四港共同訓練
春の手前、四港共同訓練が初めて実施された。
同時刻に警鐘を鳴らし、各港で一次避難を起動し、進捗を相互共有する。
目的は速度競争ではない。手順の互換性確認だ。
デルガは列起動が最速。
北方は担架搬送が最速。
東岸港は再掲示復旧が最速。
南湾港は給水線維持が最速。
得手不得手が、紙の上ではなく実地で分かれた。
合同会議で、イオナは板の中央へ四つの失敗を並べる。
段差板不足。
夜番交代ミス。
点呼票重複。
照合遅延。
「速い港が正しいんじゃない。速い手順を共有できる港が強い」
会議室の空気は重かったが、誰も失敗を隠さなかった。
隠さない空気ができた時点で、訓練は半分成功している。
ガルムは総括で短く言う。
「本番で初めてやる動作を、訓練に残すな」
メラは補給班の報告書へ追記する。
「水と薬は“総量”じゃなく“初動二時間の配分”を先に書け」
午後、四港共通テンプレート第2版が確定した。
更新点は目立たない。だが、現場で迷う箇所だけが確実に削られていた。
解散前、南湾港の責任者がイオナへ頭を下げる。
「次はうちの失敗手順を先に共有します」
イオナは頷く。
「それが一番早いです」
訓練の成果は、拍手ではなく翌日の静かな修正として残った。




