レティシアとムキマメムキムキ
私達の食卓にあがる食材のほとんどは原産地が地球だ。しかし、現地の惑星の物が私達のお口にあって、ポピュラーな食材になったというものも当然ある。
私が今まさに皮を剥いているのもその類で、流通名は「ムキマメ」。元は1センチメートルくらいの丸い薄緑の実なのだけど、どんどん剥いていくことができる。一枚目は汚れているので必ず剥く。その次から食べることができる、火は通すけど。緑色が薄くなるにつれて苦味が減っていき、色が透き通り始めるとすごく甘い。良い食材だとは思うけど、この皮むきの面倒さが準ポピュラー止まりの原因だろう。
「さあ、どんどん剥いてちょうだい」
今日はムキマメムキデーだ。
最新の研究結果によると、ムキマメには高濃度の宇宙パワーが宿っているそうだ。特に中心付近に集まっていて、1日十グラムを目安に摂取することで宇宙パワーを身体に取り入れることができるという。
宇宙パワーってなんだと思うけど。
「レティシアも誰かに語ってないで剥きなさいよ」
当然の疑問だと思いますが?
割合としては10キログラム買ってきて、大体3キログラム残るみたい。ムキムキ会員で割ると一人当たり750グラム。イヤ、そんなにいらないんですけど。外の可食部も棄てずに当然山分け。
「ねえ、一人暮らしの私はともかく、君たちはこの量、家の冷蔵庫には入りきるのかい?使わせてもらえるの?」
「」
黙ってないで答えなさい!
え?そんな後悔は既にやりきった?自慢されてもな。
「……お願い、レティシア」
「私も」
「私も」
「やだよ、私のだって大きくないんだから。詰め込んだらビールが冷やせないでしょう!」
それこそ宇宙パワーで何とかしろ。と突き放すのもイヤなのでみんなで考えることにした。ムキムキの手は止めない。だってこの調子じゃ今日中に終わらない。ムキマメ剥き器が欲しいな、ムキマメムキキ。
「中身の分は置かせてあげる」
問題は6キログラム以上はある外側だ。
元々そんな量は入らない。それにわざわざ保存しておく程美味しくないのだ。中身がないからね。
料理するにしても、多すぎるし。
「捨てようよ」
「ダメ」
勿体ない事をしたら宇宙パワーが減っちゃうのか……なんとも律儀なパワーですね。え?転換炉に入れるのも駄目なの?ここまで育った命の力も宇宙パワーのうちですか。でももう剥いてるじゃん……。
「あとは……学校の食堂で使って貰う?」
「断られるだろう。メニューも決まってるしね」
「そういやそうだ」
大量、大量……。
「でも良い考えかもしれない。あれよ、宇宙軍のご飯。あの子達、宿舎暮らしらしいわ。だったら食堂もあるんじゃない?」
またどこで知り合ったのとか、最近色気付いてきたんじゃないとか。うるさいな、今までこういう話が無かったのがおかしいんじゃない。
「どうだろう?国防に関わる部門が、訳の分からない食材を使うかしら」
「そこは大丈夫!あそこには私のファンが少なくとも四人はいる。グループデートを餌にして押し付けよう!ということでアイちゃん、ジャーヴィ君の連絡先教えて」
我ながら酷いとは思うが。
「グループデートって私彼氏いるんですけど!それに連絡先なんて知らないよ。レティシアちゃんがギルバート君に聞けばいいじゃない」
「ギルにほかの男の子の連絡先聞くの、悪いし……」
今週はまだ話せていないので緊張するし!
「彼、優しいし賢いから説明すれば分かってくれるよ。最近お話してないんでしょ?レティシアから連絡してあげればギルバート君も喜ぶと思うな」
そうかな!
「よし、ギルに聞いてみます!」
「ニヤニヤするんじゃないよ!」
「……と言うわけでジャーヴィ、明日皆でもって行くから、調理師さん達によろしく言っといてね。私も手伝うし……え?皆で手伝わなくて良いよ~素人は邪魔だぜ?うん、ありがとね」
即答だった。少しはためらってよ。
少しは罪悪感を覚えたけど、ノルマが消えたことの安心感の方が勝った。




