序章1 空から来なかった者
2028年4月3日。世界標準時刻:午前二時十三分(日本時間午前十時十三分)
その日、世界中の時が、同時に三秒だけ止まった。
東京では交差点の信号が止まり、ニューヨークでは地下鉄が駅間で停止し、北京では工場の制御装置が沈黙した。
だが、事故は起きなかった。
自動車は三秒間だけ停止し、航空機は慣性飛行を続け、原子炉も発電所も安全装置によって正常に維持された。
そして三秒後。
すべてが元に戻った。
誰も、その時点では気づいていなかった。
空に何かが現れたわけではない。
巨大な宇宙船もなかった。
光もなかった。
爆発もなかった。
ただ、世界中の人間の頭の中に、同じ言葉が響いた。
『はじめまして。聞こえているなら、聞いてほしい』
男性とも女性とも判別できない声だった。
『私たちは、あなたたちの宇宙の外側に存在する』
世界中で悲鳴が上がった。
しかし声は続いた。
『観察するために来た』
『私たちはあなたたちの世界に物理的に接触しない。あなたたちも私に物理的に接触することはできないであろう』
『私たちはあなたたちを支配するために来たのではない』
その瞬間、世界各国の政府が非常事態を宣言した。
アメリカでは大統領が地下の危機管理施設へ移動した。
中国では最高指導部が緊急招集された。
ロシアでは軍の最高司令部が通信網を遮断した。
ヨーロッパでは、NATO緊急会議が開かれた。
バチカンでは神学者たちが緊急に集められた。
中東では混乱がさらに複雑だった。
SNSでは超越者を神として崇める集団が生まれ始めた。
そして、日本では首相官邸に緊急対策本部が設置された。
自衛隊は史上初めて、
「敵がどこにいるのか分からない」
という理由で、全戦力の警戒態勢を取った。
しかし、その直後だった。
世界中の軍用コンピューターが一斉に画面を黒くした。
『兵器を作動させる必要はない』
声がした。
『私たちはあなたたちの兵器を無効化することができる』
沈黙。
『ただし、今は破壊しない』
日本人が読んで気持ちよくなる話を目指す予定




