後
その後のお話です。
みなさまお久しぶりです。
あの日から、2ヶ月が経過しましたが、私の体は推定8〜10歳児のままです。
視界が一気に30センチ近く低くなると、色々と大変だったけど、まぁ、踏み台駆使して乗りきって。
手が小さくなった分、包丁とか若干使いづらかったけど、それも慣れてきたし。
中身は元のままだから要領とかは分かってるし、家事は前より時間かかるくらいで問題なし!
周囲の反応も最初こそイロイロ大変だったけど、どうにか落ち着いてきたし、なんとか、日常に戻ってきた今日この頃………。
まぁ、車運転できないけどね。
愛用の子乗せ自転車も身長足りなくて使用不可のため、子供のお迎えも歩いていくしか無くなって、若干面倒だけどね。
お買い物〜〜って昼間に歩いてたら、警察に補導されかけて、説明がメッチャ大変だったのはご愛嬌。
ココでも、お医者さんの診断書が葵の御紋がわりに大活躍だったよ。まぁ、病院に確認の電話されてたけど。先生、ご面倒おかけしてます!
仕事はやっぱりやめる事になっちゃったけど、まぁ、しょうがない。
自分より大きな人を動かす技術があるって言ったって、やっぱり限度があるしね。
とりあえず、退職手続きして、ハローワークに行きましたよ。貰えるものは、貰わないとね。
後は、身体小さくても事務とかなら出来る事もあるだろうから、もう少し落ち着いたら何か講習でも受けようと画策中。
大人だし!働かざる者食うべからず、ってね。
なんて、今でこそ開き直りの極致って感じで前向きになってきたけど、やっぱり不安で泣けたりもしたよ?
イロイロ嫌な想像が膨らんで、怖くなったし。
前例なんてない症状な分、未来の予測なんかつかないしね。
夜中に眠ってる子供達見てると、いつのまにか涙がポロポロ溢れてきて、どうしようもなかった。
けどね。
やっぱり、泣いてばっかりはいられないのよ。
生活あるし、子供達は小さいし(まぁ、今は自分も小さいんだけどね)。
つくづく、1人じゃなくって良かったなぁ、って思う。
勿論、旦那様の支えも心強かったよ?
というか、しょう君居なかったら、途中で挫けてたとも思うし。
こんな身体になっちゃって、見捨てられたらどうしようって不安になってた時の、しょう君の言葉は嬉しかったなぁ。
恥ずかしいから言えないけど、惚れ直したね!
とりあえず、今では「幼妻は男のロマンでしょ?良かったね?」「幼すぎだろ!」なんて冗談も言いあえるくらい。
子供達も「お母さんはこんなモノ」と馴染んだ様子で、つくづく人間って順応性高いよね。
保育園でも、子供達から慣れて行ったもんね〜。
まだ2歳の悠斗にとっては、母親のサイズ感なんて些細なもんないなんだろうね。
ただ、自分を見て触れて愛してくれる存在がいる事。
小さな子供にとって大切なモノって、本当にささやかで純粋なんだなぁ、って思う。
アァ、でも抱っこが出来なくなったのは不満みたい。
だって、重いんだよ。
自分の約半分の重さの子供を一瞬抱き上げるとかならともかく、長時間は無理!
座って膝に乗せててもすぐに足痺れるし。
その分、他で埋め合わせてます。
スキンシップ、大事!
玲斗は、流石にもうちょっと複雑ではあったみたいだけど。
まぁ、見た目ほぼ同じ年の母親って。
もう少し大きいなら姉妹親子とかネタになったんだろうけど、今の段階じゃ、シャレにもならない。
元々素直な子だから、反発することもなくゆっくり馴染んでったけど。
ちょっと性格がツッコミ属性になったけど、まぁ、些細な問題だよね!
