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第一拠点再起動、個人権限さらに低下

【System:第一拠点のサブシステム再起動完了】

【分散管理プロトコル 25% 達成。対象エリアの環境魔素(バグ発生率)が劇的に安定しました】

 石柱サーバーから放たれた青緑色の光の波が、南大陸全土を駆け巡った。

 それまで無限に凶暴化して襲いかかってきていた巨大な食虫植物や魔獣たちの動きが、ピタリと止まり、本来の「自然の生態系(エラーなしの状態)」へと急速に落ち着いていく。

 そして。


「……うおっ!?」

 俺の身体が、一瞬ガクンと重くなった。

 視界のUI画面に、赤い文字で警告がポップアップする。


【System:ユーザー『ASH』の保有権限が削られました】

【王都直接管理権限[ 残り 55% ]】

【個人実行コマンド『Delete』の遅延時間が[ 5秒 ]→[ 10秒 ]へ悪化しました。さらに広域指定の容量上限が半減します】


 俺は膝をつきそうになりながら、冷や汗を拭った。

 そうか……。俺がこれまでに持っていた「神のパワー(世界システムへの介入・削除能力)」の一部が、完全にこの南大陸のシステムに切り離されてしまったのだ。

 つまり、俺のチート主人公としての絶対無敵性能(ただの強制終了ボタンだが)が、明確に『ダウングレード(弱体化)』されたのである。


「アッシュ様!?」

「アッシュ卿! いかがなされた、玉体の放つオーラ(神威)が突如として薄れたように……!」

 無双の暴走植物刈りを終えたヒロイン二人が、血相を変えて俺に駆け寄ってくる。

 ヤバい。俺が「魔法を使えないただの人間ポンコツ」になったのがバレたら、この狂信者たちにどう見限られるか分からない!

 俺は必死に虚勢を張り、ゆっくりと立ち上がった。


「案ずるな、セレスティア、エレナ。……ふう、これも予定通りだ」

 俺はあえて神秘的な微笑を浮かべてみせた。

「俺は今、俺自身の中に蓄えていた『神の力』の一部を、この南大陸の空と大地(環境システム)へと完全に解き放ち、分け与えたのだ」

「なっ……!?」

 二人は息を呑んだ。


「今まで俺一人で管理していたから無理がいった。だから、この地の大自然にシステムの根幹を託した。……俺自身の力は少し減ってしまうが、その代わり、この南大陸はもう『俺が常に守ってやらなくても』自然の循環で平和を維持できるようになる」


 俺の渾身の「言い訳(弱体化の正当化)」が響き渡った直後。


「おおおおおおっ……!!」

 二人揃って、信じられないほどの涙を滝のように流してその場に崩れ落ちた。

「神が……真なる神が、自らの身(神力)を削ってまで、我らの足元の大地を潤し、救済を施してくださった!!」

「アッシュ様ぁぁっ! あなたというお方は、どこまで慈悲深くあらせられるのか! 自らの全能を捨ててまで、星の未来をお選びになったのですね!!」


 ……またしても、俺のポンコツ化(権限縮小)が、自己犠牲精神溢れる「究極の神の愛」としてMAXに勘違いされてしまった。


「我らは誓う! 神が世界へ力を分け与え、もし万が一自らお戦いになる力を失われたとしても。このセレスティアの魔剣が、永遠に神の御盾となりましょう!」

「ええ! 私の魔法は、力を削られたアッシュ様の代わりに、神の威光を世界に轟かすための代行者スピーカーとして振るってまいりますわ!」

 彼女たちの瞳の中で燃え盛る「神を護る」という決意と魔力が、かつてないほどに高まっていく。

 俺の権限が分散・定着することで、世界中の魔素バランスが安定し、結果として(現地ユーザーである)彼女たちの魔力出力が「より最適化されて強くなる」というバフ効果も生み出しているようだった。


「よし……第一拠点は完了だ」

 俺は内心で安堵の息を吐いた。

 世界システムが正常化し、人間たちの能力(魔法)が安定して強くなれば。やがて俺という「全能の管理者デバッガー」がいなくても、人間だけでバグやエラー(魔獣)を処理できる世界になるだろう。

 それこそが、監査AIの言う【大分散管理】の最終目標であり、俺の永遠の平穏アーリーリタイアへの最短ルートなのだ。


「次に行くぞ! 西の砂漠と、東の海島だ!!」

「ははっ!! 神の世界巡礼、第二の幕開けにございます!!」

 神輿要塞は再び空へ舞い上がり、次の出張(権限削り)拠点へと針路を向けたのだった。


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