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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第24話 往路から末路へ ◇とある四人パーティの話◇ ① 前編

2/7

 


 (回想シーン)


 それは、深層へと向かう往路でのこと。

 カルマは、低レベルパーティと行動を共にしていた。


 そもそも戦闘力がほぼないカルマだ。

 前線に出ることは最終決戦でもないとありえない。

 今はモンスターを駆逐し終わった後の通路で、採取物を根こそぎ集める作業に従事させられている。


「あははは、いいカッコウね!」


 パーティの紅一点。

 プリーストの女が、喉の奥からくすぐるような笑い声を漏らす。


「……」


 カルマは、声もなかった。

 声を出すことすら、許されていないような空気。


 落としたイアリングを探してと言われ、四つん這いで這い回っていた。

 その背中に、無言で荷物が積まれた。

 一つ、また一つ。

 まるで、黙っていればいくらでも積めるとでも言うように。


 重さで潰れそうになりながらも、腕に力を込めて持ち直す。

 その瞬間、首元に何かが巻かれた。

 キュッ、と音を立てて締まる感触。


「汚らしい使い魔みたいね」


 プリーストの女子A——アイコが、わざとらしく鼻をつまみながら笑う。

 その笑いは、楽しんでいる者のそれだった。


 最近、魔職の女子たちの間で流行っている『遊び』。

 不本意な接触を強いられた腹いせに、カルマを『おもちゃ』にすることでバランスを取っている。


「こんなのに『馬』をつけるなんて、センスのない母親ね!」


 母親まで侮辱の対象にされる。

 だが、カルマの心は動かない。

 痛みを感じるには、『心』が必要だ。


「あ、でもあれかしら? 『駄馬』って書こうとして間違えて『駆馬』になったとか?」


「ありそう!」手を叩いて笑う。

 その手のひらが、まるで鞭のように響いた。


「駆け出しそうにもありませんね。這うのがやっとだ」


 男子A——アオキが調子を合わせる。

 笑い声が、通路に反響する。


 リードを引かれ、グルグルと歩かされる。

 荷物の重さに腕が震え、膝が崩れそうになる。

 だが、崩れ落ちる前に──


「【ヒール】」


 アイコの魔法が飛ぶ。

 絶妙なタイミング。

 苦しみは消えるが、屈辱は残る。


「大丈夫かな? 頑張ってね。心から応援してるよ」


 男子B——イケダが、わざとらしい声で囁く。

 その声は、優しさの仮面をかぶった刃だった。


「はぁ~、面倒くさいなぁ」


 アイコが、わざとらしくため息をつく。

 そして、杖を軽く振る。


「【サンダーボルト】」


 バチッ!

 軽い雷撃が、カルマの足元を走る。

 荷物には影響がないよう、完璧に調整されていた。


「燃えないなら、フレア系も試したいんだけどなぁ」


 魔法の練習。

 的は、カルマ。


 魔法が撃ち込まれ、ダメージが蓄積される。

 そして回復。

 その繰り返しが、彼を『資源』に変えていく。


 痛みは、もう感じない。

 けれど、誰かの笑い声だけが、耳にこびりついて離れなかった。


「じゃあ、補充お願いね」


 アイコが手を差し出す。

 魔力が流れ出す。

 カルマの中から、彼女の体へ。


 空になっていく。

 でも、完全には空にならない。


 どこかに、まだ何かがいた。

 声にならない声が、胸の奥で泡のように弾けていた。


 それは、怒りでも悲しみでもなかった。

 ただ、『自分』がまだいると伝える声だった。


 それは、数日前のことだった。

 迷宮がまだ、カルマのものではなかった頃。

 カルマが、ただ『使われるだけの存在』だった頃。


 今、カルマは誰かの痛みを数えている。

 でも、かつては自分の痛みすら、誰にも数えてもらえなかった。


「汚らしい使い魔みたいね」「駆け出しそうにもありませんね。這うのがやっとだ」


 その言葉は、もう耳に残っていない。

 でも、笑い声だけは、まだ消えない。


 それが、カルマの始まりだった。

『声なき者』としての、最初の記録。



評価いただけると続編を書く意欲に直結します


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