突如失踪した大学生 彼の身に何が起こったのか?
いつもより文章量が多いので読むのが不便かもしれません。要望などがありましたら感想投稿ページに送っておいて下されば幸いです。
これから紹介するのは都市伝説ではなくはっきりと現実で起こった出来事なのだが非常に不可解な話だ。
事の発端は2014年6月30日、ドイツ人学生であったラーズ=ミタング(当時28歳)は複数の友人と共に東欧のブルガリア共和国に休暇のために訪れた。彼らは数日間、ブルガリア国内で人気の観光地であったゴールデンサンドでのんびりと過ごす予定だった。しかし、休暇が始まってから8日後の2014年7月6日、ラーズはお気に入りのサッカーチームを巡って男性3人と口論になり、ついには顔を強く殴られてしまった。このことにより鼓膜が破れてしまったので治療のため友人たちが帰国した後もブルガリア国内に残ることを余儀なくされてしまう。ラーズはゴールデンサンドとは違う場所にある別のホテルに宿泊先を変えるが、しかし、この時から彼は不可解な行動をとるようになる。ホテルにいる間、ラーズは母親に自分が何者かに命を狙われていて恐ろしい、というようなことを電話で伝えている。電話を受けた母親によるとこの時のラーズの声色は非常に切迫した様子だったようだ。7月8日、ついに帰国する日がやってきた。ラーズは旅客機に搭乗する前、ケガを診てもらうため空港の診療所を訪れた。診療所の医師はラーズに耳のケガがすっかり治っていることを伝えるが、その直後、ラーズは「こんなところで死にたくない!ここからでなければ」と叫び荷物も持たず診療所を飛び出して行ってしまう。空港の防犯カメラには黄色の半そでシャツと茶色の半ズボンを身に着けたラーズがまるで誰かから逃げるようにターミナル内を必死に走り抜ける様を写している。ラーズが空港の外部の道路を走りフェンスをよじ登るところまでカメラに記録されているがその後の彼の消息は不明である。
警察、さらにはラーズの家族によって雇われた探偵が徹底的に捜査を行ったものの現在まで彼の足取りは分かっていない。一体ラーズの身に何が起こったのか?
よく言われているのが、ラーズは深刻な被害妄想を抱いていたのではないかというものだ。自分が誰かに追われているという妄想を抱いた彼は空港の中でパニックを起こし、外に飛び出し、その後、池や川で溺れるといった事故や熱射病などで命を落としてしまったのかもしれない。だがこの説では彼の遺体、あるいは生きている本人が未だに発見されない理由が分からない。またラーズの家族は彼が何らかの精神疾患を抱えていたことを否定している。
不穏な仮説ではあるが彼が何らかの犯罪に巻き込まれた可能性も否定できない。ブルガリアはヨーロッパの中では比較的治安が悪い地域だ。ラーズは強盗や人身売買などの犯罪の被害にあったのだろうか。失踪する前にラーズが母親に自分のクレジットカードの契約を解約してほしいと頼んでいたことがその証拠になるかもしれない。またバーで口論になった3人の男性に目をつけられた可能性もある。だが、それではなぜラーズが警察や知人にそのことをはっきりと言わなかったのか、また、なぜ
空港に着いたときさっさと飛行機に乗って帰国してしまわなかったのか説明がつかない。更にラーズは犯罪とは(恐らく)何のつながりもないただの一般人だ。
この他にも何らかの事情があってラーズは意図的に身を隠したのではないかとする主張もある。
実際に、2019年、ドイツでトラック運転手がドレスデンからブランデンブルク州オーバーハーウェルまでラーズ=ミタングに似た容姿のヒッチハイカーを乗せたと証言している。しかし、その男が本当にラーズだったのかどうかは判明していない。
以上のように複数の説が唱えられているものの、そのどれもが事件のすべての謎を説明できるわけではない。しかし、ラーズの母親であるサンドラ=ミタングは今も息子が生きていると信じて疑わないようだ。果たして真相が明らかになるのはいつになるのか....
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