に珍しい毛並みで山猫の一瞬らしいですわ。」

顔や首に擦り寄ってくるそれは、確かに猫と言うには大きすぎる。

もし立つことが出来たら私より大きいのではないか?

そう考えると同時に鼻を舐められた。


「っ!やめ!」






その瞬間、轟音と共に大量の光が背中から差し込んだ。

メイド達の悲鳴が上がる。


振り向くとベッドサイドから距離のある西側の壁にはぽっかりと穴が空いており、そこから物凄い速度で黒い影がこちらに来る。




殺気。



頭から腰にかけて電流が走る。


気がついたら立ちあがり、助走を付けて殴っていた。


「っがァ!」


拳の先で、骨が折れる様な、嫌な感覚が広がる。背後から甲高い悲鳴が上がるが気にしている暇はない。

殴っりかかった勢いで宙に浮くと、そのまま脳天に踵を落とす。




クリーンヒット。




重力で勢いがついた攻撃に、為す術もないらしいその獣人はぐったりと床に沈んでいた。

悲鳴と困惑の声が入り交じり、騒がしくなる周囲。

その渦中で私はただ呆然と立ち尽くしていた。








「・・・え?」




自分より数倍も大きい敵の姿とほぼ反射的に動いた己の拳を見つめながら。




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