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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第40話 63階層の戦い 決着編 ~最後の一撃~ 後編

3/7



 『ナニヨウカ』


 呼べますって答えが聞こえた直後、目の前に『ソレ』は現れた。

 ほぼノータイムだ。


 見た目は・・・キアゲハ。

 黒いところがほとんどなく黄色が多い。

 大きさは翅もいれると縦100の横80くらいありそうだけど。

 

 「はや?!」

 『テンイマホウツカエル』

 甲高い声が頭に響く。


 『システム』と同様、頭に直接語り掛けるタイプだ。

 チョウだから仕方がないのかもしれない。

 発声器官がないわけだからな。

 

 「転移魔法か。それは便利そうだ」

 『ソウダトモ! アラタナ『マスター』ハマホウニリカイガアルヨウダ』

 心なしか、得意気な雰囲気が感じられた。

 魔法にこだわりがあるようだ。


 「先代のダンマスは理解がなかったわけだ」

 『アア。マッタクナカッタ。アノ、ノーキンメ!』

 ノーキンって・・・脳筋のことか。

 価値観が真逆だったわけだ。


 「だから、職務放棄していたのか?」

 『ホウキハシテイナイ。チョットハナノミツヲスイニイッテイタダケ』

 うん。ウソですね。わかります。


 『ダイイチ、ノーキンカラハ63カイソウニイロトイワレタダケダ。ソレデイテアノトオリノクウハクチ。ベツニイルイミモアルマイ?』

 63階層のボスに指定しておいて、その63階層は手付かずで放置。

 それは、こういう反応にもなるかぁ。


 「そうか。なら、今は仕事できるか?」

 『シゴト?』

 「あの連中を倒すんだ」

 63階層の生き残りを指し示す。

 もう、立っているのは20人いないくらいまで減っていた。

 代わりに、カルマ側の戦力は壊滅している。


 『カンタンヨ』

キアゲハは、転移魔法で即座に戦場へと現れた。

鮮やかな黄色の翅を広げ、空を覆うような眷属を率いて戦場へ。


迎え撃つ人間たちは、火属性の魔法弾幕を展開。

だが──

 

「リフレクションか」

 


 ここまで『蝶』のモンスターを見かけなかったのと同様。

『魔職』のモンスターもいなかった。

魔法を使わないという思い込みがあったからこその全力の魔法攻撃。

これを全部返されたわけで、無防備に受けている。


 もちろん、全滅だ。

 爆炎の中、命の輪郭が静かに消えていった。


『フフフ。コレガマホウノチカラ』

キアゲハの恍惚とした自己満足の呟きが聞こえた。



 爆炎の中、涼香だけが立ち上がる。

 ゆらゆら揺れてはいるが、筋肉にはいまだ熱がある。

 でも、心はもう、行き場を失っていた。


 「まだ、終われるかよ!」

 その声は、かつて誰かに守られた記憶を、もう一度、守り返したかっただけだった。

それだけの、張りのない叫び。

 目的を失った棒立ち状態。


そこへ影が差す。

すぐに、空を飛ぶモンスター『メガネウロ』に回収されていった。


      ◇


 「ようやくか。意外に負荷がかかったな」

 戦力を使い切ってしまった。


 しかも昼時だ。

 主力が64階層を踏破するのにかけた時間は10時間。

 二度目ということで早まると仮定すると最短で8時間でここに来る。

 

出発してから五時間が経過した。

 あと3時間でお迎えの準備を整えなくてはならない。


 「急ごう」

 勝ったはずの心に、少し冷たい風が吹いている。

 そのことを、カルマは『焦り』で誤魔化した。


勝ったはずの心に、少し冷たい風が吹いている。

それは、誰にも見られなかった『教室の勝利』と、何も変わらなかった。

分かち合う『誰か』がいるわけではなかったから。


勝利の報告を聞く者はいない。

賞賛も、歓声もない。


ただ、次の戦いの準備をするだけ。


それが、カルマの『勝利』だった。



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