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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
学園祭編

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第11話 『旧校舎』

2/3

 


 (回想)


 妖怪制作。


 妖怪たちの“制服”が決まった後のことだった。


「衣装が決まったことだし、小道具を集めよう」


 カルマがそう言い出した。


「小道具?」

 悠が首を傾げる。


「学校用品を集めるってことでしょ。私たちの遺品ぐらいしか、今はないから」

 友梨が淡々と言う。


「い、遺品って……そうだけど!」

 自分で言うのはおかしい、と沙羅がこめかみを押さえた。


「幸い、ここは旧校舎。新校舎へ移るときに置き去りにされたものがあれば使えるよね」


 カルマは嬉しそうだ。


「ああ」

 妖怪たちが納得して頷く。


「とりあえず、これは決まりだな」


 カルマがペシペシ叩いたのは黒板だった。


『いたぐろ』――ぬりかべの黒板バージョン。


 突然現れて道を塞ぎ、問題を出す。

 チョークを握れば魔力を奪う。

 問題を解けばアイテムをドロップし、解けるまで通さない。


「あと、これね」


 紐でくくられ、ほこりをかぶった山。

 教科書と参考書だ。


『教参算』――鳥山石燕の『教凛々』のパロディ。


 回答に苦慮していると現れ、魔力と引き換えにヒントを探させてくれる。

 ただし古いので、正しいとは限らない。


『くろいた』と年代が合っていることを祈りましょう。


『木机犬』と『木椅子猫』――机と椅子のペア妖怪。


「机には小テストのプリントをつけよう。二体で挟み込んで、80点以上取れるまで放してくれない」


 勉強嫌いの“お客様”には地獄だ。

 魂を削られ、ソウルポイントを寄付してくれるだろう。


「学園祭と言いつつ、勉強なのね」

 薫が呆れたように言う。


「学校なんだから、そんなものでしょう」

 一葉が肩をすくめる。


 学園祭の前には中間考査、後には期末考査。

 アメとムチの落差が激しいのが“学校”だ。


「学園祭であって文化祭でないところが落とし穴よね」

 えいり(元教師)が喉の奥で笑う。


 文化祭は文化活動中心の“祭り”。

 だが“学校の祭り”と定義すれば、体育祭も含まれる。

 さらに進めれば――反論はあるだろうが“テスト”も祭りの一種だ。


「各部の試合や展示会も、なんだね」

 裕子が足を撫でながら言う。


 通常授業以外はすべて“学校のイベント”。

 つまり、全部“祭り”にできる。


「く、苦しくない?」

 フラノが半笑い。


「ダンジョンでは、オレがルールブックだ!」


 カルマが胸を張る。


「実際、フリーハンドだからな。作れるものに限りはあるけど」


 カルマがニヤリと笑う。


「この“限り”を広げるために、使えるものを探そうってわけさ」


 どんなものも妖怪の基になる。

 百鬼夜行の始まりだ。


 旧校舎に久しぶりの賑わいが戻ってきた。


 そして、見つかる――生み出される――妖怪たち。


『ゴム消し入道』:巨大な消しゴム。

 失敗を消してくれるが、余計なものまで消す。


『エンエンピツ』:試験時に協力してくれる鉛筆妖怪。

 ただし一本だけデッサン用が混じっている。


『教壇地蔵』:成績確認・宿題提出・進路相談を受け付ける。

 返答は事務的。


『黒い学ラン』:重くて埃っぽい。誰かが隠れているかも。


『白いカーテン』:薄く透ける。油断するとまとわりつく。


『水槽』:生き物の気配はない。


『名札がない棚』:入ってくれる生徒を探している。


『名簿』:名前がにじんで読めない。担当生徒を探している。


『チョーク箱』:未来を描く日を夢見ている。


 ・

 ・

 ・


「……校則、警告しておくべきかもな」


 旧校舎を見回った後、カルマはメモを書いた。


『家庭科室ではカレーの話をしないでください』

 みんなが張り切ります。


『理科室のホルマリン漬けを見ても中身を考えないでください』

 あなたかもしれません。


『アルコールランプの炎を見すぎないこと』

 目を離せなくなります。


『平均台には乗らないこと』

 落ちたら、どこまで落ちるかわかりません。


『一人の時に卓球台を出さないで』

 無限にラリーが続きます。


「うん。警告はした。聞くかどうかは各自の判断にゆだねる」


 無責任と言われそうだが、

 そもそも他人の行動に責任なんて持てるはずがない。



読了・評価。ありがとうございます。


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