第20話 末路③ ~出会ってしまう~
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◇双子、一度やってみたかった◇
「たくっ、どこまで行ったんだ?」
「いないねぇ」
剣士を探して、奥へと入っていく双子。
太い通路に出た。
直後。
「へぶ!」
「ぶへ!」
二人の姿も消えた。
「ひっ!」
「ウソっ!」
後ろをついていっていた回復役と魔法使いが、足を止めて壁に縋りついた。
そこにあったのは焦げ茶色の大きな『球』。
後ろ足で支えている体長2メートルの虫もいた。
それも番い——カップルだ。
迷宮名物『転がる巨石』の虫バージョン。
探索者が『成して埋め棄てたモノ』——フンを固め集めたモノを転がしてフンコロガシさん(58階層ボス)が登場したのだった。
「や、やだ」
「くっさ!」
二人ともが顔を背け、ついで全力ダッシュで逃げに入った。
無駄なことだ。
フンコロガシさんは、脇道に逸れてまで二人を追おうとはしない。
大事な、大事な『糞球』を運ばなくてはならないのだから。
ちょっと、余計なものがくっついちゃったけどね。
双子を轢き倒してしまったのだ。
二人を大切な『糞球』に埋め込ませてしまった。
ゴロリ。
フンコロガシさんが、ゆっくりと動く。
半回転させて、下になっていた二人が外に出るようにした。
「ご、ゴベェェェェ!」
「ゲホ。ゲロロロロロ!」
二人は、転がる球に巻き込まれ、泥のような塊にまみれた。
泥のような塊──。
だが、泥ではなかった。
湿っていて、粘り気があり、鼻を刺すような刺激臭。
それは、探索者たちが残していった『成果』だった。
息もできず、視界も奪われ、ただ苦しみの中で呻いた。
それが何であるかを考える余裕すらなかった。
ただ、臭いと、生理的に吐き気を催す『味』だけが残る。
ゴロ!
糞球が再び転がる。
べちゃ!
二人のせいで湿った土に顔が押し付けられる。
吐き出した糞が、再び顔に当たりくっついたようだ。
転がる球が再び動き、双子の顔が泥のような塊に押し付けられた。
何が付着しているかを考え、楽しむことは、さすがの双子にもできない。
付着したモノのおかげで『異物感』が薄らいだのだろう。
気を取り直したように糞球を転がして、フンコロガシさんはダンジョンの奥へと消えていった。
後日。
二人は発見される。
球の中に埋もれ、頭だけを出した姿で。
かつては、男子の寝袋に潜り込むのが得意だった双子。
今は、迷宮の『寝床』に潜り込まされていた。
◇遠のく意識◇
「ひっ、ひぃっ・・・」
わき目も振らず走った回復役。
気が付くと一人で、細い通路を歩いていた。
グサ!
「カハッ!」
細い体が、宙に浮いた。
右肩から何か、突起が突き出ている。
針だ。
少し湾曲した針。
先端から、とろりとした液体が滴っている。
そのはりが、肩を貫通していた。
ガン!
突起の生えた体が、持ち上げられて天井に激突した。
脳天が見事に天井に当たり、衝撃で星が飛んでいる。
「な、に?」
無意識にだろう。
自分に『ヒール』を使いながら振り返った。
「そ、んな・・・」
絶望の呟きが漏れる。
振り返った先にいたのは紅い甲殻類。
しかも大きさが2メートル越えの、サソリだった。
「ぐッ、ぎぃぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
ここで、ようやく毒が回ったらしい。
全身を電流が走るような感覚にのたうった。
幸運と言っていいのだろうか?
のたうったことが功を奏して、毒針から抜け出せた。
地面に落ちて、這おうとしている。
「ふ、ふぐっ・・・」
毒に犯されながらも、何とか動こうと必死だ。
でも、そうはいかない。
今度はしびれが来たらしく、その場で動けなくなった。
「や、やぁだぁ!」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を歪めて、いやいやと首を振る。
その足元にはナメクジがいた。
15センチくらいのが無数にだ。
ふと見れば、体長が3メートルにはなりそうな大ナメクジがいて、背中から続々と小さなナメクジが下りて向かってきている。
ナメクジたちは、足元から這い上がってきた。
ぬるり、ぬるり。
冷たく、湿った感触が、肌を這う。
「ひっ・・・ひんっ・・・や、やだ・・・・・・っ」
毒のせいで、現実がぼやける。
触れられているのに、感覚が曖昧で、どこを這われているのかもわからない。
ただ、何かが確かに『自分の中』に入り込んでくるような錯覚。
それが、恐怖なのか、嫌悪なのか、もう判断もつかない。
「や・・・やめて・・・・・・やめてぇ・・・・・・」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を、ナメクジが這う。
ぬめりが唇に触れ、思わず息を呑む。
その瞬間、自分の体が、自分のものではなくなったような感覚に襲われた。
『動けない。声も出ない。でも、何かが、確かに自分の中で動いている──。』
そのまま、彼女は静かに意識を手放した。
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