勇者な村人D 6話
戦闘描写はかなり難しい……というか、殆ど書いていない……
戦いをメインに置いてある作家さんは尊敬します。
今日の投稿はこれで終了です。
次回か次々回に新ヒロイン?と、新ヒロインが出た次の回に閑話を挟みます。
「………疾」
白狼の少女……ロゥが静かに前へ出る。
その身に纏うは冷気。ただし、先程のトロールとは気温も密度も、殺気も段違いのものを。
ここで、亜人の中でもエルフならば自然を、ドワーフなら大地を味方につけるだろうが、獣人は己の体のみで戦うと言う思考になりがちなので、ロゥ同様何らかの術を見に纏うと言う形で攻撃に転じる。
ーーー決して脳筋と言いたい訳ではない。ないったらない!
「付与魔法!闘争!」
「疾走!」
「防御!」
対して、【聖騎士】隊は支援系の魔法だ。
そもそも、人間は支援系、魔族は状態異常系、亜人は純粋な攻撃系統のスキルや魔法を得意とする。
これは、種族間によって微かな違いさえあれど確かだと言われている。
だから、この勝負ロゥにとって圧倒的不利でもあるのだが………
「……もらう」
「るあぁっ!」
ガキィッ!
氷の拳とデコった宝剣が空中に曲線を描き、火花を散らす。
ーーー方や少女の枯れ木のような細腕。
ーーー方や経験を積み、丸太のような腕となった【聖騎士】隊。そして、それを支援魔法で強化してある。
文字にしても、今この目で見てもどちらが勝つかなど
一目瞭然。
………だが、
少女の目に『負ける』という文字は見当たらない。
ただ当たり前のように『勝つ』と確信している。
あの目は……そういう獣の眼だ。
「……やっ」
「だああ!」「はあっ!」
まさに、疾風。
まさに、怒涛。
たかが氷でも、大人の頭大もある氷を手に纏い、振り回せば撲殺とまではいかないだろうが、致命傷にはなり得るだろう。
しかも、それを狙って動いている。
筋肉の絶対量が人類よりも遥に重く、水にすら浮けない獣人。
しかし、まだ出来上がっていない子供の身体だ。その身体では普通、氷に振り回されるのがオチだ。
だが、その体重差を実によく考えられている。
いや、上手く使っているーーの方が正しいのか。
それを上手く使い、本当に上手く致命傷だけを狙いに来ている。
頭。もしくは顎。
地面スレスレに拳を滑らせ、腕を振るう。
たったそれだけの動作を淡々と、間髪入れずに、なんの躊躇いもなく、なんの狂いもなく全員に行なっている。
ーーーまさに、精密機械。
これが、勝ち得るだろうと、判断した理由か。
その戦法に獣らしさはないが、一種の不気味さを垣間見える。
「きめる……」
言うや否や凍った地面に手を付け、四足で滑る。
氷上を滑る……統べる白い狼。
それが、白狼。それこそが白狼。
その様はまさしくーーー氷上の王。
「むうっ」
「ぬあぁっ!」「があ!」「らあっ!」「くっ……」
第三者の目線で見るから分かった事だが、ロゥは上手く乱戦を引き起こしている。
体格差を上手く利用し、股の下を通ったり、脇をすり抜けたりと、引き寄せ、引きつけーーされど自分の戦えるスペースを取ることも忘れていない。
「ふぅ………なかなか、しぶとい……」
ーーーだが、勝負事においては【スタミナ】というものが存在する。
例え多対一だろうと……いや、だからこ
そスタミナの消耗は自分が思っているよりも激しい。
「ーーーリタイアするか?」
突如として聞こえてくる声。
審判が棄権するか?と問いただしてくる。
ーーーなんで意地悪な質問なんだ。
さて、勝負にはスタミナの他に、もう一つ体力の上限値を意味するものが存在する。
これはただの精神論であり、決して褒められた考え方ではないが………
ーーーここぞという時にその真価を発揮するものだ。
「まだ……やる!」
ーーー【根性】
不安定で、不確定で、折れてしまう可能性の方が遥かに高い精神論。
だが、やると言った以上、ここでスタミナ切れを言い訳にして負ける訳にはいかない。
特に、あの自称村人Dが見ている前では。
ーーーそう、これは互いのプライドを賭けた戦い。
「隊長!鎧を脱いでも良いですか!?」
唐突に、ディオンがある提案をしてくる。
「だが、それは……」
「はい!確かにこれは拙達が何か大切なもの達……或いは人達を守る為!その時のみ脱ぐと誓ったものです!」
「なら、どうして今……?」
「本気の!あの氷上の王に!手加減など寧ろ侮辱!拙達は本気で彼女と闘ってみたい!彼女を倒したい!このままスタミナ切れを狙うことも出来るでしょうが……闘い続ければ拙達が負ける事は確定!」
「だから!それでもどうして……っ!」
「負けたくないからです!」
「……っ!」
「勝ちたいのではなく!負けたくない!それが拙達の本気で本当の気持ちであり、言葉です!」
「……っ……」
「隊長!」「たいちょお!」「たいちょおぉっ!」「隊長っ!」
「………………許可します」
「た、隊長……」
「勝ちなさい!」
「「「「…………はいっ!!!」」」」
咽び泣く男達。嗚咽を漏らす主婦の皆様。感激して、感動して、思わず目から汗を零す。
誰彼構わず涙腺が崩壊するこの場は、かなりのカオスだった。
そして、熱気に当てられたのか、ただ波に乗っただけなのか……【聖騎士】隊を応援し出す村人が増えてくる。
その声はやがて大きなエールとなり、津波となり、力となる。
………だが、彼ら彼女らは知らない。
ーーー【死亡フラグ】というものの存在を。
ズウゥゥウーーンと、煌びやかな甲冑が地面へとめり込む音。
ただそれだけで、大気を震わせ、辺りの空気が硬直する。
殺気を孕んだ、宝石でデコった宝剣、宝槍、宝斧。
見た目こそ人を傷つけるのには適してないが、それすらも上回って伝わる“想い”
殺意という名の、真剣という名の、本気という名の、熱く、硬く、何処までも洗練されたーーー“おもい”
それらが、四方八方から様々な光を伴い襲ってくる。
どう見ても少女という年齢の娘には耐え難いものだ。
「………まけない」
だが、それすらも押しのけ、跳ね除け、なにもなかったかのように、表情、眉ひとつ動かさず、氷上の女王はそこに君臨していた。
「……ふぅ……久しぶりだな。これで戦闘するのも」
「本当に殺してしまうかもしれん、が……せいぜい避けてくれ」
「……拙達の攻撃を……何処まで耐えられるかな?」
コキリ、と誰かが首を鳴らしたその瞬間。
その首筋に死神を幻視した。
ゾクリーーー、
人間の……動物の生存本能で振り返るが、誰もいない。
そして、村人……観客の誰かが声を張り上げる。
「まずっ……逃げろおぉ!!」
「うおおぉお!!」
「きゃあぁあ!」
何事かーーと、察知するよりも早く体が浮く。
見れば、シャーロットはシンクに抱えられていた。
「今だけはお許し下さあぁぁあっ!!」
ーーーお姫様だっこで。
「【不動する氷獄】」
ーーー瞬間、いつもの三割り増しキレた口調で紡がれる言葉。
時間にして一瞬。後に、何が起こったのかは知る由もない。
ただ、これだけは分かった事がある。
ーーーあの子、私達と同じだ。と、




