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元おっさん、TS転生して美少女Vtuberになったら百合営業のはずがガチ恋されました〜バレたら炎上確定なのに今日も配信がやめられない〜  作者: カルラ


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第1章:TS転生したら即配信することになった

気がついたとき、世界はやけに明るかった。

 というより、白い。


 いや、眩しい。


 俺は思わず目を細める。

 光に慣れた瞬間、自分がベッドの上に横たわっていることに気づいた。


 天井は見覚えのない真新しい白。

 鼻腔に届くのは消毒液に似た匂い。


 病院か、と一瞬思う。


 だが、違和感はすぐに別の方向から押し寄せてきた。


 身体が軽い。


 軽すぎる。


 それだけじゃない。

 視界に入った自分の腕が、明らかに細い。


 いや、細いどころじゃない。

 白くて、しなやかで、妙に整っている。


 こんな腕、俺は知らない。


「……は?」


 声が漏れた。


 その瞬間、俺は硬直する。


 声が高い。


 いや、違う。

 高いなんてレベルじゃない。


 澄んでいる。

 透き通っている。


 まるで、どこかの配信者みたいな――。


「ちょっと待てちょっと待てちょっと待て」


 慌てて起き上がる。

 身体が軽すぎて、勢い余ってふらついた。


 視界の端に映った鏡。


 そこに映っていたのは――。


 知らない美少女だった。


 銀色に近い髪。

 大きな瞳。

 整いすぎている顔立ち。


 どう見ても現実離れしている。


「誰だこれ」


 俺が言った。


 鏡の中の少女も同じように口を動かした。


 当たり前だ。


 いや、当たり前じゃない。


「いやいやいやいやいや」


 頬をつねる。

 柔らかい。


 痛い。


 夢じゃない。


 脳裏に、最後の記憶がよぎる。


 仕事帰り。

 コンビニの袋。

 スマホを見ながら横断歩道。


 クラクション。


 そして、衝撃。


「……あー、なるほど」


 俺は頭を抱えた。


「死んだわこれ」


 言いながら、なぜか妙に冷静だった。


 いや、冷静というより、現実感がない。


 だが少なくとも――。


 俺は今、どう考えても別人になっている。


 それも、美少女に。


「意味わからん」


 そう呟いた瞬間、ドアが開いた。


「起きてますかー?」


 軽やかな声。


 俺は反射的に振り向く。


 そこにいたのは、スーツ姿の女性だった。


 笑顔が営業スマイルっぽい。


 なんというか、仕事できそうなタイプ。


「よかった、起きてますね」


「えっと……はい?」


 俺は混乱したまま答える。


 女性は手元のタブレットを確認しながら、にこりと笑った。


「改めまして。

 あなたは本日より、Vtuberとして活動していただきます」


「は?」


 間抜けな声が出た。


「えっと、まだ記憶の整理がついていない感じでしょうか。

 大丈夫です、よくあることなので」


「いやいやいやいやいや」


 俺はベッドから立ち上がる。


「まず状況説明を要求する」


「はい。

 簡単に言うと、あなたは死にました」


「簡単すぎるだろ」


「そして現在、新しい身体を得ています」


「それは理解した」


「で、その身体を使って、うちの事務所でVtuber活動をしてもらいます」


「理解できない」


 間髪入れずに否定した。


 女性は少しだけ困った顔をする。


「えーとですね。

 あなたの魂を回収したのがうちの関連会社でして」


「怖いこと言うな」


「で、せっかくなので働いてもらおうという」


「ブラックすぎるだろ」


 死後も労働とか聞いてない。


「もちろん報酬は出ます」


「死んでるのに?」


「現世で使えます」


「どういう仕組みだよ」


 頭が追いつかない。


 だが女性は構わず話を進める。


「あなたの新しい名前は白雪ミコ。

 本日デビュー予定です」


「待て」


「はい」


「デビュー予定ってなんだ」


「今日、初配信です」


「ふざけるな」


 思わず叫んだ。


 女性は一切動じない。


「大丈夫です。

 すでに告知は済んでいます」


「既成事実作るな」


「ファンも待機しています」


「やめろ」


「配信開始まであと一時間です」


「帰りたい」


 帰る場所などないのに、口が勝手にそう言った。


 女性はにっこり笑う。


「安心してください。

 可愛いですよ」


「それは鏡見て理解してる」


「絶対にバズります」


「知らんがな」


