表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

単発・短編系

雲ひとつない青い空が広がった朝のこと

作者: 啝賀 絡太
掲載日:2026/06/18


 雲ひとつない青い空が広がっていた、初夏の朝の出来事だった。


 俺はいつも通り出勤しようとしていた。


 緩やかなS字カーブと直線道路の交差点をわたろうとし。横目でS字カーブの道路の先を見たら、車道に茜色の塊があった。


 ぱっと見は動物の赤身だと思ったが、それにしてはやけに大きかった。その塊は、艶かしく日光を反射していた。


 それは今、車道に落ちていた。


 何故そこにあるのかはわからない。昨夜激しい雨風だったので、どこから飛んできたのだろうかとも思ったが、どうも軽そうには見えなかった。


 よく見ると、その塊は僅かに脈打っているのがわかった。それに、塊は少しずつアスファルトに接する面積が増えているようで、今は幼稚園児が寝転がれば同じくらいの面積を制していた。


 平べったくて、影が見えなかったので、その塊が周りから浮いて見えた。


 これ以上必要はない。駅は直線道路をまっすぐ歩いていけば辿り着く。このまま素通りすれば良いだけの話だ。


 けれどどうしても、ソレから目を離すことができなかった。


 塊は、なめくじと同じくらいのはやさで、じんわりと動いていた。なにをしでかそうとしているのかはわからない

 じっと塊を見ていた。周りに人はいない。自転車や車も通らない。珍しく、雀や鳩の鳴き声も聞こえなかった。


 目を離せなかったが、これ以上近づこうとも思えなかった。今はゆっくりと動いていても、近づいた瞬間その寝そべった身体を大きく引き上げ、俺の身体を丸呑みするんじゃないか。


 或いは、俺が視線を逸らした途端、塊がとてつもない速さでこちらに近づき、捕食してくるのではないか。


 ありもしない想像が頭から浮かんで、身動きが取れなかった。


 震えで胴体は崩れ落ちそうだったのに、足は道路と一体化したのではないかと思うくらい、重たかった。

 カーブの道路側からトラックが走って来た。


 気がつくと渡り途中だった横断歩道の信号は赤に変わっていた。


 横断歩道を渡りきり、ハッと交差点の真ん中を見た。トラックは変わらない速度で交差点を走り抜けようとした。


 このままだと赤い塊とぶつかる。そうすると、どうなる?


 トラックに轢かれた赤い塊は、どうなってしまうのだろうか。ぐちゃりと粘り気のある音を出して潰れるのか、それとも辺り一面に飛び散ってしまうのか。もしかしたら、悲鳴をあげてしまうかしれない。


 気になったが、直視はできなかった。俺は思わず目を強くつぶった。


 交差点ではなにも音が鳴らず、トラックはそのまま通過した。


 過ぎ去ってくるトラックの後ろ姿や、通り過ぎたあとの道路を見たが、なにもくっついてなかった。


 すぐに交差点を見た。そこに塊はなかった。


 周りに誰もいなかったので、塊があったはずの場所まで近づいた。


 近づいたが、破片も形跡もなかった。


 脳裏には鮮明に思い出せるのに、はじめからそこになにもなかったようだった。幻覚でも見ていたのだろうか。


 空を見上げた。


 雲ひとつない、青い、青い空だった。

 啝賀です。

 なんでもない日常で、急に変なものが見えたら怖いですよね。

 最近、自分が認識していた事と、周りの認識や事実が異なることがあります。

 数字を見間違えたり、相手と会話してて、全く違う解釈をしていたり、パッと見た曲がり角の先で誰かがいると思ったら、誰もいなかったり。

 疲れなのか、寝不足なのかわかりませんが、自分がおかしくなっているのは確かなので、なんだか怖いんですよね。

 そんな中、急に自分でもわからない正体不明なものが出てきたら、本当に怖いだろうなと想像しながら書きました。

 はたして塊の正体はなんだったんでしょうか。

 少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。


 よければまた次の作品で会いましょう。


 啝賀でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