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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
学園祭編

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第13話 『付帯設備』

1/3

 


 野球部が全体を牽引するように先行する中、他の部も徐々に進んでいた。


 ◇ 美術部の場合 ◇


 文化部は“ランニング”ではなく、単なる“移動指示”だった。


 出題型だけでなく攻撃型とも接敵したが、そこは現役探索者。

 テストより剣と魔法のほうが慣れている。

 難なく突破し、第二チェックポイントへ進んだ。


 11階層『中央公園』。


 美術部ルートの第二チェックポイント。

 与えられたクエストは――『スケッチ』。

 公園内での写生大会だ。


 剣や杖をしまい、

『スケッチブック』と『2B鉛筆』を召喚。

 絵を描き始める。


「ねぇ」

 鉛筆を握り、指で縮尺を測る女性に、別の女性が声をかけた。


「なに?」

 軽く線を引きながら返事が来る。


「私たち、何をしてるのかしら?」

「写生よ」


「そ、そうだけど……」

 もっと違う答えを期待していたらしい。


「考えても答えは出ないわよ」

 薫は淡々と言う。


 意味があるのかもしれないし、ないのかもしれない。

 だが“今”考えても答えは出ない。

 ゴールすればわかるかもしれないが、保証はない。


 クエストを放棄したとき何が起きるかも不明。

 今はただ、出されたクエストをこなすしかない。


「私、水を描くの苦手なんだけど……教えてくれる?」

 噴水が目の前で水を噴き上げている。


「いいわよ。私、水を描くの好きだから」

 薫がにっこり笑う。


 その舌が一瞬、顔の前で円を描いたように見えた。

 水面の反射のせいで、紗理奈は気づかなかった。


「やった! 私、紗理奈よ。よろしくね」

「薫よ。よろしく」


 ・

 ・

 ・


 二時間後。

 二人のスケッチブックには、優雅な噴水の絵が描き上がっていた。

 スケッチ段階にしては完成度が高い。


【クエスト『スケッチ』達成。

 報酬:水彩絵の具を獲得。

 新たに『美術室』が解放されます】


「今度は美術室で水彩画ってこと?」

「でしょうね」


 二人はスケッチブックを抱え、美術室へ向かった。


 第三チェックポイント。


【『美術室で水彩画』。描いてきたスケッチをもとに水彩化を描く】


「あれ?」

 紗理奈がスケッチブックを開いて首をひねる。


「私、噴水描いてたよね? なに、この人物画?」


 覚えのない絵がある。

 だがタッチは自分のもの。

 見たことのない女の顔なのに、妙にリアル。


「ずいぶん力のこもった落書きね」

 薫が絵も見ずに言う。


「落書き?」

「集中してるとき、無意識に端っこに変な絵描くことあるでしょ?」


「……あるけど、このレベルで?」

「だから力がこもってるって言ってるの。害はないでしょ」


「……まぁ、そうね」


 紗理奈は噴水のページを開き、水彩の準備を始めた。


 ふわり、とページがめくれる。

 人物画の女が――ウィンクしたように見えた。


 ◇ 第二チェックポイント後の運動部 ◇


「汗かいたんだけど、シャワー室とかないのかしら?」

 バスケ部の女性が言う。


「普通ならありそうだがな」

 男性部員が近づこうとして押しのけられる。


「旧校舎っぽいし、望み薄かもね」


 そう言った瞬間――


「って、あるし!」


 廊下の先に金属扉。

 札には『シャワールーム』。


「怪しくねぇか?」

 男たちは警戒する。


 だが女たちは聞いていなかった。


「使ってみればわかることよ!」

 バレー部の女子が勢いよく言い切る。


 とにかくシャワーを浴びたい。

 それしか頭になかった。


「何かあったら叫べ! すぐ突入してやる!」

 男たちが胸を張る。


「はいはい」


 女たちは軽くあしらって中へ入った。


 そして――


「ああ、そういうことね」


 半目で息を吐く。


 シャワーを出す間、魔力を吸われる。

 ボディソープやシャンプーは“迷宮通貨”の自販機。


 偶然でも親切でもない。

 魔力と通貨を落としていけという商魂。


 だが、狙いがわかれば逆に安心できる。

 女たちは歓声を上げてシャワーに飛び込んだ。


 その声を悲鳴と勘違いした男どもが突入し、

 秒で叩き出されたのは言うまでもない。


 自販機には服やコスメもあり、かなりの額が消えた。


 ・

 ・

 ・


「予想はしてた!」


 シャワー上がりの男が湯気を上げながら叫ぶ。


 シャワーで魔力と通貨を消費したなら、

 次に来るのは――“食事”。


 うまそうな匂いが流れてくる。


『食堂』


 簡素な木札の看板が、彼らには光り輝いて見えた。


「ここはどこだっけ?」

「素晴らしい学校さ!」


 彼らは先を争って食堂へ向かった。



評価いただけると続編を書く意欲に直結します


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