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あるいは、堕天使の憂鬱  作者: とんぺり
異世界人?と二つのお願い
22/84

2-1

さて、はじまりま……す?


ヌルゲー

 俺は、どこにでもいるようなごくごく平凡な学生だった。

 高天学園高等部普通科第二学年文系クラス文芸部。

 成績は中の中恋人なし友人はそこそこ家族仲もわるくない。

 とくに学園で問題を起こすということも無くかといって何がしかのイベントで率先して動くことも無く

 学校帰りにゲーセンによってゲームをしたり家に帰ってネトゲをしたり文芸部という名前に隠れて適当なありきたりなありふれているどこにでもあるような黒歴史物語を書いてみたり。

 実際にありえないだろうということを書き連ねるからこそ意味があるだろう?

 いやだってそもそも異世界だなんて本当にあるのかどうなのか。

 学園中ではやっている『ネイヴァーワールド』とかいうゲームは、この世界の隣、わずか一枚薄い壁を越えた先にある世界へ侵入してモンスターを倒すとか言う設定らしいがあくまでもゲーム。

 実際にそこに行ったやつなんて聞いたこともないしそこから来たというやつもいないし、日々携帯をにらみつけて魔法だの召喚獣だのダウンロードしているやつらが実際にそれら(・・・)を使っている姿も見たことがない。自分もプレイしているけれどどこからどう見てもただのゲームだ。

 ただ、都市伝説となるぐらいに、時々誰かが噂しているのを小耳に挟むぐらいに、『向こう側』へいったとかいったまま帰らないやつだとかいるという又聞きの又聞きぐらいには話題になっていたりもするわけで。

 だから少しぐらいは、万に一つは、奇跡的な確立でもしかしてひょっとしたらぐらいに本当のことだったらいいなとは思っていた。

 でもやっぱり物語のヒーローにだなんてなれるわけも無く、のんべんだらりと友達とだべって毎日を惰性で過ごしていくものだと思ってた。

 現実は現実でしかない。


 そう思っていた時期が俺にもありました。

「俺の時代キタアアアアアアアーーーー」


 いつもとかわらない学校帰り。

 何気なく歩いていたら何かに引っ張られるような感じがして、次の瞬間には草原の真っ只中、街道のようなところにいた。

 見渡す先には山、森、川。空には太陽と、月が三つ浮かんでいる。太陽の位置からすると、いまは昼前……なのか? 

 そしてはるか彼方にみえる城壁に囲まれた街! 別の方角には角が四本あるバッファローのような何かが見える気がする。

 道は石でできていて轍が刻まれているところから、それなりに年代がたっていそうだ。向こうの街まで続いているみたいで道に迷う必要もない。

 お決まりの神様だとか召喚の魔方陣だとか転生フラグだとか無かったのは気になるけれど、これはもうアレでしょう、アレしかないでしょう。




「ステータス!」




 …………



 何もおきない。



「コマンド! オープン! リスト! 情報!」



 ……………………


 何も、おきない。


 つまり、ゲームタイプじゃないということか。ならば

「ファイア! フレイム! ウォーター!」

 ひょっとしたら詠唱破棄はできない? そうなら

「万物を凍えさせし氷の精霊よ我が呼び声にしたがってその力を示せエターナルフォースブリザード!」

 ……なんとなく自分が凍りました。

 オツカイノジュモンガチガウヨウデス

 ひょっとしたらネイヴァーワールド?

 とおもって携帯を開いてみた。電波は圏外でも、ネイヴァーワールドは起動したし問題なく遊べるようです。


 そのまま小一時間がすぎて我に返った。


「ちーーーーーがーーーーーーうーーーーー!」

 あわててアプリを終了。次の可能性に挑戦してみる。

 地面を殴りつけてみる。手が痛くなった。

 思いっきり地面を蹴りつけてみた。足がジンとした。

 ジャンプしてみる。むなしくなった。

 走ってみる。疲れた。

 適当な石をにらみつける。何もおこらない。

 思いつく限りのことを思いつくだけやってみた。何の変化も無かった。

「つまりあれですか。異世界知識で無双しろということですか」

 膝を地面につけ、両手で体を支える。自分でも見事だと思うほどのガックシポーズをとってつぶやいてみる。涙が流れそうだった。

「そ、それになにかまだ隠れた才能の開花だとかもあるかもしれないしね!」

 とりあえず向こうに見える街に向かって進むことにした。

 街の近くだったってだけでも幸運だぜ!


