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絶対封鎖区画突破、遅延Delete連打

 学園地下深くへの階段を下りた先──『絶対封鎖区画』の入り口は、分厚い魔力の結界と、何重にも組まれた木箱や机のバリケードで完全に塞がれていた。

「見ろ! 偽神アッシュへの絶対の忠誠を誓う我らの防衛線だ! 反神派の犬どもを通すな!」

 バリケードの奥で、頭に妙なお札(アッシュ万年の文字入り)を巻いた上級生たちが、杖を構えて悲壮な決意で叫んでいる。

 俺は頭が痛くなった。なんで俺が「俺の狂信者たち」の立て籠城を崩さなきゃいけないのか。


「アッシュ様、お下がりください。あの程度の貧弱な結界、私が指を鳴らすだけで粉みじんに──」

「エレナ、誰も傷つけるなって言ったばかりだろうが」

 俺は殺る気満々のエレナを押しとどめ、バリケードの正面に立った。

「おい、俺だ。アッシュだ。お前ら、鍵をどうする気だ?」


「アッ!? ア、アッシュ教祖様!!(いつの間にか役職名が変わっている)」

 俺の姿を見た生徒たちが、ざわめきながらも警戒を解かずに杖を向けてくる。

「教祖様が直々にお越しになるとは……! ですが、開けるわけにはいきません! この奥の『聖なる鍵』は、我々が清浄なる形でお持ち帰りし、アッシュ教祖様の玉座(神殿)へとお供えするのです! どうか我々の、神への奉仕を完遂させてくださいませ!」

 生徒のリーダー格(真面目そうな優等生)が、涙ながらに狂った主張を叫んだ。


 どうやら彼らは、「アッシュは神だが、この世は穢れに満ちている。だから神のアイテムは自分たち(選ばれし熱心な信徒)が回収して安全に管理する」という、面倒くさい排他原理主義に陥っているらしい。

 しかも、俺の視界のUIシステムは容赦なく警告を鳴らし続けている。

【System:Warning。対象エリア(封鎖区画最深部)にて、未知の旧文明トラップが起動プロセスに入りました】

【カウントダウン:5分で区画全体に高エネルギーのパージ(空間焼却)が実行されます】


 まずい。生徒たちが無理やり最深部の扉をこじ開けようとしたせいで、自爆プログラムみたいなものが動いている。

 5分以内にあそこに辿り着いて、鍵を引き抜いてログアウト(監査権限で強制終了)させないと、この生徒数人が全員消し飛ぶぞ!


「時間がない……。強行突破する! エレナ、セレスティア、俺の指示通りに動け!」

「承知いたしました!!」

 俺の言葉を合図に、生徒たちが「教祖の試練だ!」と狂喜しながら火炎や雷の攻撃魔法を一斉に放ってきた。


「Target:Student_Attacks! Action:Delete(消去)!!」

 俺は視界の【YES】ボタンを猛烈な勢いで連打した。権限ダウングレードの影響で、俺のDeleteには『5秒の遅延』と『7%の失敗率』がある。

 だから、セレスティアと協力するのだ。


「1、2、3……今だセレスティア! 左の炎を弾け!」

「はあああぁッ!」

 俺のDelete遅延の「ラグ」を完璧に計算した俺の指示により、セレスティアが魔剣で一撃を弾いた「直後」、システム遅延で発動したDeleteが残り全ての魔法を無に還す。

 遅延システムを利用した、恐るべき防衛のタイムライン構築(デバッグ連係)である!


「な、なんという無駄のない御業!」

「我らの魔法が、アッシュ様の指先一つで、そして王女殿下の剣閃と完璧に同調して消滅していく……!」

 攻撃を無効化されながら、なぜか生徒たちが感動してポロポロ泣いている。


「そこだエレナ! 攻撃じゃなく『彼らの持っている杖(武器)』と『バリケードの机』だけを、凍結して機能停止させろ!」

「御意!!」

 エレナの広域氷結魔法が、生徒たちを傷つけることなく「彼らの持っていた杖」と「積み上げられた机」だけを完璧に氷の彫像へ変えた。魔力経路を完璧に把握した、芸術的なまでの無傷の無力化だ。


「……ま、負けた……。我々では、神の威光の露払いすらおこがましかった……」

 生徒のリーダーが、氷点下の結界に囲まれてへたりこんだ。

「お前たち、絶対にここから動くなよ。奥は危ない(システムエラーで爆発する)からな!」


 俺はすかさずバリケードを乗り越え、最深部の重厚な鋼鉄の扉(マスターノードの入り口)へと、ヒロイン二人を引き連れて飛び込んだ。

 猶予はない。

 俺はついに、『四つ目の鍵』──そしてこの王都を裏で永遠に監視し続けている、監査AI『AUDIT』の中枢へと足を踏み入れるのだった。


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