 だが、その一言で、ほんの少しだけ思考が止まる。


 バズる。


 その響きは、どこか甘い。


 社畜時代には縁のなかった言葉。


 評価されることも、注目されることもなかった人生。


 それが――。


「……いやいや」


 俺は首を振る。


「冷静に考えろ俺。

 これは罠だ」


「罠ではありません」


「じゃあ何だ」


「チャンスです」


 女性は言い切った。


 その声音には妙な説得力がある。


「あなたのトーク力、評価しています」


「トーク力?」


「生前のデータ、全部見ました」


「やめろ恥ずかしい」


 黒歴史の宝庫だぞ。


「特に会社の飲み会での愚痴」


「やめろ」


「非常に面白かったです」


「殺す気か」


 いやもう死んでるけど。


「それをそのまま配信で使えば、確実にウケます」


「いや、無理だろ」


「では試してみましょう」


 女性は指を鳴らした。


 どこからともなくスタッフらしき人が現れ、機材を運び込む。


 カメラ。

 マイク。

 ライト。


 あっという間に配信環境が整っていく。


「ちょっと待て本当にやる気か」


「はい」


「心の準備が」


「時間がありません」


「ブラック企業かここ」


 だが準備は止まらない。


 俺は椅子に座らされ、マイクの前に配置される。


 画面には配信ソフト。


 コメント欄がすでに流れている。


『待機』

『新Vだ!』

『かわいい』

『まだ始まってないのにかわいい』


「なんだこれ」


「あなたのリスナーです」


「早すぎるだろ」


 心臓がバクバクする。


 いや、心臓あるのかこれ。


 とにかく落ち着かない。


「深呼吸してください」


「はあ……はあ……」


「では、カウントいきます」


「待て」


「3」


「待てって」


「2」


「本当に待て」


「1」


 ――配信開始。


 画面が切り替わる。


 自分の姿が映る。


 美少女が、そこにいる。


 コメント欄が一気に加速した。


『きたああああ』

『かわいいいい』

『声聞きたい』


 喉が乾く。


 逃げたい。


 だが――。


「……えー」


 口が動く。


 止まらない。


「本日はお集まりいただき誠にありがとうございます」


 あれ?


 妙にスラスラ出てくる。


「本日デビューいたしました、新人Vtuberの白雪ミコと申します」


 コメント欄が爆発した。


『声かわいい』

『丁寧ww』

『社会人感ある』


「えー、えーとですね」


 頭の中は真っ白なのに、言葉だけが出てくる。


「いやあ、まさか死後に配信することになるとは思わなかったですね」


 一瞬、コメントが止まる。


 次の瞬間――。


『は?』

『今なんて?』

『草』


「あ、いや今のは比喩です比喩」


 慌てて誤魔化す。


 だがコメントは止まらない。


『おもしれー女』

『初手で飛ばしすぎ』

『好き』


「えー、普段はですね、まあ……普通に生きてたんですけど」


 生きてたって言った。


「気がついたらこんな感じで」


 雑すぎる説明。


『雑ww』

『勢いで乗り切るな』


「いやほんと、人生って何が起きるかわからないですよね」


 しみじみと言う。


『重いww』

『急に深い』


「とりあえずですね」


 俺はマイクに向かって少し身を乗り出す。


「社畜やってた頃よりはマシな生活になりそうなので、頑張ります」


 コメント欄が再び爆発した。


『社畜www』

『中身おっさんだろ』

『確信した』


「いやいやいや」


 俺は思わず笑う。


「そんなわけないじゃないですか」


 鏡を見ろ。


 どう見ても美少女だ。


 だが――。


「まあでも」


 ふと、言葉が漏れる。


「中身がおっさんでも、美少女なら勝ちじゃないですか?」


 一瞬の静寂。


 次の瞬間。


『正論wwww』

『それはそう』

『天才か?』


 爆笑の渦。


 コメントが止まらない。


 画面の向こうで、誰かが笑っている気配がする。


 俺は呆然としながら、その光景を見つめた。


 ――なんだこれ。


 ――めちゃくちゃ楽しいじゃないか。


 気づけば、口元が緩んでいた。


「えー、それじゃあ」


 俺はマイクに向かって言う。


「改めまして、白雪ミコです。

 よろしくお願いします」


 コメント欄が歓声で埋まる。


 その瞬間、どこかで確信した。


 これは、ただの事故じゃない。


 これは――。


 新しい人生の始まりだ。












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