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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第60話 妖怪制作③ ~垢嘗め~ 前編

1/3

 


「お! サブマス候補発見!」

 テケテケを仲間に加えて歩いていると、なじみ深い『足』があったので拾った。

 もちろん、足には腰も腹も胸も腕も首も頭もついている。


 外見は奇麗なまま残っていた。

 ・・・少なくとも、遠目にはそう見えた。


 近づいてみると、頭部の下に、何かが『溶けたように』広がっている。

 固形とも液体ともつかないそれは、まるで振動で崩れたゼリーのようだった。


 目は、妙に生々しく、こちらを見ているような錯覚を覚える。

 まるで、まだ何かを訴えようとしているかのように。

 だがそれだけのこと。

 この程度なんとも―――


「おもわ・・・」


 そこまで言って、カルマは口を押さえた。


「ゲボッ! ムリ・・・」


 さすがに吐いた。

 一度細胞レベルで吹き飛ばされた身とはいえ、これはキツい。



 それはそうと、気を取り直して拾ったものを確認した。

 水魔法の使い手、校内九大魔女が一人『八島薫』様だ。


 9人いる大魔法使いの一人。

 ただ、その能力はどちらかと言うと『回復系』。


 状態異常回復などに強い半面、攻撃力は高くない。

 回復力も専門のヒーラーには及ばない。

 派閥外の女子からは「9人中一番弱い」と言われていたはずだ。


 生まれついてのお嬢様。

 とある大企業の創業者一族の直系。

 現会長の孫で、現社長の姪というセレブだ。

 根っからの女王様気質で、それはもう可愛がっていただいた。


 ◆往路・ダンジョン15階層での追憶◆


 セーフティエリアでのこと。

 突然、それまであまり接点のなかった人から呼び出しを受けた。


「いいこと? 薫様はとても素晴らしいお方なの。あなたなんて本来目にも入れてはいけない穢れ亡きお方。絶対に粗相しないよう、心しなさい!」

「はい」

 案内役の女子に念を押された。


 完全に上からだ。

 駆馬のクラスメイトなのだが。


 八島薫。

 彼女がリーダーを務めるパーティのテントの前だ。

 周囲は『薫様』に心酔しているらしい女性パーティのものらしい数個のテントが囲み。

 それをさらに追っかけか下僕の男子パーティのテントが囲んでいる。

 二、三十人規模の派閥を形成しているらしい。


 テントの入り口で片膝をついた案内の女生徒が、静かに声をかける。

「薫様、連れてきました」


 その姿は、まるで教団の儀式に仕える巫女のようだった。

『お姫様』と『騎士』では足りない。

 むしろ、『教祖』と『信者』という構図が、空気にぴたりと馴染んでいた。


「入らせなさい。あなたは下がっていてね?」

「ですが!」

「あらあら。主に吠えかかる犬に用はなくてよ?」


 言葉は柔らかいのに、空気が刃のように冷たい。

 案内役の女生徒は、見られてもいないのに地面に額をつけるほど頭を下げた。

 その姿は、服従の儀式そのものだった。


 テントの前に座り込んだ彼女は、細剣の柄を撫でている。

 その仕草は、沈黙の警告。

 薫様が悲鳴を上げれば、空気が裂けるより早く、心臓を貫くのだろう。


「お邪魔します」

 布をくぐる瞬間、空気が変わった。

 視線が、肌に触れる前に心に触れてくるような感覚。

 逃げられないことは、呼び出された時点でわかっていた。


「っく」

 入った途端、息が止まりかけた。


 薫の装いは、均衡の対極。

 上半身は白い冬服で整えられているのに、その下は、『隠すことで見せる』構成だった。


 薄いハンカチが掛けられている。

 それは、布ではなく境界だった。

 見せないことで、視線を誘導する。

 まるで、祈りを捧げる祭壇の布のように、そこだけが異様に浮かび上がっていた。


 薫は微笑む。

 その微笑みは、反応を試す神の表情。


 誘惑ではない。

 支配の道具としての美しさ。

 主人公の心の揺れを測るための、静かな儀式。


 視線が吸い寄せられる。

 それは、禁忌に触れる前の緊張。

 空気が張り詰まり、沈黙が重くのしかかる。


 カルマは、ただ立ち尽くす。

 息を呑む。

 それは、空気に触れたのではなく、空気に触れられた感覚だった。



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