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第1話 逃亡

ここは帝都の城内である。

城内の真ん中である皇居の一室にルーチェとタオは居た。


ルーチェは一週間後に迫った婚礼の儀に着用する衣装を着ていた。

最終チェックの為、朝から侍女達は大忙しである。


髪飾りからネックレス、靴に至るまで侍女達の見立てで沢山用意された中から選び出し、着せ替え人形のようにあれこれととっかえひっかえ付け替えられてようやく全てが決定した模様である。


まるで本番さながらに飾り付けられたルーチェはいつものルーチェとは別人のようだ。

普段は腰まで真っ直ぐに下ろしている髪を綺麗に結い上げられたせいか、揺れる襟足の後れ毛が妙に大人っぽく感じられた。


その頭上に飾られたティアラはルーチェの黒髪をさらに引き立て、長いベールは床まで続いている。

宝石がちりばめられたドレスは胸元の開きこそないがルーチェの細いウエストを強調して腰から下はドレープで足元まで広がる作りとなっている。


一見してどこかのお姫様のようだが、中身はまちがいなくルーチェのままだ。

侍女達が後片付けの為に、一旦全員が出て行ったわずかの隙に俺は声を掛けた。


『ルーチェ。逃げるなら今のうちだぞ!』


「そうよね。今しかないわ!」


ルーチェは長いドレスの裾を鷲掴みにするとそのままドアに向かった。

そーっとドアを開いて廊下に誰もいない事を確認すると、俺達はその部屋を出た。


ルーチェは慣れない長いドレスと高い靴で足元がおぼつかない様だ。

俺はルーチェより数メートル前を歩いて人気のない廊下を誘導した。


俺達はこの皇居に来てまだ1ヶ月たらずだ。

皇居の作りは複雑でしかも広すぎる。


一番大きな塔なのだからしかたがないが、分かっているのは一階は政務の中心となっている執務室だということだけだ。

今自分達がこの塔の何階にいるのかも、どこに何があるのかも残念ながら俺達は知らない。


世界が救われたあの日から約2年になる。

俺達はあれから休暇を楽しんで村に帰ったんだ。


学園ではルーチェの魔法の成長ぶりにルシア先生もずいぶんと驚いたもんだ。

だってそれまでとはうって変わって日常生活のほとんどの魔法をルーチェは流暢に使えるようになっていたんだから。


おかげでそれから1年でケイトと一緒に学園を卒業出来たのは奇跡と言ってもいいだろう。

ケイトは卒業と同時に父親のアルバートの仕事の手伝いをする為に一足先に帝都に向かった。


俺とルーチェはようやく両親の元に帰って、念願の家族揃っての生活を楽しんでいた。

ルーチェは店の手伝いや動物達の世話で、ささやかな親孝行が出来た。


そんなある日、帝都から迎えが来たんだ。

豪華なしつらえの馬車がぞろぞろと5台も勢ぞろいした時には村の人々も驚いた。


その馬車を囲むように警備の兵も20人ほども付いていた。

それでも俺達はまだその時は、ルドの数多い侍女の中の1人にでも雇ってくれるのかと思っていたんだ。


帝都に着いて初めて婚礼の儀が1ヶ月後と聞かされたのにはぶったまげた。

それからは連日、行儀見習いや王妃の心得やらと入れ替わり立ち代り講義の先生方が訪れていたのだった。


俺達の逃亡は今回で5度目だ。

建物の構造を把握していない俺達は、入り組んだ廊下と階段にじゃまをされて過去4回は失敗した。


あっちの部屋からこっちの部屋からと忙しく出入りする侍女達を避けて俺はうまくルーチェを誘導した。

もうだいぶ下に降りて来れたはずだ。


「ルーチェ様~!」


遠くから侍女達の声がした。バタバタと足音もする。にわかに騒がしくなってきた。

しまった。もう逃亡がバレて捜索が始まったらしい。


『ルーチェ!こっちだ!走れ!』


俺は人の声のする反対側へと廊下を走った。


「タオ・・・・待って!ドレスが足に絡み付いて走れないのよ!」


『しょうがないな・・・しっ!人が来る。とりあえずここに入ろう!』


俺達はすぐ側にあった部屋のドアを開けて中に隠れた。

廊下の片隅にあった部屋だというのに中はずいぶんと広かった。


家具や道具類が無造作に置かれて、どうやら倉庫のような感じだ。

どれも年代物らしく埃を被っている事から、不要となった古い家具類なのかもしれない。


『しばらくここに隠れて様子を見ようぜ。』


「タオも意外と方向音痴なのね。出口がどこだか本当に分かってるの?」


『ルーチェよりはマシだと思うけどな。でもこんなに人が多いんじゃ、誰にも見られず出口まで行くのは難しいよ。』


「それもそうよね。とりあえず足も痛いしここで暫く休むしかないわね。」


高い靴を脱いだルーチェははだしのまま部屋の探索を始めた。

積み上げられた椅子やテーブルを見て回る。


「古いけれど、どこも傷んだ所は見当たらないわ。使われないとはもったいない話よねぇ。」


『でもこれってかなり年代物だぞ。作りはずいぶんとりっぱだけどな。』


俺達は辺り一面に積み上げられた家具をすり抜けながら奥へ奥へと入って行った。

この部屋だけでも十分広いが、更に奥にも部屋が続いているらしく最初俺達が思っていたよりかなりの広さがあるようだ。


『こんな所でなにをしているの?』 いきなり家具の隙間からミーアが現れた。


『え?ミーア?』 俺は驚いた。


「ミーアがどうしてこんなところにいるの?」


ルーチェもその漆黒の黒猫ミーアを見て驚いていた。

と言うことは・・・・・・・


ルーチェが振り返ったその向こうには、にっこり微笑んだケイトが立っていた。

おまけにその隣にはアルクまでが居るのだった。


「ケイトとアルクさん!どうして・・・・・」


あちゃ~!どうやら俺達の逃亡は今回も失敗したようだった。










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