第54話 妖怪制作② ~テケテケ~ 前編
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新たに出て来る『素材』の回収を冷静沈着な『雪女』しらゆきにお願いして、現状の素材再生をカルマは進めていく。
この階層にはレイドに出た『探索者』の半数以上が『ある』。
どんどん進めていける。
「次は『テケテケ』を作ります!」
みどりとしらゆきを左右に従えて宣言した。
なにせ「そのために用意しました!」と言わんばかりの素材があるんですもの。
作らないわけにいかないじゃないか!
なんのことか?
しらゆきちゃんが人間だったときの彼氏を略奪した女のことだ。
騙されていただけかもしれないが、いまとなってはどちらだろうが関係ない。
ウエストのくびれた部分で輪切りにされていた子である。
傷口をすぐに凍らされたことで即死せず、ヒーラーを探して這いずった根性女子だ。
この執念。
実に妖怪向きの逸材である。
「足すモノとかないしな。すぐ作れる」
胴体の半ばから下がない以外は『人間』だからな。
創作の漫画だとハサミを持っていたりカマを持っていたりするけど。
手で這うのにハサミを持ったら動きにくいだろう。
「まぁ、モンスターとしては攻撃手段がないってのは問題だけど」
腕で這いずって、見たモノを恐怖させて追い掛け回すのがテケテケなのだ。
だが、そこは『スキル』とかで何とかなるだろう。
正直作ってみたいだけだったりするし。
「生前の意識を確認してみよう」
ポチッとな。
『システム』内のデータを呼び起こす。
死ぬ寸前の記憶だ。
ウィンドウが起動して、映像が浮かび上がる。
『痛い、痛い!』
魂なのだろうか?
へその上あたりからぶつ切りされた女の子が、宙に浮いた状態で訴えてくる。
よく見ると左手も手首から先が無くなっていた。
腹部と左手の傷口を氷なのかエクトプラズマなのか、青いものがモワモワと覆っている。
『助けて、助けて、タスケテ、タスケテ、テケ、テケ』
テケテケの名前の由来だとされる言葉が紡がれた。
「そうだね。助けてあげるよ」
体を回収、データ化したのちに『妖怪』属性のモンスターとして再構築。
それだけで、『テケテケ』は完成した。
◆園山裕子視点(テケテケの前)◆
もう、足の痛みはない。
もう、叫ばなくていい。
血まみれの手も、泡のような下半身も、誰かに見られても、もう恥ずかしくない。
だって、もう人間じゃないから。
彼女は知っていた。
この姿になったのは、怒りのせいだって。
嫉妬のせいだって。
友梨ちゃんの、あの冷たい視線。
彼を奪った罰。
ヒーラーを探して這っているさなか、体が凍った。
氷は傷口を塞ぐと同時に地面に固着させる。
動けない。
首だけで、氷の魔法が飛んできた方向を見た。
友梨がいた。オニヤンマに咥えられて宙に浮いた姿で。
本来なら、オニヤンマに向けるだろう手をこちらへ向けて伸ばしている。
自分を救えるかもしれない『最後の魔法』を私にかけた意味。
寒さでなく、震えた。
人間の情念の熱さと冷たさを身と魂に刻み込まれた気がした。
そして、わかる。
『アイツ』に『死』を強制した罪。
それが根幹にあると。
爆発して消えたと思っていたら、『妖怪』を作る能力を得て戻ってくるとか。
そんなこと、誰が予想できる?
生きて帰れなかったのは、その報い。
変な風に復活させられるのは、その代償。
だとしても・・・ここまでされなきゃいけないことだった?
死を強制する筋書きを描いたのは学校の教師たちだ。
そう聞いている。
少なくとも、『私』ではない。
なのに・・・。
でも、それでも。
今は静かだ。
自分の鼓動も呼吸音さえ聞こえない。
この静けさは、彼女にとって救いだった。
誰も追いかけてこない廊下。
誰も叫ばない夜。
泡の中に溶けていく痛み。
彼女は、そっと目を閉じた。
そして、微笑んだ。
死の恐怖から解放され。
痛みからも解放された。
とても安らかだ。
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