噂
アトワイズの上級騎士を返り討ちにして王命に背いた私達姉妹は言わば【逆賊】だ。このアトワイズ王国の地に安寧はない。そう思って国を出ることにした。
行く先は隣国【ツェザール公国】。過去、賓客としてアトワイズ王宮に招かれたツェザールの大使とその武人達を目の当たりにしたことがある。規範意識が高く、厳格で近寄りがたいのが第一印象だったが、他者への礼節を重んじる一面も見せる彼らにアトワイズにはない雰囲気を感じた。簡単にいうと……好印象だった。
アトワイズは生まれや爵位に固執する貴族主義が根強く、一般市民を下に見て酷い振る舞いをする特権階級も少なくない。そこには法でさえ簡単に翻され貴族達に都合良く事が運ぶこともある。
そんなアトワイズを見てきたからこそ、規範たることを美徳とするツェザールに実は前々から行ってみたいと思っていた。
私はネイナの作った紫色のポーションで全快したその日に旅の準備をして、翌日には姉妹揃って村を出た。
ひとまずの目的はツェザール公国への到着。その後は仕事を探すなり、住む場所だったりが落ち着いてきたら……【森のレイス】を探してもう一度会いに行くつもりだ。
道中、酒場や宿にいた行商人にその後のアトワイズ王国の色んな話を聞いた。
アトワイズ魔法管理局の長、【魔導卿サビティ・グレン】の逝去。
戴始爵の働きにより財務官ガドルネ・ビスタバン公爵及びその部下の官僚数名の汚職が発覚。彼らの財産は差し押さえられ爵位は【血の選定者】の名の下に剥奪。
【森のレイス】という特級モンスターの討伐に超高額特別懸賞に指定。
など。
ネイナと旅に出て5日足らずで様々な話が入ってきた。
あと、噂の域を出ない話だが……
近頃各地で……植物を操る【人型の魔物】の姿を目撃した。という話があるとか……ないとか。
しかも、その魔物は人助けをしているそうだ。
『まあ、信じるわけねぇわな?魔物が人を助けるなんて話をよぉ!』
そう言って話す行商人の酔っぱらいに……私達姉妹はこう言ってやった。
『信じるよ?だって【レーコさん】ならきっとそうするよ、だよね?お姉ちゃん』
『そうだね、ネイナ』




