第11話 『旧校舎』
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(回想)
妖怪制作。
妖怪たちの“制服”が決まった後のことだった。
「衣装が決まったことだし、小道具を集めよう」
カルマがそう言い出した。
「小道具?」
悠が首を傾げる。
「学校用品を集めるってことでしょ。私たちの遺品ぐらいしか、今はないから」
友梨が淡々と言う。
「い、遺品って……そうだけど!」
自分で言うのはおかしい、と沙羅がこめかみを押さえた。
「幸い、ここは旧校舎。新校舎へ移るときに置き去りにされたものがあれば使えるよね」
カルマは嬉しそうだ。
「ああ」
妖怪たちが納得して頷く。
「とりあえず、これは決まりだな」
カルマがペシペシ叩いたのは黒板だった。
『いたぐろ』――ぬりかべの黒板バージョン。
突然現れて道を塞ぎ、問題を出す。
チョークを握れば魔力を奪う。
問題を解けばアイテムをドロップし、解けるまで通さない。
「あと、これね」
紐でくくられ、ほこりをかぶった山。
教科書と参考書だ。
『教参算』――鳥山石燕の『教凛々』のパロディ。
回答に苦慮していると現れ、魔力と引き換えにヒントを探させてくれる。
ただし古いので、正しいとは限らない。
『くろいた』と年代が合っていることを祈りましょう。
『木机犬』と『木椅子猫』――机と椅子のペア妖怪。
「机には小テストのプリントをつけよう。二体で挟み込んで、80点以上取れるまで放してくれない」
勉強嫌いの“お客様”には地獄だ。
魂を削られ、ソウルポイントを寄付してくれるだろう。
「学園祭と言いつつ、勉強なのね」
薫が呆れたように言う。
「学校なんだから、そんなものでしょう」
一葉が肩をすくめる。
学園祭の前には中間考査、後には期末考査。
アメとムチの落差が激しいのが“学校”だ。
「学園祭であって文化祭でないところが落とし穴よね」
えいり(元教師)が喉の奥で笑う。
文化祭は文化活動中心の“祭り”。
だが“学校の祭り”と定義すれば、体育祭も含まれる。
さらに進めれば――反論はあるだろうが“テスト”も祭りの一種だ。
「各部の試合や展示会も、なんだね」
裕子が足を撫でながら言う。
通常授業以外はすべて“学校のイベント”。
つまり、全部“祭り”にできる。
「く、苦しくない?」
フラノが半笑い。
「ダンジョンでは、オレがルールブックだ!」
カルマが胸を張る。
「実際、フリーハンドだからな。作れるものに限りはあるけど」
カルマがニヤリと笑う。
「この“限り”を広げるために、使えるものを探そうってわけさ」
どんなものも妖怪の基になる。
百鬼夜行の始まりだ。
旧校舎に久しぶりの賑わいが戻ってきた。
そして、見つかる――生み出される――妖怪たち。
『ゴム消し入道』:巨大な消しゴム。
失敗を消してくれるが、余計なものまで消す。
『エンエンピツ』:試験時に協力してくれる鉛筆妖怪。
ただし一本だけデッサン用が混じっている。
『教壇地蔵』:成績確認・宿題提出・進路相談を受け付ける。
返答は事務的。
『黒い学ラン』:重くて埃っぽい。誰かが隠れているかも。
『白いカーテン』:薄く透ける。油断するとまとわりつく。
『水槽』:生き物の気配はない。
『名札がない棚』:入ってくれる生徒を探している。
『名簿』:名前がにじんで読めない。担当生徒を探している。
『チョーク箱』:未来を描く日を夢見ている。
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「……校則、警告しておくべきかもな」
旧校舎を見回った後、カルマはメモを書いた。
『家庭科室ではカレーの話をしないでください』
みんなが張り切ります。
『理科室のホルマリン漬けを見ても中身を考えないでください』
あなたかもしれません。
『アルコールランプの炎を見すぎないこと』
目を離せなくなります。
『平均台には乗らないこと』
落ちたら、どこまで落ちるかわかりません。
『一人の時に卓球台を出さないで』
無限にラリーが続きます。
「うん。警告はした。聞くかどうかは各自の判断にゆだねる」
無責任と言われそうだが、
そもそも他人の行動に責任なんて持てるはずがない。
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