第56話 最前線攻略者たち② ~静かに崩れる舞台裏~ 前編
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「属性が逆になってるんだってよ」
「メンドクサ!」
「覚えている内容を脳内変換すりゃいいだけだろ」
「それがメンドイってのよ!」
先駆け、本隊、に続いてダンジョンに入った後詰にも、モンスターの属性変化の知らせが届いた。
後詰は全体で38人。
6人パーティが4。
7人パーティが2だ。
先駆けA班からの一斉送信ではなく、本隊の情報管理を介したものだ。
そのため、タイミングはかなり遅れたものとなっている。
しかも、内容は小出しにされていて『属性が逆に変わっているようだ』、止まりだった。
死者が出たことすら、記されていない。
『緊急の情報は口で言え!』。
そう言っていた者もいたというのに、細切れの短文チャットだ。
だから、それはやむを得なかった。
危機感が伝わらなかったことは、仕方のないことだった。
属性の変化には『何者か』の悪意があるのに、その認識は得られず、共有もされなかった。
『何者か』の関与を予感していれば、これから起きる事は避けられただろうに。
「あれ? メンドイ女どこ行った?」
一報から十数分。
『メンドクサ!』とブー垂れていた女子が姿を消していた。
「サボってんだろ?」
「トイレじゃない?」
「あ、それだ」
「一人で垂れ流してんのね。何人かで行くと埋めなきゃだけど、一人ならやりっぱにするんでしょうよ。あのメンドクサがりは」
「ありそう」
パーティメンバー6人のうちの一人が見えなくなったというのに、後詰C班の者たちの反応は軽いものだった。
事実を言えば、彼等の推測も間違ってはいない。
角を一つ曲がれば袋小路。
そんな横道に走り込んで、用を足そうとしていたところまでは合っていた。
ただ、そこでさらわれていることまでは予想出来ていなかった。
袋小路で装備を外し、用を足そうとしたところを『メガネウロ』に背中を掴まれて運び出されていたのだ。
抵抗しようとはしていた。
ただ、首筋をあの大きな顎で噛まれては、声も上げられず成す術がなかった。
いや、一つ。
できたこともある。
彼女は、用を足すことができた。
だが、それは自分の意思ではなかった。
背中を掴まれた瞬間、恐怖と衝撃で、身体が勝手に反応したのだ。
下着を下ろしたまま、宙に浮かされ、足をばたつかせることもできず、ただ、温かい液体が太ももを伝って滴るのを感じていた。
その屈辱は、叫ぶことすら許されないまま、喉の奥で凍りついた。
後詰は主力の後方で、安全を確保することが役目だ。
基本的に彼等の後ろにモンスターはいない。
先駆けと本隊が進み、さらに後詰の6パーティが駆逐した後だからだ。
モンスターのリポップは8時間から24時間。
モンスターの復活は帰りのときまでない。
最後尾の後詰C班の後ろは完全な安全地帯となる。
上の階層から降りてくるモンスターがいなければ。
63階層の戦闘は元サブマスターが片付けた。
そのため、ラスト戦力として待機または移動中だった50階層から62階層までのモンスターは温存された形とになった。
しかも、元サブマスの撃破で、『ダンジョンレベル』が60となり、そのモンスターの再配置が可能ともなっている。
64階層のどこにでも配置できるのだ。
監視ドローンこと通常サイズのトンボモンスターで『探索者』を尾行。
隙を見せたところにモンスターを送り込むことなど雑作もない。
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