表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここは人類最前線7 ~魔性争乱~  作者: 小林晴幸
武闘大会本選・個人戦(武器なし)の部
109/122

107.【武闘大会本選:個人戦(武器なし)の部】ガチで可憐で可愛い女装漢達の対決



 ちょっと釈然としないモノを後に残しつつ、勇者様(聖女装ver.)はシャーグレッドさんを場外負けで破りました。

 シャーグレッドさん、彼はなんだったんでしょうね……

 強敵っぽい感じに登場した気がしましたが、結果を見ればあまりに無残。大して活躍する機会も貰えず、敢え無く敗退です。

 まあ、魔法合戦の筈なのにあんな強引な手段に出るとは思っていなかったんでしょう。これは敗退したシャーグレッドさんの知見の浅さ、予測の甘さということかもしれません。

 勝負事は何事も自己責任。

 負けるは己の認識と鍛錬不足のせい。

 魔族さん的に考えると、そういうことだと思います。

 勝敗の責任は己にこそある、至言ですよね。


 やり方はどうあれ、勇者様が勝ち残ったことは事実です。

 一回戦敗退にならなくって良かったですね!

 あまり慣れない魔法戦で勝ち上がれたことは純粋に、称賛に値すると思います。


 でも、二回戦以降の試合がいただけませんでした。


 勇者様は順調に勝ち進みましたよ?

 勝ち進んだんですけどね?


 二番煎じはいただけません。

 

 光属性との親和性の高さ故、でしょうね。

 本来不可触である筈の光に『物理属性』を付与するなんて、さりげなく難易度の高いことをやり遂げてるんですけど。

 最早、初級魔法の域を超えていますね?

 ですが本来、それは意図した効果ではなかったとのこと。

 勇者様曰く、使用した魔法は光魔法(初級)の結界術だったらしいんですけど。

 どうも、光属性の強過ぎる勇者様が使ったことで勝手に強化(アレンジ)された結果、光の癖に触れるという謎の効果を発揮した模様。

 勇者様としては攻防において両手が塞がったままやられっぱなしの状況に危機感を覚え、取敢えず魔法に対処しつつ両手を開けることのできる手段を構築しようとしてのこと、だとか。

 それで勝負に決着が着いちゃった訳なんですけど、勇者様も複雑そうなお顔をされていました。

 意図せぬ結果って、やっぱりやった本人にとっても釈然としないナニかを残してくれちゃったようです。


 でも、二回戦以降は意図して使っていたんですよね、勇者様?


 そう、勇者様は。

 シャーグレッドさんとのあの戦いで目覚めた光結界(物理)を用いての勝利に……味を占めやがりました。

 味を占めちゃったんです……何度も何度も、毎回の試合で使ってしまうくらいに。


 いま、勇者様(聖女装ver.)はこう呼ばれています。

 本選前は違う呼び方をされていたのですが……今は『光結界のクリスティーネ』と呼ばれておいでです。

 ……つまり、名前と並び称されるくらい、結界に依存した戦いを貫いているってことです!


 第二回戦以降、勇者様の必勝パターンはこうです。

 試合開始直後に勇者様を起点として、試合場全体を覆う程の大きな結界(光)を張る。

 そのまま対戦相手を試合場から押し出して場外にする。

 

 これだけです。これだけ。

 たったこれだけの手法で、勇者様は試合をずんずん勝ち進んだ訳ですが。

 正直、パターンがお定まりになってしまった分、私は面白くありません。


 勇者様に、私は物申したい。

 二度ネタ三度ネタは、試合が単調になって面白くないんですよ!

 結果も過程もあっさりし過ぎです!

 それに試合相手の方々にも言いたいです。

 毎回同じ技を披露してくれてるんですよ?

 それなのになんで、対応考えてこないんですか?

 それとも対応策を考えておいて、皆さん敗退していったんですか?

 あまりに順当に勇者様が勝ち上がっていったのは、対戦相手との相性……光属性を備えた方や、飛行能力を持った人がいなかったことも大きいと思いますけど。

 やっぱり、私は釈然としません!

 試合の面白味、醍醐味はやっぱり苦戦にあると思うんですよね。

 万事に対応できる必勝パターンなんて、認めません!

