レティシアと嵐の日(○○Ver.)
(聞いていたより、重症ね。お兄さんがいたの?)
(すごい仲良かったみたい)
(それもあるんでしょうね)
お兄ちゃん?マリーにも迷惑掛けてるのかな……駄目だよ。フフ……。
全然反省してない様子でお姉ちゃんに謝るお兄ちゃんを思い出して、目が覚めた。何で寝てるんだっけ?
「マリママ、ごめんなさいちょっと立ち眩みみたい。マリーの抱き心地が良すぎてお風呂逆上せちゃったのかな?」
「……それは嫌味か?」
「いや、抱き枕の購入を割とまじめに検討している」
「そ、そう?」
「ほらギュッてしてみなよ」
マリーをお誘いしてみる。
何でそんな真剣な顔してるのだ。手がなんかワキワキシてるのは何故ですか?
「ほら。ルー君も要るんだからイチャイチャしないの。レティシアちゃん、動けるようならパジャマでも着てきて頂戴。ピュアなルー君とスケベなパパには目の毒だわ。さ、お水飲んで」
「ありがとうございます。マリー、行こう」
お気に入りの可愛い猫さんを持ってきてるのだよ。
楽しい晩餐が終わり、よい子は寝る時間。
当たり前のように二人で寝る流れだ。ソフィアがしょっちゅう来るんだったら、客用寝床買っとこうよ。お世話になりながらずうずうしいとは思うけど。
「ねえ、しないの?抱き枕」
購入は確かにしようと思ってるけど。マリーをギュッてしろって事だよね、コレは。
「抱き枕しますよって言ってから実行するのは、ちょっとハードルが高いわ。街に出てくる前は女の子の友だちも居なかったからね」
「じゃあ後ろ向いてよ。私さっき抱き枕出来なかったから」
え~。まじ?
「ソフィとレティシアとを抱き比べるだけだから」
街の女の子ってこういうのが普通なのかしら……?
「……どうぞ」
「い、いただきます……」
いただかれないからね!
…………。
…………。
転がされた。
…………。
「柔らかくて暖かいのは評価されるが、凹凸がやや大きいので抱きつきポイントに困る」
それって、誉められる要素じゃないの?
「次はこっち向いて」
「私が息し辛くならない……?」
抱き枕というか腕枕状態でマリーと向き合う形になる。マリーの心臓の音が聞こえる。
「ソフィと寝るときだってこんなに抱きつかないからね。私もそれなりに恥ずかしいのよ」
そう言うと、頭の下を通るマリーの左手が背中をトントン。柔らかく抱きついている右手は頭を撫でてくれる。
「怖くないからね。何かあっても私達がいるからね」
「……うん」
「何か思い出して怖くなっても一緒にいてあげるから」
「ありがとう」
少し涙が出て、少し寝てしまったかもしれない。
眠ったのはほんの一瞬のはず。だってマリーがまだくっついてるから。でも、マリーが不穏な言葉をつぶやいた。
「……でも、これはこれで良いかもしれない」
抱きつく力が少し強くなる。
ちょっと。
「頭動かさないで。変な気分になっちゃう」
と言われましても息が。
お客様、貴女のボリュームとフィット感は確認できましたのでお試しはここまでです~。足をホールドしに来るな!
「……レティシア」
「ふぁひ」
「やめてよくすぐったい」
だったら離せ。
「私、新しい性癖に目覚めそうなんだけど」
コレって、マリーのわかりにくい冗談だよね!
だからめちゃくちゃ暴れて脱出した。
「暑い……」
掛けていたタオルケットも蹴り飛ばして足もとに。
「レティシアが暴れるから。室温下げるよ」
遠くで機械音が少し聞こえて部屋が冷やされるのが体感で分かる。
「涼しい……」
耳元でマリーの寝息が聞こえてくる。
「もう寝ちゃったか」
マリー家族に心配されまくってしまった。
心配してくれる家族がいるのは良いよね。
また何か忘れている。そう感じるのだけど、何かは思い出せないし、思い出す必要もないと誰かが言っている気もする。
そして朝。
ベッドの上で半裸で抱き合う女が二人。
言い訳をさせてもらうと、寒かったんだ。
暑くもあったんだ。




