最初の朝
その朝、というのも、正確に言ったら2002年9月15日のことだが、小学5年生の森島幸信は小学校の三階にある音楽室の一つの机の前に立っていた。
吹奏楽部でも無い彼が朝早くからこの場所にいる理由は好きな子が部活で使用しているトランペットが目的以外無い。
音楽室は朝練の生徒の為に午前7時30分から鍵が開けられている。また8時頃に部員が集まるのを彼は知っていた。この学校は授業が始まる9時までの1時間各部活は練習していた。
机と椅子しか無い殺風景な、時間が止まっているかと思う程静かなこの音楽室に、あの子が置いて行った机の上に置いてあるトランペットと彼だけの間に今確かに時間が流れていた。
森島幸信はこのトランペットの持ち主、1学年上の6年生、槌田真綾に好意を持っていた。
彼はかれこれ五分近く机の前に立っている。目的はただ一つ。トランペットの吹き口に自身のくちびるを当てること・・・
欲望と罪悪感から来る葛藤に心は揺れていた。
「もう40分になる・・早くしないと。早い奴はそろそろ来るかもしれない。」
その瞬間手に取ったトランペットを自身のくちびるに当てた。微かにマウスピースから決して良いとは言えない匂いが逆に彼を興奮させた。
その瞬間まだ静かな朝の廊下から微かに喋り声が聞こえた気がした。
慌てた彼は一瞬トランペットを落としてしまった。
ガッシャーンと大きな音が静かな音楽室に響いた。見た感じは特に壊れては無いようだ。慌てて拾ってケースに戻した彼は間接的な口付けの余韻も冷めやらぬ内に音楽室を慌てて後にした。




