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第0話:御伽噺
むかしむかし、この世界は暗黒の爪痕に覆われ、魔物たちによって支配されていました。
かつて豊かだった人間の住処は日ごとに削り取られ、人々は崩れかけた壁の影に身を潜め、怯えながら今日を生き延びることしかできませんでした。絶望が空を覆い、明日を願う声すら魔物の咆哮にかき消されていた、そんな時代の話。
──たたずむ絶望の淵に、一人の青年が降り立ちました。
青年の掲げた一振りの剣が閃いた瞬間、天地を揺るがす衝撃が走る。刃が描いた光の軌跡は、立ちはだかる凶悪な魔物たちを一瞬で塵へと変え、はるか上空の暗雲、果ては天そのものをも真一文字に叩き斬りました。
青年の奇跡はそれだけに留まりません。彼が傷ついた世界へそっと手を振りかざすと、あたたかな温もりが街を包み込みます。倒壊した建物は瞬く間に元の姿を取り戻し、横たわっていた傷ついた者たちの苦しみは綺麗に消え去っていきました。
全身から眩いばかりの光を放ち、何もない空すらも地面と同じように静かに歩んでいくその姿。
暗闇の中で死を待つだけだった人々は、涙を流しながら膝をつき、凶悪な魔物の元へ自ら進んでいく、希望の光そのものである青年をこう呼び集めました。
『勇者』──と。




