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悪竜の騎士とゴーレム姫【第16部更新中!】  作者: 雨宮ソウスケ
第16部

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第四章 サザンへの帰還④

 夜。

 ザーラは一人、街中を歩いていた。

 サザンの街だ。夜の繁華街であるため、騒々しい。

 仕事終わりの酔っぱらいも多かった。


(相も変わらない忙しい街だね)


 ザーラは苦笑を浮かべた。

 この騒々しさは街の活気の証だ。

 この都市の領主は、噂通り優秀なようだ。


(さて。どうしたもんかね)


 ザーラは歩きながら考える。

 仲間たちは分散して宿に待機させてある。わざわざ集まってもらったというのに、想定外の事態に待機させてしまっている状況だ。

 ザーラはフェイとマイアと共に行動しているのだが、今は一人だ。

 新たな策を考えるために、こうして散策しているのだ。

 歩いていると、意外といいアイディアが出るかと思ったからだ。

 しかし、


(ああ~、あたしはやっぱ脳筋だね)


 ザーラは深く嘆息した。

 何のアイディアも出てこない。リーゼは残念ながら、もう手を出すのは控えた方がいいだろう。怪物の尾を踏むのは悪手だ。

 ならば、もう一人の標的である白金仮面(マスク・ド・プラチナ)と接触しようかと考え、かの人物が活動拠点にしているという噂のサザンに来てみたが、それも直感任せの判断だった。


(貴族の令嬢。正義の味方。それが必要な駒だ)


 ザーラは双眸を細めた。

 まずは王都パドロに住む有力貴族の令嬢を駒とする。

 見目麗しいことは前提だが、優秀な令嬢ならばなお良しだ。家督を継ぐ令息でなく、令嬢に拘るのは女にしか出来ない手段もあるからだ。


 ――そう。古来より、『傾国』とは女にのみ与えられる名前だった。


(誰からも愛される『令嬢』。そんなご令嬢の危機を救う『正義の味方』)


 正義の味方に関しては、ガワだけで良かった。

 ザーラが被るガワとしてだ。

 その点、白金仮面(マスク・ド・プラチナ)は申し分なかった。

 正体不明の正義の味方。世間では男性と思われているようだが、実際のところ、性別は不明だ。女であっても不思議ではない。

 そしてその実績。ザーラはそのすべてを奪うつもりだった。


(大衆に明かされる正体。そんであたしは騎士となる)


 その後は、徐々に駒を増やしていけばいい。特に優秀な騎士たちをだ。

 同時に令嬢には王を落とさせる。そのための美貌だ。そこはフェイの薬もある。それほど時間はかからないだろう。落とした王には悪逆を尽くさせるつもりだった。


 そうして数年後。

 ザーラが騎士として悪王を討つ。王権の簒奪だ。


 しかし、ザーラはエリーズ国の王になるつもりはない。

 戦死を装い、この地を去るつもりだった。

 尽力してくれた令嬢。

 エリスを筆頭にした優秀な騎士たち。

 そして一国家の莫大な財力。

 それを悪逆の王を討つ戦いの裏で奪うつもりだった。


 国を奪うのではない。土地と民以外の国力のみをすべて強奪する。

 それがザーラの考える国盗りだった。


(そん時、あたしの兵団は一国にも匹敵する。そしたら)


 夜の街を歩きながら、ザーラは双眸を細めた。

 ――きっと、レオスも認めてくれる。

 その時こそ、再び、彼に会えるはずだった。


(……あたしも大概狂っているね)


 苦笑いを浮かべる。

 国盗りをすれば、何百人、何千人という犠牲が出るはずだ。

 だというのに、その首謀者にあるのは一人の男への想いだけだ。

 それはもはや恋でも愛でもない。妄執であると自分でも自覚している。

 だからこそ。


(あたしはもう止まれないのさ)


 ザーラは人通りの少ない路地裏に移動した。

 騒がしい雰囲気から一転、寂寥とした路地が視界に映る。

 ザーラはその奥に進み、誰もいなくなったのを確認してから、


「マイア」


 腹心の暗殺者の名を呼んだ。

 すると、


「……何?」


 路地の奥、暗い影の中から声が返ってくる。姿を現したのはマイアだ。

 別に気配を感じていた訳ではない。

 ただ、マイアは後に付いてきていると思っていた。


「この街に白金仮面(マスク・ド・プラチナ)がいるはずだ。探し出してくれるかい?」


 ザーラは言う。


「リーゼは諦めたけど、あいつのガワの方はやっぱ欲しいからね。けど、あれはかなりの強者だ。いきなり暗殺はしなくていい。居場所を探っておくれ。それと得られる情報は出来るだけ欲しい。あいつの風貌はフェイからもう聞いてるだろ?」


「……ええ。主要人物の風貌は兵団では共有されているわ」


 淡々とした声でマイアは返答する。


「三日欲しい。その男を見つけてくるわ」


「OKさ。頼むよ。けど、この街には今、《水妖星》ちゃんと、怪物坊やもいるようだ。そっちにも充分気を付けるんだよ」


「ええ。分かっている」


 マイアは頷き、すうっと路地裏の奥へと消えた。


「さてさて」


 ザーラは腰に手を当てて、夜空を見上げた。


「マイアも頑張ってくれている。けど、要になる『令嬢』はまだ候補もいねえ。どっかに落ちてないかねえ。血筋と美貌を兼ね揃えて令嬢さんが」










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