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Kiss of Vampire  作者: かなみち のに
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俺は二人が「悪魔のような」奴らに属しているのを知っている。

だが二人は俺が知っている事を知らない。

誘導する事でようやく二人の正体を掴めた。

「私達はタチバナに執着していない。」

「魅力的ではあるけど手に入れても意味は無いでしょう。」

それはセンドゥ・ロゼから聞いた話だと言った。

数年前、彼が橘結を狙い実際にその力に触れた「感想」だと。

センドゥ・ロゼはその「悪魔のような」奴らからタチバナの存在を「聞かされた」。

彼はその組織の情報量や資金を利用し、

組織は彼の得る情報の共有を望み、両者の利害関係が一致した。

俺が魔女から聞いた話では

そのセンドゥ・ロゼも組織のトップとは接触していない。

団体の名称もあやふやで、個人も偽名を使っている。

用心深いのは判るが関わる俺からしたら不便で困る。

お前達が橘家に興味が無いのなら橘佳純を狙う理由も無い筈だが。

「誰でもいいの。」

「タチバナが私達の脅威にさえならなければ。」

手っ取り早いのは「人質」として利用する。

利用できないのであれば、せめて邪魔をするな。と。

「そう。」

「アナタが彼女を手に入れて、その上で敵対する存在なのか。」

「私達と同じ側のヴァンパイアなのかを確認したかった。」

俺を手に入れればタチバナの力も、プナイリンナの力も手に入る。

「アナタはタチバナを手に入れて何をするつもりなの?」

最初に言った筈だ。俺は自分の生きたいように生きる。

そのために利用できるなら何だって利用する。

お前達こそ目的は何だ。タチバナを邪魔者扱いするにはそれなりの理由や目的があるだろう。

「私達が目指すのは、ヴァンパイアの復権。」


穏健派だとか過激派だとかやはり「嘘」だった。

組織は分裂などしていない。目的もずっと変わらない。

しかし相変わらず組織の名称もトップの名前も言わない。

「勘違いしないで。私達はヴァンパイア以外を差別するつもりはない。」

「ただ区別したいだけ。」

俺は混血だと言った筈だぞ。

「私もよ。」

と、マリ・エル・ハヤセは続けた。

「トーネもそう。」

「私達は産まれた国とか人種ではなく、その種族にょって迫害された者達の集まり。」

ではヴァンパイアに拘る必要は無い。

「組織の中でのヴァンパイアだけのコミュニティと考えて。」

俺もそれに加われと。

「アナタともう1人。サヨ・ハコダ。彼女もヴァンパイアね。」

それを言うなら敷島楓もその1人だが、彼女は今オランダだ。

もしかしたら接触があったかも知れない。

どうかな。

悪魔のような。なんて呼ばれている組織とは関わり合いたくはないな。

「それは他人がそう呼んでいるだけ。」

「私達は私達の権利を得るために戦っている。」

「アナタもそうなのでしょう?」

「連絡先を教えて。メールでいい。もう待ち伏せはしない。」

二人は俺を「ティナ」に引き合わせると約束した。

それがトップの名前か?

「そう。コミュニティのリーダー。」

「彼女があえて組織に名前を付けないのは。」

「それを「制度」にしたいから。」

制度?

「国や地域を超えた制度。ヴァンパイアの地位を法的に認めさせる制度。」

ヴァンパイアに特権階級を与えよ。と言っているようにしか聞こえない。

自衛だと権利だのと言っているが、この連中に「共存」て概念は無いようだ。

俺もこうなっていたのだうろか。

あのまま1人でいたら。綴さんに拾われなければ。この街に来なければ。


「怖い人達ね。」

言葉にこそ出さなかったが、あの人達は自分の正当性を信じて他人を排除する。

口では「分離主義」的な事を主張しているが、その思想の根本は「至上主義」に過ぎない。

「綸。もう関わるのは止めなさい。」

でももう少しで辿り着けます。

「もういいわ。アナタは充分に働いてくれた。」

「あとは大人達の仕事。」

いえ違います。綴さん。反抗するようで申し訳ありません。

俺の仕事です。

これは俺の成すべき事だとか

俺の責任でどうにかしたいとかそんな意味ではありません。

俺はただ、俺も綴さんも含めて、この街の人達が否定されているようで、

それが気に入らない。

綴さんは呆れて、笑った。

「気に入らない。か。」

「綸が口に出して言うくらいだから心の底から腹が立ったのね。」

俺はそいつらが何を相手に戦っているのかを見極めたい。

自己防衛に過ぎないのか、それとも報復行為なのか、

それとも他者の迫害なのか。その全てなのか。

以前、この街について少しだけ考えた事がある。

そして今回の事で二人の話を聞いて思ったんだ。

あいつらの主張と、この街には共通点がある。

橘結も、継ぐ者達のアイデンティティにとっては象徴のような存在だ。

その存在により継ぐ者はこの地に集い、治められている。

多分本人にはそんな意識も意志も全く無いだろう。

それでも彼女は全てを受け入れる。区別も差別もない。

俺はね綴さん。

あいつらが橘家を狙うのって、実はそれが本当の理由なんじゃ無いかって思っているんだ。

「うん。つまり?」

嫉妬。て言えばいいのかな。

ヴァンパイアの頂点に立って、その力を誇示するには橘結は邪魔なんだ。

彼女の「人ならざる者を人とする」技術ではなくて、橘結の存在そのものが邪魔なんだ。

だからと言って直接手を下せば彼女自身が非難の的になる。

ヴァンパイアの復権どころの話じゃない。今や世界中の継ぐ者の的になる。

だからこそ、その仲介として俺が必要なんだ。

橘佳純を人質にするより、はるかにリスクが少ない。

失敗しても俺に責任を押し付ければそれで片付く。

「それを判った上で関わろうとしているならもう止めない。思いっきりやりなさい。」



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