表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/82

四鍵回収成功、なのに部署ごと再編

【System:第四の管理鍵(学園マスターキー)の所有権を確認】

【すべての物理承認キー・プロセスが満了しました】

 第四のマスターキーを俺が握りしめた瞬間だった。

 部屋全体を満たしていた警報の赤い光と、【残り5秒】で発動しようとしていた絶対空間焼却パージのエラーログが、シュンッと一瞬にして消滅した。

 静寂が、無人のサーバー群に訪れた。


『……アカウント『ASH』。四拠点すべての物理アクセスログを確認。プロトコルに従い、強制停止(BAN)へ向けた監査猶予期間はいったんリセットされ、管理者暫定IDの維持が承認されました』

 AUDIT(監査AI)のアバターが、無機質にそう告げた。

「……終わった……」

 俺は膝から崩れ落ちて、冷たい金属の床に座り込んだ。

 長かった。死ぬかと思った。この一ヶ月弱、雪山で凍りかけ、大渦で船ごと沈みかけ、勘違いした狂信者たちと反神派のドタバタに巻き込まれ続け……ようやく、クビを回避したのだ。俺はこれで、晴れて(百発百中のオートDeleteが使える)全能のポンコツ神に戻れる。


「アッシュ様!!」

「おお……終わったのですね、世界を救う試練が!」

 エレナとセレスティアが俺に駆け寄り、俺の体を抱き起こしながら歓喜の涙を流している。

 だが、安堵の余韻に浸る俺たちの前に、まだAUDITのホログラムは消えずに青白く光を放っていた。


『しかし。あなたの先ほどの主張……「単一拠点での一括管理は過負荷による破綻をもたらす」という論理は、システム保全の観点から極めて合理的かつ有効であると、当プロセスは判断を更新しました』

「は?」

 嫌な予感がした。俺の顔が引きつる。


『現在、あなたが権限を行使している【単一王都での中央集権的コマンド体制】は、今後再びエラーの蓄積によるブラックアウト(大規模障害)を引き起こす可能性が 99.8% と算出されます』

「……おい、待て。お前、何を言おうとしてるんだ」


『結論。』

 AUDITのアバターは、冷酷な機械の声で、俺のささやかな平穏の願いを打ち砕いた。


『これより、アカウント『ASH』の特権をさらに一段階移行させます。単一管理者を廃止し、システム負荷を世界全体へと割り振る……【分散管理ディストリビュートプロトコル】のテスト導入を開始します。あなたはこれより『唯一神』ではなく、分散されたノードを束ねる『主席管理官チーフ・デバッガー』へとクラスチェンジされます』


「はああああああっ!?」

 俺の悲鳴が地下空洞に空しく響いた。


【System:これより、管理権限全体の再設計(大工事)を開始します】

【ユーザー『ASH』は、世界中の主要都市サブノードへと権限を均等に委譲インストールする大規模作業に従事してください】


「終わってねえ!! 試練、全然終わってねえ!! リストラは免れたけど、部署ごと丸ごと解体されて、全国の支社にシステム設定の手下請けに行く羽目になってるじゃねえか!!」

 俺のブラック公務員生活が、さらに悪化した瞬間だった。


「おおおおっ!!」

 だが、傍らで聞いていた(システム用語を全く理解していない)ゼノン査察官やヒロインたちは違った。

「神が……唯一神としての座を、我人類と共に世界中へと分かち合うというのか……!」

「中央集権の玉座を自ら捨て、新しき世界(分散型)の創世主となる……! アッシュ教の聖典が、ここに歴史の次なるフェーズを開いたのだ!!」

「よぉし! 神! 次はどの国へ向かいましょうか! 我が剣が全てを切り裂きます!!」


 神の退位ではなく、新しい神話の幕開け。

 俺の切実な絶望は熱狂の歓声の中へとかき消され……世界を舞台にした地獄の『権限・大分散作業(デバッグ第二ラウンド)』が、開幕の時を告げるのだった。


(第二章──四管理鍵争奪戦・完)

 ……そして翌朝、俺の机には「世界巡回計画書」が山のように積まれていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