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悪竜の騎士とゴーレム姫【第16部更新中!】  作者: 雨宮ソウスケ
第16部

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幕間二 女獅子は深く静かに伏せる

 ――夜。静かな月夜。

 ザーラは一人、宿の一室で腕を組んでいた。

 窓の外に視線を向け、月を眺めている。

 ただ、その姿は裸体だ。鍛え上げた肉体を惜しげもなく晒している。

 室内にはベッドが一つあり、そこには同じく裸体のマイアが眠っていた。全身に汗を浮かべて、疲れ切った様子で寝息を立てていた。


 ――三時間前のことだ。

 心配していたマイアは、こうして無事に帰還を果たした。

 大きな負傷もなく、全員がホッとしたものだ。

 ただ、マイアは休むこともなく、


『……ザーラ。報告したいことがあるわ』


 緊張した声でそう告げた。

 そしてザーラと兵団のメンバーに自分が知った話を語った。

 とある少年と交わした約束についてもだ。

 流石に全員が眉をひそめていた。

 言葉もなく、ありのまま報告したマイアを見つめていた。


『えっと、ブラフとかじゃないんすか? ザーラさんをおびき寄せるための?』


 と、最初に口を開いたのは、ムードメイカ―のラックだった。


『そのレオスさん。年齢誤魔化したり、若返ったりとか。胡散臭いっすよ』


『……いや。事実だろう』


 それに答えたのはフェイだった。


『私の知るあの男ならあり得る。あの男の秘薬――《樹形図(ユグドラシル)》ならばな』


 全員がフェイに注目した。


『自らに才がないと苦悩したあの男が造り上げた薬物だ。服用すれば体内に新たな神経を構築し、老化を停滞させ、身体能力を大幅に向上させる効果がある』


『は? そんなのがあるの?』


 と、エリスが目を剥いて言う。


『なんかお伽噺の不老不死みたいな薬ね』


『そうですわね~』ルシアが頬に手を当てて小首を傾げた。


『永遠の若さ。誰もが求めそうな薬です~』


『……そうだな。若さはともかく、力は手に入る。求める者は多かった。だが』


 深々と被ったフードの下でフェイは自嘲の笑みを零した。


『あの薬には適性が必要だ。仮に適性がない者が服用すれば、全身の毛細血管が損傷し、十分もしない内に死亡する。適正率はわずか3%。それは生存率でもある』


 フェイの言葉に、流石に全員が息を呑んだ。

 ――いや。一人だけ。

 ザーラだけは静かな眼差しでフェイを見据えていた。

 ザーラはややあって、ボリボリと頭をかき、


『フェイ。その薬ってのは服用した人物の体液からも摂取できるのかい?』


『……ザーラ?』


 パメラがザーラに目をやった。他のメンバーも同じく視線を向ける。

 愛する女たちの注目を浴びて、ザーラは少し気まずそうに口角を上げた。


『昔のことだよ。あたしも小娘だったからね。惚れた男のガキが欲しいと思ったことがあるのさ』


 ザーラは改めてフェイを見やる。


『あたしの力。そんであの頃、ジジイ……レオスの言いつけを破ってあたしが死にかけたこと。要はそういうことなのかい? フェイ』


『……そういうことなのだろうな』フェイは嘆息した。


『私にしても想定外のことだった。お前と出会ったことも。そしてあの男にそこまで気遣う女がいたこともな』


『……一応、あたしはレオスに気遣われてたんだね』


 ザーラは笑う。まるで少女のように。

 あまりにも幼い笑みに、兵団のメンバーが驚いた顔をするほどだ。

 が、ザーラの表情も一瞬だけだ。


『ともあれ、あの坊やの話は信憑性があるってことだね。あたしが探していたレオスの居場所を知っている。なら会わない訳にはいかないね』


『……ザーラ』マイアが言う。


『あの子は怪物よ。可能ならば避けるべき相手よ』


『残念だけど、引けないね』


 ザーラはかぶりを振った。


『それだけ、あたしにとって重要なことなんだ。あんたらにまで付き合わせるのは悪いんだけど……いや。この言い方は情けないね』


 ザーラは表情を鋭くした。


『あんたらは全員あたしのもんだ。あたしに尽くせ。いいね』


 女王の勅命に一人も迷うことなく首肯した。

 ザーラは満足げに頷き、


『みんな。今日のところは休みな。対策は明日考えるよ』


 そこでマイアに目をやった。


『マイア。あんたはもう少しあたしに付き合え。坊やについて知りたい』


『……ええ。分かったわ』


 マイアは承諾した。

 そうして今に至るのだった。



「………」


 ザーラは静かに窓の外を見やる。と、


『……ザーラ』


 部屋の外。ドアの向こうから声がした。フェイの声だ。


『用意が出来た。お前の機体だ』


「ありがとね。フェイ」


 ザーラはドアの方を見やる。


「入ってきて報告すりゃあいいのに」


『そうもいくまい。お前の裸はともかく、マイアもそうなのだろう?』


「はは。あんたって変なところで紳士だね」


 ザーラは笑う。

 一方、ドア越しのフェイは、


『……強いぞ。あの少年は。恐ろしくだ』


「分かっているさ」


 ザーラは双眸を細めた。


「マイアの話を聞いてより一層にね。けどさ」


 そこでザーラは拳を固める。


「ようやくの情報なんだ。国盗りも。獅子兵団も。あたしは全部レオスに会うためにしていることなんだ」


『…………』


「それは何よりも優先する。悪いけどさ」


『……仕方あるまい』


 フェイはボソリと告げる。


『私も交渉には全力を尽くそう。あの男の居場所を知るために。戦闘はあくまで最後の手段にしてくれ』


「ありがとね。あんたには頼ってばかりだね」


『……構わない。私が好きでやっていることだ』


 そう告げて、ドアの向こうから気配が消えた。

 フェイは立ち去ったようだ。

 ややあって、


「……さぁて。どうなるか。いずれにせよ」


 ザーラは窓の外の月を睨み据えて言う。


「レオス=ボーダーの弟子を舐めんじゃないよ。坊や」






読者の皆さま。いつも読んでいただき、ありがとうございます!

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