「リアンカ……君は、誰の味方なんだ?」

「私は未来永劫、私自身の願望の味方ですよ? あ、あとせっちゃんの」 

「素直さは君の美徳だと思うけど、幾らなんでも素直過ぎじゃないか!?」

「美徳だと思っているのなら、褒めて下さい」

 でも……勇者様の快進撃も、いつまでも続くと思わないで下さいね!

 いつも同じ手が通用すると思ったら大間違いですよ!

「本当に……君は一体、誰の味方なんだ」

「取敢えず、次の試合ではヨシュアンさんの味方ですかね」

「え?」

「だって勇者様の試合……同じ展開ばっかりで、つまらないんです」

「え???」

「ということで、期待してますよ! 画伯」

「はいはーい、任されました☆」

「えっ!?」

 そんな訳で、勇者様の次の試合……この部門の、準決勝ですが。

 次の試合からは他ブロックを勝ち上がってきた猛者とぶつかり合うことになります。

「勇者君には、魔族の意地も見せてあげないとね。今まで、他の奴ら不甲斐無さ過ぎだし!」

「えーーー!?」

 Aブロックだった勇者様のお相手は、Cブロックを制したヨシュアンさんで決まりです!


 なんとなく魔法よりも物理攻撃が得意そうな印象のある……いえ、攻撃云々よりも執筆作業に専念して戦闘とかおざなりにしてそうな印象のあるヨシュアンさんですが。

 本来、彼は魔王(まぁちゃん)直属の指揮下にあるようなエリート軍人☆さんです。

 エリート☆でしかも軍人とか言われても、なんだかピンクに染まりきったヨシュアンさんの印象を思うに違和感がうっすら漂いますが。

 それでも確かに、本来は軍人さんな訳で。

 しかも戦闘狂で知れた種族の、エリートな訳で。

 そんな彼が弱い筈もなく、魔法を不得手とする筈もなく。

 あれでヨシュアンさんは、魔族でも強者の部類に数えられます。

 それにそもそも魔族の軍人さんは、可能な限り全部門強制参加なので。

 (――戦闘大好き魔族さんの皆さんは、軍人でなくとも可能な限りの部門に挑戦しちゃう傾向にありますけど。)


 当然ながら、この魔法戦を中心とした部門でも勝ち抜いてきていたようです。


 さて、そんなヨシュアンさんの、滅多に思い出すこともない特性を思い出してみましょう。

 ヨシュアンさんは、ガルーダのお父さんとセイレーンのお母さんの間に生まれた珍しい混血さんです。

 どっちも魔族には違いありませんが、その特性はかなり異なりますし……画伯はどっちかに偏り過ぎることなく、実は御両親どちらの特性も割と均等に受け継いでいた筈です。普通は、父親か母親のどっちかに偏るものなんですけどね?


 ちなみに父親(ガルーダ)の特殊能力を列記してみますと、こんな感じです。

 ・火属性

 ・光属性

 ・鳥類に対する支配力(鳥の王)

 ・蛇/龍に対する優位補正


 えーと、それで次は母親(セイレーン)譲りの特殊能力がこんな感じですね!

 ・水属性(水精霊の加護)

 ・風属性(風精霊の加護)

 ・幻惑系魔法

 ・催眠・催淫系魔法

 ・呪歌魔法

 ・魅了系状態異常付与


 わあ、ヨシュアンさんのお父さんとお母さん、御夫婦そろって多彩な能力ですね!


 そして、それらを大体万遍無く受け継いじゃった息子(ヨシュアン)(雑種)さん。


「わあ、良かったですね勇者様! 強敵ですね!」

「やったね勇者君! 次の試合はよろしく☆」

 ばちこーんと片目を瞑ってにっこり笑う、画伯のあざとさ。

 その笑顔を真っ直ぐに向けられた勇者様は、両手で顔を覆って屈み込んでしまいました。

 強敵を厭う方ではなかったと思うんですけど……不服な点でも?



 虚ろな目をした勇者様の気持ちを置き去りにしたまま、容赦なく日は過ぎていきます。

 順当に勝ち上がった者の義務であり、権利として。

 いよいよ次の試合……勇者様(女装)vs.ヨシュアンさん(艶本作家)の織成す準決勝が開催されます!