こうやって日々を過ごして、日常になっていくんだね、きっと。
そうやって、思えるようになってきた。
体は小さくなっても、記憶はあるわけで、積み重ねてきた年月が消えてしまったわけではないし。
1番大切なものは、ちゃんとこの手の中に残ってるし、ね。
これからも、大変なことがあるだろうけど、まぁ、どうにかなるでしょ。
1人じゃない。
支えてくれる家族が、いるから。
「おーい、もう出かけるぞ〜」
「ママ〜〜?まだ〜〜?」
「まぁ〜まぁ〜〜!!」
「はぁ〜い、今いきま〜す!!」
○月✖️日、日曜日。晴れ。
本日、高瀬一家は、郊外にあるアウトレットモールに足を伸ばしていた。
お目当は、明菜の服一式、である。
今までは、幸か不幸か長男玲斗とサイズがほぼ同じだったため、外に出る用事の時は、服を借りてごまかしていたのだが、ついに玲斗から苦情が出たのだ。
「まぁ、どうも戻りそうもないし、潮時だよね〜〜」
直ぐに元に戻れた場合、余計な出費になると明菜が渋っていたのだが、前回の外出時に、隣でポテトを食べていた悠斗がケチャップを振り回して、玲斗のお気に入りの服にべっとり、と言う不幸な事故が起こったのだ。
「自分で汚すのもしょっちゅうなくせに……」
「そう言う問題じゃない!」
「そんなに気に入ってるやつなら、貸さなきゃいいじゃん」
「ママが勝手に着てるんでしょ?!」
珍しく烈火のごとく怒った玲斗曰く、自分で着てる時なら諦めもつくけど、人がやるのはムカつく、だそう。
幸い、ケチャップのシミは綺麗になったけれど、玲斗の爆発した不満は収まらなかった、と言うわけだ。
「ちょうど季節の変わり目だし、いいタイミングだろ?ついでにいろいろ買い換えようぜ」
不毛な言い争いを止めた鶴の一声で、週末のお出かけが決まったのだ。
「で、第一目的は明菜の服だって言ってんのに、なんで男の子コーナーに行くかな〜」
呆れたような翔治の声に、無意識に服を漁っていた明菜はハッと我に返った。
「つい?」
テヘッと誤魔化すように小首を傾げる姿は愛らしかったが、ここで誤魔化されたらダメだと、翔治はしかめっ面をしてみせた。
「あっち!」
ピッと女の子服の方を指さされ、肩をすくめた後に明菜は渋々移動した。
「で、結局2人の服も買うんだな」
「だって、安かったし季節的に来年用の買っといていいかな〜って」
大量の紙袋を手にご機嫌な明菜は、試着ついでに着替えていた。
タータンチェックのプリーツスカートとベストのセットはどこぞのおしゃれな制服のようで非常に可愛かった。
「いいんだけど、なんで僕まで着替えてるの?」
しっかりと荷物持ちを手伝いながらも、玲斗が首を傾げていた。
着ているのは明菜と同じ意匠の服で、スカートの代わりに膝丈の半ズボンになっている。
見た目双子な2人が、いかにもなそろいの服を着ている姿は可愛らしく、すれ違う人たちの目を引いていた。
「え?憧れの双子コーデ?お店の人も絶賛してたし、良いじゃん」
「ゆーも!」
「そうだね〜悠斗もチェック、可愛いね〜〜」
足元で「はい!」と元気に手を上げて主張する悠斗は、同じくタータンチェックのオーバーオールだ。
中に着たパーカーには猫耳がついていて、これまたあざと可愛かった。
「子供とお揃いがこんなに楽しいとは思わなかったわ〜〜」
機嫌よく歩く明菜に「なんか違う……」とひっそりと首を傾げながらも、翔志は、賢明にも声に出すことは無かった。
(まぁ、可愛いし良いか)
両手一杯の紙袋を手に、休日のお父さんらしく荷物持ちに徹しながら、はしゃぐ妻と子供達を見つめる瞳は優しく細められていて……。
そこには、確かに幸せな家族の姿があった。
読んでくださり、ありがとうございました。
書き上げてた挙句にヘタれて、日の目を見せてあげれなかったお話でした。ので、現在非常に満足です(笑
と、いうか、「突然母親が子供になった」という設定以外は本当に別物で我ながら笑える。どうしてああなったのでしょう?まぁ、あれはあれで書いてて楽しかったのですが。
コンセプトは普通の家族に突然の非日常が訪れたら、だった気がします。
まぁ、物語なのでパッピーエンドに終わってますが、現実はもっと大変でしょうね。
確実に見せ物になりそう。
私なら、速やかにその場所から引っ越して、老け顔メイクで乗り切るかなぁ。で、極力近所を出歩かず人付き合いを控え、体が育ちきった頃にまた引っ越し。家庭は大変でしょうけど。
リアルに描くなら、こっちパターンかな?
でも、それこそ書いててツマラなさそうですね(汗
バッドエンドは苦手なのです。
作者の(自己)満足にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
優しい皆様にも、パッピーが訪れますように。