第199話 『ダンジョン設計』~学園祭の舞台づくり~ 前編
2/4
迷宮は、ただの殺戮装置ではない。
それは『記憶』をなぞる舞台であり、『感情』を吸い上げる装置。
カルマはそう考えた。
だからこそ、彼が設計したのは、木造校舎を模したダンジョンだった。
ギシギシと鳴る床板、煤けた黒板、誰もいない教室。
そこに詰まっているのは、かつて誰にも見られなかった『日常』の残響。
構造:三年制・九階層+イベント階層
迷宮は1年につき3階層、計9階層で3年間の学校生活をなぞる構成。
さらに、10階層目には『イベントフロア』を設け、入学式や卒業式、文化祭などの『行事』を演出する。
この構造は段階的に繰り返される。
入学式から始まって、卒業式まで。
学校行事をなぞっていく。
「入学式では『生徒手帳』の配布と『校歌斉唱』でもさせようかな」
「生徒手帳?」
悠が首を傾げる。
「中身はスタンプラリー帳。各階層にあるイベントをクリアしていく感じにしようと思ってる」
「・・・ずいぶん、楽しそうなダンジョンね?」
確かめるように友梨が問いかけた。
「オレも別に『探索者』すべて・・・まして『人間』すべてを憎んでいるわけじゃないからな。死者の出ないダンジョンでもいいと思っているよ」
・・・死者が出ないとは言わないけどね。
「入学式は、歓迎の儀式だ。 生徒手帳を渡し、校歌を歌ってもらう。 それだけでいい。 彼らが『生徒』になるには、それで十分だろ」
うんうんと楽しそうに頷いて、カルマが手にしたノートに何かを書き付けていく。
「次は定番の身体測定だ。スタンプラリー帳の1ページ目、身長、体重、視力、握力、心拍数を図っていく。ただし、どれも魔力吸収機能付きにしよう」
攻撃性を感じるようなものではなく、ごく微量でいい。
『マナポイント』を稼がせてもらう。
【身長:棺桶型測定器。夢の高さに届かない。
体重:心の重さ。言葉の沈殿。
視力:見たくなかったものが見える。
握力:掴めなかった手。
心拍数:名前を呼ばれた瞬間の鼓動。
※全項目、魔力吸収機能付き。微量で十分。
※測定結果は『評価』形式。数値は不要。】
「そうしたら・・・『新入生歓迎会』だな。楽しんでもらえるよう、ミニゲームを・・・。『たたいて・かぶって・ジャンケンポン』なんて、盛り上がるんじゃないかな?」
「わかりやすいうえに、無駄に盛り上がるのよね。あれ」
頭を抱えて、薫が頷く。
お嬢様なのに、ムキになっていたなぁと、カルマは思い出した。
【ゲーム形式:「たたいて・かぶって・ジャンケンポン」
・魔力反応:叩く瞬間に魔力が放出される(無意識)。
・防御側は魔法障壁を展開(反射的)。
・勝敗に応じてスタンプラリー帳に『勝敗』が記録される。
・目的:勝ち負けの判定がのちに賞品の選択などに影響してくる。
・副作用:魔力供出(微量)、叩かれるときのわずかな恐怖(ソウルポイント』
「続いては定番行事の『運動会』だ。お客さんたちには大いに競い合っていただこう。勝ち負けをしっかり記録することで、『これには意味がある』とわからせる」
「・・・どんな意味があるの?」
元陸上短距離のエース裕子が、久しぶりに生えている足をさすっている。
「んー、最終的な『スタンプラリー達成報酬』に差が出るとかだね」
種類や質に差をつけるのだ。
ゴールすればみんな一緒、ではない。
「小学校の運動会。100メートル走で一位はノートだけど、順位が下になると鉛筆とかだったのと一緒だね」
「・・・たとえが・・・。わかりやすいけど!」
ダンジョンっぽくないっ!
肩にツッコミが入った。
昔なら跡が残るようなやり方だっただろうけど、今は押された程度だ。
むしろ心地いい。
「運動会の次は・・・」
なにがあったっけ?
考えて思い出した。
「生徒総会だ」
意見を求めるふりをして、実は意見を縛る会合。
「委員会に強制参加させよう」
風紀委員は治安維持。
図書委員は記録の管理。
視聴覚委員会は行事の内容配信。
保健委員は回復と健康増進。
「ありふれて見えるけど・・・」
クスッ、と真梨華が笑った。
これも、『スタンプラリー帳』に記載。
のちの評価につなげる。
「で、ついに来ました『中間考査』だ」
実技。
武器を使っての模擬戦。(ソウルポイントの吸収)
魔法による威力測定。(マナポイントの吸収)
座学。
ごく一般的な教養問題。
ただし、筆記具は使うと魔力を消費する。(マナポイントの吸収)
座学が苦手な者によっては『ソウルポイント』も吸収できる。
成績はもちろん、記載され評価される。
評価いただけると続編を書く意欲に直結します