 ……にしてもこうやって特徴を並べてみると、凄い色モノ試合っぽいですね!

 傍目には美女(清楚系)と美少女(天使)の戦いに見えるので、異様さが寄り一層引き立つかのようです。

 果たしてこの試合、どう転ぶのでしょうか?



 戦うべく、試合場に二人の(おとこ)が向かい合う。

 今日も艶々キラキラキューティクル(金髪)を(なび)かせて、聖女ぶりにもますます磨きのかかった印象を前面に押し出す法衣姿の勇者様――例によって、女装。

 対して文字通り空から翼の羽音と共に降り立つは、薄碧の波打つ髪に今日が晴れ舞台とばかりに爽やかな水色のリボンを飾り付け、いつもとは雰囲気を異にするレースの衣装も軽やかに着こなすヨシュアンさん――何故か今日に限って女装。

 晴れやかな日を飾るに相応しい華やかさです。

 相応しい華やかな装い、ではあるんですけど……ナニかがおかしいような気が。

 えっと、何か間違えてるよーな気もするんですけど。

 特に間違ってないですよね! うん、きっと気のせいです!


「よ、ヨシュアン殿……その格好はなんだ!!」

「てへ☆ ゆうs……クリスティーネちゃんに合せてみちゃった♪ どうどう、似合う? 俺、可愛いでしょ!」


 そう言えばヨシュアンさん、前々から色モノ仮装をする時は大概女装をチョイスしてましたよね。

 まあ、ヨシュアンさんの顔からして、仮装となると女装くらいしか選択肢の幅広げられないって本人が前に嘆いてましたけど。

 ……とても芸幅の狭さを嘆いていた人には見えませんね!

 今日も今日とて滅茶苦茶ノリノリじゃないんですか!


「く……っ似合うことを喜ばないでくれ! 何故だか拒絶反応を出しているおr……私が度量の深さで負けた気になるから!」

「女の格好くらい平然と受け止める……でもそれって別に、男の度量の証明にはならないと思うんだけどさ。ああ、でも前に陛下も潔く女装したんだって? 見たかったなぁ、陛下の女装~」

 それってナターシャ雄姐さんのことですか、画伯。

 思いだしちゃったのか、勇者様のお顔が真っ青なんですけど。

 うん、勇者様が真っ青になる時点で、あの女装への評価はお察しです。

「ヨシュアン殿…………悪いことは言わない。アレは多くの意味で心臓に悪かった。見ても別に目に楽しくはないと思う」

「えー? そんなの、受け取り方次第じゃない? 俺だったら、どんな衝撃的光景でも『芸術』に昇華して見せる……!!」

「君の『芸術』は凄まじく偏ってるだろう!? その時点で万民受けする類のモノじゃないってことを理解してくれ!」

「理解はしてる! でも改めない! 何故ならそれが……(お・れ)、だから!」

「自覚があるって本気で性質(たち)悪いなぁ! だから自分に素直過ぎるだろう、魔境の住民!?」

「それが魔境の土地柄だぜ☆」

「一言で片付けるには心象が複雑すぎる……!」


 うん、試合が始まる前から二人の意気も揚々ですね!

 戦意も程々に高まってるんじゃないでしょーか。

 とにかく今は、画伯が期待通りに場を引っ掻き回してくれることを祈りつつ!

 女装男(に見えない)二人の熾烈(笑)な戦い、開始です!






こんだけ多彩な固有能力を持つヨシュアンさんを、容易くボコるりっちゃん……(←死霊術師)


次回、女装vs.女装の仁義なき戦いが始まるよ★

ヨシュアンさんは固有能力以外の魔法を使えない……と、一年前の時点で仰っていましたが。

さてさて、今は一体どうなのでしょーね?

ちなみにエロ本は武器扱いで禁止です。

やったね、勇者様! センさんの二の舞(ツッコミ乱舞)は演じなくって済みそうですよ!

別の意味でツッコミどころは沢山出てきそうな気もしなくはないですが!


少なくともヨシュアンさんは自前で飛行能力があるので、場外負けだけは無さそうです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