 門についてみると、なにやら丈夫そうな服を着た二人の兵士がなにやらメカメカしい銃剣をもってあくびをしていた。

 見るからに亜米利加や仏蘭西、独逸な顔つきに肌をしている。

「えっと、すみません」

「*、****?」

 ……言葉が通じねー。聞いたところ英語ではないのは確か。ニュースで聞くような言語でもない。

 言語チートぐらいはくださいよ。これどれだけハードモードですかそれともクソゲーですか。

「********。************?」

 対応した兵士がもう片方の兵士になにやら話しかけている。

 話しかけられた兵士もなにやら首を横にふっているということは分からないといっているのか?

「*************?」

「えっと、おれは鈴木・敦也といいます。ん? 敦也・鈴木のほうがいいのか?」

「**、**。*************?」

 最初の兵士がなにやら指で四角いものを描きながら確認をしてくるが……

「わかんねー……」

「**、****?」

「**********、***************……」

「***************、*****************。**************」

「*****」

 なにやら二人で話し合った後、二人目の兵士が奥に引っ込んで数分。金属の板をもってきて俺に渡してきた。

「********。*****」

 カードサイズのその板は、よく見てみると文字のようなものが書かれている。

 それを俺の両手で包み込むようにしっかりと握らせて街中にいくように背中を押してくれた。

 つまり、コレは大事なものだからなくすなと。そして中に入っていいということだな。

「さんきゅー」

 伝わるかどうかは別として、お礼の言葉をいう。

 兵士さんの優しさがうれしいぜ。

 そして大通りをとりあえず歩いてみることにした。

 ちょうどまっすぐに行けばお城も見えるし、ひょっとしたらお城で召喚されて、失敗したからあんなところにいたということもありえる。

 魔法があれば言語の問題も解決するだろう。

 独逸っぽい街並み。人々はヨーロッパみたいな服? 皮製のコートみたいなものだとかジャケットだとか着ていたりブーツを着ていたりするけど……

 時々自動車みたいなというか明らかに自動車が走っている姿も見える。蒸気ではなさそうだけど、それっぽい音が響いている。信号はない。

 中には剣とか盾とか装備して店先を覗いている明らかに冒険者! ってひともいたり……あれは猫耳のおねえさんか!?

 そして視界の隅に、妙に片腕が大きかったり長かったり、背中が盛り上がっている人が映る。

「っていうか、え、サイボーグ? ちょ、すげええええええ!!!」

 金属の腕だったり腕が剣になっていたり、背中から金属の羽が出ている人もいた。うわ、あれブーツだと思ったら足かよ!

 周りにいた人達が、俺の上げた叫び声にばらばらと目を向けてきたけれどそんなの関係ねぇ。

 よく見れば、腕になにやら布を巻きつけてる人もいるけどそういう人もむき出しのサイボーグの腕をもっている。

「えーっと、つまりサイボーグの出てくるゲーム……」

 記憶にまったくない。ただ、サイボーグ技術があるなら魔法がない可能性もあるわけで

「体のどっかをサイボーグにしないと無双できない……とか? 痛いのはやだなぁ」

 召喚された以上魔法はあると信じたい。思いたい。

 道路に面した店先にはちゃんと手にもって使うような銃みたいなものや剣みたいなもの、バールのようなものまでいろいろな武器もあるから問題はなさそうだけど。

 道を進んでいくと、なにやらいいにおいがした。

 においをたどってみると、屋台があった。何かを串で焼いているらしい。

 そういや腹が減ったしなにか食いたいところだけど

「******。******?」

 屋台のおじさんが俺に気がついて串焼きを見せつけてくる。買ってくれというのか。買えというのか!

「えっと、これ、使えます……?」

 恐る恐る財布から小銭をだして聞いてみる。

 屋台のおじさんはしばらく小銭をしげしげと見ていたのだけど

「*****」

 手を横に払うそぶりをしながら返してきた。つまり、つかえない。


 デスヨネー


 屋台から離れて大通りを再びお城に向かって進む。

 なんか近づいている気がしない。

 でもそのうち少しだけ町並みが変わった気がした。

 さっきまでは雑多ででたらめでごちゃ混ぜだったものが、少しだけ整頓された感じ。

 たぶん横の路地に入り込んでみればもっと分かるような気がするのだけど

「なんかいやーな予感がするんだよね」

 ともかく今はお城だお城。

 大通りをさらに、だいぶ進むと、いつのまにやら、明らかに周囲の空気が変わっていた。

 明らかに貴族という人が歩いていて、メイドやボーイのような人達が荷物を運んでいる。自動車の数も増えている気がした。そしてなんというか、静かだ。

「浮いてる、よなあ」

 学校の制服に似た服はない。ある意味似ているといえば兵隊さんたちの着ているものだったけれど、色も形も違うといえば違うし。

 なんとなく人目を避けるように早足になっている自分に気がついた。

 だんだんお城の城門が近づいてくる。てか

「城でっけえええ!!」

 城門の向こうに見える庭? みたいなものが広いです。

「*****?」

 そして城門の両側には先ほどと同じように兵士さん。

 さっきの兵士さんたちより立派な服を着ていて厳しい。

「えっと、さっきこれをもらったんですけど」

 そういって先ほどもらった金属カードをわたす。

 金属板を受け取った兵士さんは

「******。***********。****」

 なにやらいってカードを返してきて、そのまま警護のポーズにもどってしまった。

 ……あれ?

