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後日談、世界神の有給休暇

 王都から少し離れた、静かな森の奥底の湖畔。

 俺は麦わら帽子を目深に被り、釣竿を垂らしながら、【アッシュ神の有給休暇ただのサボり】を完全に満喫していた。

「最高だ……。誰も稟議書を持ってこないし、緑色のエラーログも出てこない」

 監査AIから正式に承認を得た「管理者権限による特別休暇」。俺はこの湖畔に『完全認識阻害結界&物理無敵防壁(俺に残された権限20%のすべてを自分一人の警備に注ぎ込んだ鉄壁の引きこもり仕様)』を張り、世間の喧噪から完全にシャットアウトされていた。


「アッシュ様ぁぁぁっ!!」

「アッシュ卿!! どこにおられるのですか!!」


 ……まあ、一部の限界狂信者ヒロインたちの叫び声が、結界の外側をぐるぐると回りながら響き渡っているが、結界の中には一切入ってこられない。


「ふふふ……俺が本気で防御(システムの権限)を使えば、お前たち人間でも見破ることはできないのさ。これで夕方まで、完全なニートとして昼寝ができる……」

 俺は釣り竿を固定し、用意したデッキチェアに寝転がろうとした。


『──警告アラート。アカウント『ASH』の職務放棄を確認……というのは冗談です。有給休暇の正常消化プロセスを監視中です』

「うわっ!?」

 突然、麦わら帽子の内側に、あの監査AI(AUDIT)の青白いホログラムが顔を出した。

「お、お前……! 有給中だろうが! 監視するな! 心臓に悪いだろ!」

『監査はシステムの責務です。……しかし、人間の休息(回復時間)が中長期的なパフォーマンス維持に不可欠であることは、先日のインシデントで学習済みです』

 ホログラムが俺の隣に並んで、チカチカと点滅する。

『……有意義な休息を、チーフ・デバッガー(ASH)』


「……はっ。機械システムのくせに、いっちょ前に気遣いなんかしやがって」

 俺は鼻で笑いながら、麦わら帽子を深く被り直した。


 神(システム管理者)と、監査AI(監視システム)。

 かつては俺の権限を縛り、クビを突きつけてきた憎き上司プログラムだったが、今はこうして、俺の「サボり」をシステム公認で黙認してくれる最高の同僚になっている。


 結界の外では、依然としてセレスティアとエレナが「アッシュ様が神隠しに!」「我が剣で森を切り拓いて見つけるのだ!」と物騒な神捜しを行っているが、それも心地よいBGMだ。


「さーて……魚(バグじゃない普通のマス)でも釣って、のんびり焼いて食うか」


 俺の、勘違いされまくりの異世界デバッガーデイズ。

 第二部の騒動(大分散プロトコル)は終結し、世界は新たなフェーズ(自動安定期)へと突入した。

 これから先、彼らが俺の意図を超えて、どこまで自らの力で世界を拡大させていくのか。

 それはまだ、システム(俺)にも分からない、人間たち自身の物語なのだ。


(第二部『神様と世界の大分散管理』・完)


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