眠れない夜
第二十四話 歪み
「寝ないのか?」
カリビアさんと白のスフィアをかけて戦ったその日の夜、俺はなかなか寝付けずにいた。それを見てムジナは心配なのか声をかけてきた。俺は「あまり眠くない」と答え、ムジナを納得させた。
「そういえば戦いの時言いかけてたのって何だったんだ?」
「レインのことだよ」
「……家族のことか?嘘だと言ってたけど……」
「彼には弟がいるはずだ」
「弟?でもどうして……」
口を開いた俺を真剣な紅い眼差しが見つめてくる。その意味はわからなかったが、深い意味を持つことは理解した。
「きっと彼は黙っているだけか、それか……記憶を無くしたんだと思う」
「何だって?!」
レインが一言も言わなかった理由がわかった。記憶が無いのならしょうがない。
「この姿になったとき、一瞬だけ強い力を感じたんだ。霊界は人間界と魔界を繋いでるみたいだからね。すぐに力を感じることができなくなったんだけど、レインに会って確信したよ。あの力の持ち主は彼の身内だってことをね」
「でもどこから感じたんだ?この魔界にはいないということはまさか……」
「信じたくはないけど……恐らく人間界だろうね」
「?!」
ムジナは水晶の中では感じられなかったと言うので、ムジナの魂が解放されたと同時に弟は霊界を離れ、人間界へと向かったのだという。
余談であるが、魔界に行くには霊界を通らないといけないというのでシフはムジナ達より先に霊界に足を踏み入れたようだ。それは正規ルートであり、トイレの花子さんの時のように無理矢理こじ開けたのではないので結界は保たれたままだ。
「残念ながら魔界から霊界を挟んで人間界にある魂を感知することはできない。でもこれは本当だ。レインには弟がいる。それもとても強力な……。もしかするとハレティクラスかもしれないね」
「遭遇しないことを願っておこうか」
「それ、フラグって言うんだよ?」
「そんなのへし折ってやる」
「ヘラらしいね」
くすくすと笑うムジナ。霊界に残されてハレティに近づいたんじゃないかと焦った。しかし黒く光るブレスレットを見るとどこか安心できた。
マジックアイテムはかなり効果があるものと言われており、それに加え、コレクターで質の良いものばかり使うカリビアさんが作ったのであれば効果は絶対と言えるだろう。
「ふぁーあ……なんか眠くなってきちゃった」
「じゃあ寝たら?」
「……嫌。離れたくない」
「どうして離れるって?」
「……次の街に行くこと、知ってるんだろう?」
「……」
「次、いつ会えるかわからないだろ?!仮にハレティを倒したら会えるとしても、力も敵わないし、ここにいないし……それにそれにっ____」
「うるさいっ!!」
鋭い言葉の刃が俺を切り裂いた。俺の中の何かが壊れたのか、俺は夢中で夜の雪山へと駆け出していった。その後、ムジナが追いかけてくることはなかった。
俺は冷たい雪を掻き分け、どんどん暗い道を進んでいった。しかし昼の戦いの疲れが残っていたのか、力尽きて倒れてしまい、そのまま意識を失った。
どうも、グラニュー糖*です!
ムジナとヘラが喧嘩なんて珍しくないですか?
いつまでも仲良しでいてもらいたいものですね!
では、また!