「えっと、おれ召喚されてここに着たんですけど」

「……」

 無言でじろりとにらみつけられたあと、しっしと追い払うようにされてしまった。

「え、ちょっとまって? 召喚だよ? 勇者だよ? 異世界人だよ?」

 でも聞いて貰えないどころか、武器に手を掛けてさえいる。にらみつけてくる顔が怖い。

「あ、あははははは……」

 両手を挙げて後ずさりしたあと、たまらず逃げ出した。

 なんだよこれおかしくないか?

 いくら異世界ものだからって、こんなにひどい扱い受けなくてもいいじゃないか。

 召喚はミス。

 言葉は通じない。

 チート能力もない。

 お城にはいる手段もない。

 積んでる。

 走って疲れて息をついて、ふと顔を見上げたら

「……なんだあれ……樹?」

 まるで枯れ木のようなものが遠くに見えた。

 なにやらてっぺんに家のようなものも見える……

「実はあそこにとらわれのお姫様がいるとか?」

 口に出してみたらそんな気がしてきた。物は試しだいってみよう。

 いってみた。

「……むりだろこれ」

『樹』の根元は広場のようになっていて、うえを見上げると首が痛くなる。

 背中から羽を生やしている人達がちらほらと上までのぼっていくけど……

「はしごがねえ。階段もねえ。ロープすらねぇ……」

 そもそも一番下の枝まで何メートルあるのかどうかすらわからねえ。

 よじ登ろうにも幹は太すぎる。足がかりのようなものはあっても命綱がねえ。

 つまり登れねぇ。

「*****。**************、************」

 なんかいろいろとダイナミックなお姉さんが上から声を掛けていった。

 何をいっているかは分からないけど、慰めの言葉ならいらねえぜ。

「さて、どうしたものか」

 もう何時間だろうか、歩きっぱなしでいい加減足が痛い。

 幹の根元にこしかけてちょっと整頓してみる。

 俺の時代来たとはおもっていたけどチート能力はないっぽい。

 召喚主っぽい人がいそうなところにもいけない。

 魔法は使えない。言葉が違うのかイメージがいるのか。

 そして言葉が通じない。お金も使えない。

「うん、やっぱりこれ、つんでね?」

 てかそうだ。お金が使えないってことは

「飯を食うこともできないし宿屋も泊まれない……?」

 武器すら買えないんだ。外でサバイバルしようにもしようがない。というか戦い方なんて知らない。

 うんうん唸っていたら

「**、**、****?」

 見てくれの悪いおっさん達が3人ほど、取り囲んでいた。すでにあたりが暗くなり始めてる。

 うわぁなんかスキンヘッドだよ頭にバッテンあるよどっかでヒャッハーとかやってそうだよ。しかもなんか金属のヘルメットみたいな頭だし。

 話しかけてきたおっさんの後ろにいる二人はなにやらニヤニヤしている。

「***? *********。*********」

 こわい。すごくこわい。めちゃくちゃ怖い。

 そうっと立ち上がって後ずさってみる。

 三人とも距離をつめてきた。

「間に合ってます結構ですまたお会いしましょうごめんなさああああい!」

 思わず逃げ出した。

 なんか逃げてばっかりな気がする。


 どうしてこうなった。


 何か悪いことをした覚えもない。かといって轢かれそうになっている子供を助けたりとかもしていない。

 足元に魔法陣が出たようなこともなかったし穴が開いたわけでもない。

 帰宅途中だったわけでなにやらゲームをしていたわけでもない。

 別世界にいってみたいとはちょっとだけ少しだけ誰もが思うぐらいのレベルで思ってたりもしたけれどだからといってそれがきっかけなのか?そうなのか?

 でも神様ホントにいるなら一声掛けてくれたっていいじゃないか。

 気がつくとあたりはすっかり暗くなっていて、周りは星明りでうっすらと見えるだけ。

 どこだここ。橋みたいなところを渡った気もするけど……

 はらがへった。

 のどもかわいた。

 足が重い。

 つかれた。

 足が何かに躓いて

「あ……」

 頭を何かにぶつけた……


……だとでもおもった?


よくある転生系一人称って、自分にはとっても難しい(確信

兵士の言葉、じつは文字数をあわせてあります。

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