第20話:台湾防衛の完了と、海を渡る決意(第一部完)
夜明けの台北港。潮風の匂いが、冷たく頬を撫でる。
海鳥の鳴き声が、遠くでかすかにひびいていた。
◆ ◆ ◆
台湾の裏社会に巣食うネズミたちの掃除は終わった。
北京の巨大な資金源も、すべて無に帰した。
国内の防衛線を固めるという、最初の目的は達成された。
◆ ◆ ◆
目の前には、日本へ向かう極秘の密航船が停泊している。
祖国であり、最大の敵地となる場所への切符だ。
「……さて。行くか」
俺が足を踏み出そうとした、そのとき。
「一人で勝手に行かせるとでも思ったの?」
背後から聞こえた凛とした声に、俺は振り返った。
そこには、大きなボストンバッグを提げた小梅が立っていた。
いつもの漆黒のパンツスーツで、氷のような瞳をしている。
「……お前は台湾に残れ。総統の護衛任務があるだろ」
「総統からの直接命令よ。『影の軍師を最後まで監視せよ』って」
彼女は嘘をついている。俺にはわかる。
これは彼女自身の、自立した決意なのだ。
「日本は戦場になる。命の保証はないぞ」
「知ってるわ。でも、私がいないとあんたすぐ倒れるじゃない」
呆れたようにため息をつき、彼女は俺の隣に並び立った。
肩と肩が触れ合い、確かな体温が伝わってくる。
「……勝手にしろ。後悔しても遅いぞ」
俺は薄く笑い、首筋のインプラントに触れた。
『さあ、次の盤面へ行こうか。歴史の反逆者たち』
脳内で、イーロンの楽しげな声がひびいた。
海を渡る決意とともに、俺たちは冷たい甲板へと歩き出す。
過去の光を救うため、現在の戦友と共に泥を歩む旅。
最愛の彼女の破滅まで、あと982日。
【読者のみなさまへ】
一度1部で完結とします。
記述投稿の結果かなりの改善点がわかりました。
マンネリ展開やテンポのブラッシュアップ行います。
ここまで読んでくださった皆様本当にありがとうございます。
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