宣誓
顔を真っ青にして膝から崩れるテイブ。それに追い打ちをかけるように口髭の紳士が続けた。
「〈戴始爵〉である私に対しての貴様の不敬は、父親のガドルネではなく貴様自身に責を負ってもらうつもりだから覚悟しておけ」
「ふけ…………?え?……」
またもテイブはザビティ・グレンに視線を送る。
「国王や王族と同様に〈戴始爵〉様も不敬罪の対象です、戴始爵であると知った上であなたの取った物言いや態度は罪になります」
ザビティ・グレンは丁寧に説明する。
「し、知らなかったんだよっ!仕方ないだろっ!?」
「いいえ、あなたが父親に頼んで得た〈騎士〉という立場ではその言い訳は通用しません」
「……そ……んな……バカな事が……」
「……バカはあなたですよ」
ザビティ・グレンは先程テイブを止めに来た騎士に視線をやる。
「戴始爵様の邪魔になるので、このバカを連れて行ってくれますか?」
「はい、グレン様!」
騎士はテイブの首の後ろの甲冑の縁を掴んで消沈しているテイブをズルズル引きずって退散していった。
「ほら!さっさと来いっ!テイブっ!」
テイブに対する騎士の態度があからさまに変わったのを目の当たりにして、この後テイブがどんな扱いを受けることになるのか容易に想像出来た。
「さて……待たせたね、お嬢さん」
ビクターは距離を取って警戒するシーザに視線を戻した。
「た……戴始爵様に伺いたいことがあります」
「なんだね、言ってみたまえ」
シーザは緊張した様子で尋ねる。
「アトワイズ国で〈最強の魔術師〉と大陸屈指の戦闘能力を有する〈戴始爵〉様、お二人が特級モンスター討伐にわざわざ足を運ぶ理由は何ですか?」
「……過度な戦力だ、と……そういうことかね?」
「……はい、上級騎士2名で既に余りあると考えます」
「その見解は正しい……故にもっともな疑問だ」
ビクターは口髭を撫でて一呼吸置いて、シーザの後ろに目を配りながら回答した。
「君の後ろに見える件の特級モンスターは〈特級以上の危険種〉ではないかと示唆する声が上がってね……我々が出向いたわけなのだよ」
「………………」
シーザは思うところがあるのか沈黙する。
「では……私からも質問しようか、何故特級モンスターを庇う?」
「……それはーー」
「ーーいや、いい。そんなことより名乗りたまえ」
「……え?」
自分勝手で自由に進行するビクターに困惑するシーザ。
「理由など……もはやどうでも良い、君は我々の前に立ちはだかり『相手になる』と豪語したのだ、女ながらに上級騎士2名を倒してみせた実力を私に見せてくれ」
ピンと背筋を張って立ち、腰の剣を抜いてシーザに向けるビクターから闘気のような圧を感じる。
「さあ、名乗りたまえ」
闘いは避けられぬと悟ったようなため息混じりにシーザは一歩前に出て剣をビクターに向けた。
「元騎士シーザ・ガルバンドール、戴始爵様への無礼を承知で……参ります」
「よろしい。このビクター・ガロンズ、闘いにおいて戴始爵位への不敬その一切を不問にすると誓おう」
宣誓の直後、ビクターは後ろに目を配る。
「グレン殿、手出しは無用でお願いしたい」
「かしこまりました戴始爵様」
視線をシーザに戻すビクター、その顔はギラついていて鋭い反面……どこか楽しそうに見えた。




