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「王妃殿下」
オズワルドと仲良く話していると不意に聞きなれた声に呼ばれる。
振り返るとクラウドが立っていた。
「クラウドさん、お疲れまです。お仕事は終わったんですか?」
「ええ。お傍を離れて申し訳ございません」
なんだか少しだけ、雰囲気が硬いというか…
「クラウドさん?何かありましたか?」
「いえ、なんでもありません」
にこりと笑うクラウドはいつもの表情で。
「そろそろ次のお勉強の時間でしょう?フィラー夫人をお待たせしてしまいますよ」
(私の気のせいだったのかな?)
「そうでした!もういかないと。じゃあオズ、またお散歩しようね」
「楽しみです、姉上」
歩きだして、ふとクラウドが呟くように話す。
「…随分と仲良くなられたのですね」
「え?」
「いえ、オズワルド殿下はあまり話をするところを見たことがなかったもので」
なるほど、とリディアナは納得した。
「私も最初は全然話が続かなかったんですけど、花について熱弁していたら少し仲良くなれたみたいです」
「花、ですか」
「私が詳しく話せるものも花と薬草と料理くらいしかないですからね」
話ながら歩いているうちに、部屋の前につく。
じゃあクラウドさん。また後で、そう言おうとしてクラウドを見上げたとき。
「――羨ましいですね」
「え?」
ぼそりと低く呟かれた言葉にリディアナは耳を疑った。
(聞き間違い?)
「いえ、お勉強頑張ってください」
そう送り出されて部屋の扉が閉まる。
「クラウドさん…?」
不思議に思うも、すでに到着していたフィラー夫人により、その後はすぐにマナーの勉強、言葉の勉強と詰めに詰め込まれて他の事を考える余裕がなくなる。
全てが終わった夕食前。
会ったクラウドは、いつも通りに戻っていて。
「お疲れ様でした」
「クラウドさんこそ、お疲れ様でした」
「今日はマナーを?」
「マナーと言語です。次回はダンスの勉強です、と言っていました…」
なんでもデビュタントの時の第三王女のお披露目でダンスを踊らなければいけないらしい。
げんなりとしたリディアナをみてクラウドが意外そうに声をかける。
「ダンスはお嫌いですか?」
「嫌いというより踊ったことがないです、それより至近距離に近づくのがあまり得意じゃなくて」
それもそのはず、今までリディアナは森で育ち、顔を合わせるのはサルティアと村人、時折町へ行ったときの数人程度。
いきなりの至近距離、しかも異性となるとなんとなく居たたまれなかった。
「では、わたしと練習をしましょうか」
「え?」
「近い距離に慣れるために、私が練習相手になります」
優しく微笑まれ、たしかにいい案かもしれないとリディアナは考える。
「…お願いしてもいいですか?空いてるときで大丈夫なので!」
―――――――
場所は移り、リディアナの自室。
では早速、至近距離に慣れる練習を致しましょう。
そう言ったクラウドに、リディアナは気が付いたら横抱きに抱き上げられていた。
「くらうどさん?!これは意味が、ちょっと、その、違うのではないでしょうか!?」
「そうですか?ダンスとなれば、相手と目を合わせるのも必至。この距離で練習しておけば、本番でも動揺することなく冷静に振る舞えると思いませんか?」
至極真面目に説かれ、そうなのかも、とリディアナは思う。
なぜなら貴族歴はクラウドのほうが長いのだ。
彼がそう言うのならそうなのだろう、というのがリディアナの思考回路だ。
「そ、そう言われると、そんな気もしてきました…」
「そうでしょう?」
「うう、はい」
「では、こうして慣れる練習もしていきましょうね」
「…よろしくお願いします」
こうしてリディアナの耐性をつけるための特訓は行われるのだった。




