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レティシアと妄想サイクリング

 良いお天気だ。

 涼しい風が吹く湖畔の道。

 景色はゆったり流れる。

 

 「最近、このコースで新記録が出たんだって。星団新記録らしいよ」

「……へー、そーなんだ」

 マリーさんの視線がつらい。最近デレたと思っていたが、冷たさは健在だ。

「スピード新記録で、若い女性らしいわ。展示とか有るみたいだから、後で見に行かない?実はたくましい太股、憧れるのよね~」

「いや……いいかな。サイクリングってほらのんびりを楽しむものだし」

「私は興味有るわ。その人、意外と細身で可愛いかもしれないし」

 誉められてんだけどね!


 今日は惰弱……もとい、ファミリーサイクリングコースをのんびり走る、のが目的。

 さっきから最上級コースの赤い道が気になって仕方ない。

 そんな私の気も知らない惰弱なソフィアが、私の前後左右にまとわりつく。普通に危ない。

 あの時のマシンは、今と同じ何の変哲もないサイクリング用自転車。もし、戦闘用のマシンに乗ることができていれば、宇宙記録を更新できていたかもしれない……。

「レティシア、なんか怖くなってるよ」

「闘争本能が疼くのよ……」

 わかっています、今日はね。

 それにしても、ソフィアは危なっかしいな。下手クソだ!

「ソフィア、練習場でもう少し練習しようよ~」

「やだよ~。私が練習している間、二人はキャッキャしてるんでしょ?」

「ソフィには私か付いておくわ。レティシアは走りたいんでしょ?」

「……え、そう、なんだけどね」

 いいのかな?いいのかな?

「めっちゃウキウキしてるよこの子。何?レティシア走るの好きなの?」

「ソフィ、さっき言ってた……」

「マリー!それはオチ用の」

「星団記録のこと?レティシアでしょ?……知ってるよ」

 ソフィアの雰囲気が変わった。

「ふふ……貴女がどういう反応を見せるか、ずっと探っていたの。その様子、やっぱり何の覚悟も持っていないようね、タイトルホルダーの覚悟を!」 

 また小芝居を……この前は騙されちゃったけど、そう何度も騙されてたまるかよ!役に酔っているソフィアではなく、後ろのマリーを睨みつける。

(えっ、何?私も分からないよ!)

 何も知らない村人Aの役?違うの?どっちなのマリー!

 ソフィアは私の答えを待っている。なんて答えよう。1、つき合ってやる。2、無視してここを去る。

「私は……」

「えい」

 マリーがソフィアに「膝カックン」!

「あう」

 コレはキレイに入ったな。

 力が抜けて崩れるソフィアをマリーが優しく抱き留める。

「マリィ……何すんだよぉ……」

「レティシアがタイトルをとったのは、私の為なの」

 まだ続けるのかよ……。ソフィア、そんな目で見るな。始めたのはアンタだ。

「ソフィア。私は行くわ。マリーは最近私に構ってばかりでいてくれたから、ソフィア成分が足りてないみたい。二人でイチャコラしていなさい」

「ちょっと、レティ……」

 うわ、ソフィアの力が入らないことを良いことに、マリーったら対面に抱き替えて……あれってチューしてるんじゃないよね?まさかね!

 レティシア号戦線離脱、急速発進!


 落ち着け、落ち着け。

 黄色コースを走り、心を落ち着かせる。

 あの二人は割と子供の頃から知り合いみたいだったし、一緒にいたらお風呂もベッドも当然一緒みたいだし。だからってチューはないよね!いやでもさ、私のことも揉もうとして来るじゃない?あの子達は二人だけの時も、あんなのかしら、どっちかが止めるの?止まるの?そしたら盛り上がってチューくらいしちゃうんじゃないの?そっちの人?でも先生と結婚狙ってるはずだし。もしかしたら街の女の子達はチューくらい普通なのか?私もされちゃうのか?

 動揺してヨタヨタ走っていたら、惰弱コースに入るよう指示された。

 ムカツク!……でもよ、でもさ……

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