《はじまりの話》K / 城戸 恒一 1:成立するライブ
[背景: 小さなライブハウス]
恒一: VTuber、ですか?
スタッフ: はい。ご存じですか?
恒一: ネット上でアバターをまとって配信とかを行う人たちのことですよね。
恒一: それが、どうしましたか?
スタッフ: 今度のライブ、VTuberのライブなんですよ。
恒一: VTuberのライブというのは……すみません、詳細がつかめなくて、
恒一: 普通のライブとは違うのでしょうか。
スタッフ: なんでも、ステージには大きなスクリーンを用意するんだそうです。
スタッフ: なので、客席からは、そのスクリーンに投影されたアバターだけが見えるそうです。
スタッフ: VTuberの……その、中の人と言うんですか、
スタッフ: その人は舞台袖で機械とマイクを体につけて歌って踊る。
スタッフ: そうすると、スクリーン上でアバターがそれに合わせて踊るんだそうです。
恒一: なるほど。そういうライブもあるのですね。
スタッフ: 音響的に心配なところはありますか。
恒一: そうですね……
恒一: ステージ袖だと、周囲の音を拾ってしまわないか、心配ですね。
恒一: あとは、音の遅延の可能性もあると思います。
[背景: 小さなライブハウス ステージ袖 簡易的な配信スタジオ]
恒一: (マイクチェック、大丈夫)
恒一: (音量バランス、大丈夫)
恒一: (スピーカー位置、少し調整が必要か)
恒一: (ズレはほとんどなし)
[背景: ステージ上の大きなスクリーン]
恒一: (アバターが踊る……観客が見るのはアバターだけ)
恒一: (そういうライブもあるのか)
[演出: 暗転]
[背景: ステージと客席]
アバター: じゃあ、次の曲、いくよー!
[SE: 歓声]
[背景: 音響機器]
恒一: (低音が少し暴れている)
恒一: (フェーダーを少し下げて)
[SE: 歓声]
恒一: (ボーカルが埋もれる)
恒一: (0.5dBだけあげて)
[背景: ステージと客席]
恒一: (本人は目の前にいないのに)
恒一: (ステージ袖にいるのが本人なのに)
恒一: (ステージが成り立っている)
恒一: (観客たちは何を見ているんだろう)
恒一: (彼らの期待はどこにあるんだろう)
恒一: (何がライブを成立させているんだろう)




